ファッションと私〜明日、どの服を着る?〜
服をあまり買わなくなった。
公務員時代は私服で通勤していたため、それなりに服が必要だった。
シンプル イズ ベストなデザインのものも重宝して好きだったが、フリルがさりげなく付いているものとか、質感の違う布の切り替えがあるものとか、わりと好きだった。
独身時代はちょっとお高めの服も買ったりしたが、子供ができてからはイオンモールに入っているようなお店の服ばかり着ていた。
なのに同じ職場の人に、
「いつもかわいい服着ているよね?どこで買っているの?」
と聞かれることが何度かあり、
「あそこのイオンモールに入ってるお店ですよ」
と答えると、
「え?そうなの?」
と驚かれた。
職場の人たちがお世辞で言ってくれてたのか真意はわからないが、わたくし単純なので、
「私、ひょっとしてお買い物上手?」
と、ひとりニヤついていた。
母の影響で定価ではあまり買わず、セール品からいかに気に入った服を探すか、を楽しんでいたからだ。
あの頃は服を買うのが楽しかったし、毎日違う服を着て自分なりに綺麗に見せることでスイッチが入っていた気がする。
しかし、うつ病になって服に対する意識が変わった。
綺麗に見せるとかはもうどうでもよくて。
それより、色、素材、着心地。
ビビットな色の服はくすんでいる自分が着るには眩しすぎて着られなくなり、生成色などが安心できた。
素材はコットンが好きだった。
着心地はとにかく楽なもの。
ファッションは我慢だ、なんてとんでもなかった。
家で療養しているだけだから、服を買う必要がなく、いつも同じような格好をしていた。
そして。
公務員を辞め、パート職員として軌道に乗った今。
ようやくビビットな色の服も着たいと思えるようになった。
ここまで来るのに数年かかった。
色というのはとてもパワーがある。
主張の強い色の服は、自信喪失ドン底徘徊中の人間には着られない。
自分の服の好みが戻ってきたことに気づき、私は元気になってきたんだな、と実感した。
やはり、パートとはいえ社会の一員としてわずかながらでも役に立てていることが自信になったのだと思う。
しかし。
私の勤め先は制服なので、公務員時代のように服が要らない。
休みの日も着飾って出かける機会がそんなにあるわけでもない。
そういえば母が以前、
「スーパーに行く服があればいいのよ」
と言っていた。
確かにそうだわ。
お金がかからないからいいのだが、なんだか少し寂しい気もする。
せっかくファッションを楽しめる心を取り戻したのだから、また掘り出し物からほんの少しだけ個性的な服を厳選して、ファッションを楽しみたい。