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直秀ロス: 「光る君へ」9話
「光る君へ」感想をまとめておこうと思い立ち、ブログから転載しています2024年5月5日エントリー
いくらか気持ちが落ち着いたところで、1日置いて「光る君へ」第9回について。
以下、思いっきりネタバレ状態で書きますので、未視聴なのでそれは困るという方、本日はここまで。
ということでよろしくお願いします。m(_ _)m
「鎌倉殿の13人」を思い出す、理不尽な展開でしたねえ。
まひろちゃんとも道長さんともいい感じでいてくれた、ドラマ中オリジナルキャラクター(完全に架空の人物)直秀さん。
盗みはしても人を殺してはいないのだから、そこまで重い刑罰にはならないだろう、鞭打ちか、遠流くらいかなと、主人公たちも我々視聴者もそう思っていたら、限りなく私刑に近い形での斬殺だったという結末。
脚本家には血も涙もないんかー! という叫びもTwitterでは見かけましたがほんとそう💧
とはいえ、直秀さんと、彼の仲間のこの理不尽な死が、今後の道長さんを導く重要な要素になることは見えているので、視聴者としては納得するしかないんですよね(大泣)
脚本の大石静さんのブログエントリーを見てなるほどそうかと思いました。
小説もそうですが、作者には無意識にでも、その登場人物のウェイト(重さ)は設定されていると思うんですよね。
そういう中でも直秀さんと散楽(と盗賊)仲間に関しては、作者が想定していた重さはもっとこう——言い方は悪いですが物語の「捨石」にも似た、人というより何かのサイン、記号としての意味の方が大きかったんだろうなと思いました。
駄菓子菓子。(©️那州雪絵)
物語には往々にしてあることですが、架空の人物といえども人物であり人格はあるので、作者の思惑を超えて「生き始める」ことってあるんですよね。
物語の都合上、早々に殺されてしまったけれども、その存在感は強く重く、作者本人ですら「殺すのが早すぎた」と嘆くものがある。
直秀さんもそうだったんだなと思いました。
これはとりも直さず、直秀役の毎熊克哉さんがやはり素晴らしかったのだと思います。
惜しい人を亡くした💧(誤解を招く言い方)
ということで。
わたしも想像以上の衝撃を受けてしまい、丸1日の冷却期間を必要としてしまったのでした。
彼については本当に、いろいろ謎は残されたままなので、今後、回想でもなんでも良いから再登場してもらえたら嬉しいです。
そしてまた、番組最後の「紀行」で聞いて初めて知ったのが「散楽の歴史」。
これも大陸から日本へ渡ってきたもので、最初は日本の国家が保護、育成した、いわば「式楽」(公式の音楽や芸術)だったんですね。
もとは国が公に保護して運営・育成していたのに、途中で国の保護がなくなったとのこと。
散楽の人々は公的な保護も立場もなくし、街路へ出て行くことになってしまった。
公的な立場からの追放、その地位の零落があったわけで。
貴族を敵とみなしながら、彼自身は本当の庶民の出とは思えない直秀さんの出自とも重なるところがあるように思えました。
そんなわけで、当時の司法の杜撰さに、私ども視聴者も憤り、泣きました。
そして思ったのが、
「御成敗式目すら、この100年以上もあとなんだもんな」
でした。
現代生活を営む我々にとっては当たり前すぎる、法律の整備や法制度、法治主義という概念。
しっかり組まれて運用されている警察機構や司法機関。
これらがどれほど有意義なものかを改めてしみじみ感じ入りました。
もちろん現代において問題はある。あるけど、同じ罪を犯しても、鞭打ちで済んだり殺されたり、どっちになるか全然わからない、担当役人の気持ち次第なんてことがどれほど理不尽なことか。
それを見てしまうと、それでも人類はちったー進歩してるんだよ、と、実感せざるを得ない。
「世を正したい」
というまひろちゃんの言葉を聞いて、ふと思いました。
数百年、千年、数千年という時間の中で、どれほどの人がこの思いで生きて死んでいっただろう。
歴史はそういう人々の死屍累々なのだ、と。
ひとりの人間が実際まともに動けるのは、正味三十年くらいでしょうか。
そういうものを継ぎ足し継ぎ足ししながら、——そのときの数十年から百年くらいにはなんの変化も進歩もなく思えるけれども、それでも千年単位で眺めるなら、人類はちゃんと進歩している。
そんなふうに思いました。
すべては塵の積み重ね。
自分の生の時間の儚さ、できることできたことのささやかを見て、無力感に襲われることはあるとは思いますが。
それでも人が生きるということは、光そのものなのだと思いました。
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