見出し画像

ワークショップ2 「With/Afterコロナ時代の『楽しみ』のイノベーション」 参加者レポート

この記事はi.school2021年度第2回レギュラーワークショップとして実施された「With/Afterコロナ時代の、『楽しみ』のイノベーション」の参加者レポートです。

2021年度第2回レギュラーワークショップ
テーマ:With/Afterコロナ時代の、『楽しみ』のイノベーション
ファシリテーター:横田 幸信(i.school ディレクター、i.labマネージング・ディレクター)
日程:
5/8(土)、5/22(土)10:30-17:00
5/26(水)19:00-22:00
5/29(土)13:00-17:00

プログラム詳細につきましてはこちらをご覧ください。

【Day1(5/8)】

2021年度2回目のレギュラーワークショップのファシリテーターは、i.schoolの第1期生で、イノベーションのコンサルティング事業を展開しているi.labの代表、さらにはi.schoolのディレクターでもある横田幸信さんです。

全4日間あるWS2の目的は、COVID-19によって変化した自分自身の行動変化、価値観変化を調査対象として事例を収集し、分析を行い、新たな楽しみのヒントを探索することでした。また、その行動・価値観変化の先にある未来の普通やあり得る姿について思いを巡らし、これまでにない、オルタナティブでビジョナリーな「楽しみ」の機会領域を創造的に設定し、さらにはその新しい「楽しみ」の要素を持った具体的な製品・サービス・体験のアイディアを創出するところまで行うということでした。

このワークショップはまさに今の時代でしか行えないテーマだといえます。

1日目では、主に以下のワークを行いました。
①オリエンテーション
②行動・価値観変化の洞察
③初期視点の設定

①オリエンテーション
横田さんご自身の経歴やi.labの事業内容、また既存の専門教育とイノベーション教育の違い等についてご説明いただきました。その中でも、個人的にはi.schoolのワークショップと実際の新規事業開発業務が、期間は違えど内容の構成は相似しているとのお話が大変印象に残りました。実際のイノベーション創出の過程と大差ない、質の高いワークショップを受けられるこのi.schoolの環境の有難さを改めて実感しました。

続いて、WS2についてのご説明がありました。
このワークショップの特徴について、次の3点が挙げられました。
– 機会領域の設定に重きを置いていること
– 生活者への共感を重視するインタビューを行うこと
– 発見的な定性情報を用いて創造的な仮説推論を行うこと

特に機会領域の設定は重要で、いいアイディアを出したければいい機会領域を設定しなければならないことを教わりました。時間と情報の抽象度の2軸によるグラフを用いて、横田さんにはアイディア創出のプロセス、機会領域がどのようなもので何のメリットがあるのか、また機会領域の探索手法などについて詳しいレクチャーをしていただきました。

今回のワークショップは、電子付箋ツール「APISNOTE」ではなく「miro」というオンラインホワイトボードを用いて行われました。オリエンテーションではmiroの詳しい使い方を学んだ後に、チーム毎で自分を戦隊もののレンジャーの色に例えた自己紹介をしました。WS2はWS1とは異なるチームで活動するため、この自己紹介は良いアイスブレイクになりました。私のチームはレンジャーにない色を答えているメンバーが2人もいたのが印象的でした。

②行動・価値観変化の洞察
事前課題の自分のCOVID-19による、楽しみにまつわる価値観変化について共有しました。それぞれの事例について皆で事実情報及び背景情報を深く理解した後、その価値観変化の未来への影響の考察と創造的な議論を行いました。
共有する楽しみにメンバーの個性が見られ、楽しい議論になりました。

③初期視点の設定
初期視点とは、機会領域を設定する前段階として設定する仮説のようなものです。この初期視点を設定するために、共有した事例の中からオルタナティブでビジョナリーな楽しみの機会を示唆する事例を選抜していきました。
核とする事例を1~2個に絞ると、それらについて深掘りを行いました。目的、手段、そしてターゲットの情報を書き出していき、初期視点の表現を選定していきました。

以上が活動内容となります。

Day2までの宿題は自分とは異なる環境で暮らす人の「楽しみ」に関連したインタビュー及びデスクトップリサーチでした。
4日間を通じてこれからの「楽しみ」を創造していけることにますます楽しみを感じました。

木村未来
慶應義塾大学経済学部経済学科3年
2021年度 i.school通年生

画像1

【Day2 (5/22)】

2日目では、ミクロな視点・マクロな視点からの双方から未来の社会シーンを洞察した上で、「機会領域」の創出が行われました。

以下、内容や学びを共有いたします。

①ミクロな視点での未来社会の性質変化の洞察
まず、事前課題として各々が行った身近な人へのインタビューやデスクトップリサーチをチーム内で共有し、類似事例や行動、疑問点などを洗い出しました。

その後、1日目の最後に設定した初期視点に関連した事例をi.lab(ファシリテーターの横田さんが代表を務めるイノベーションコンサルティング会社)もしくは他チームのものから選定し、それについても同様にチーム内で共有を行いました。私たちのチームでは「旅行のような体験を得るための身近な行動」を初期視点として設定していたこともあり、前回も挙がっていたマイクロツーリズムの例が特に深く議論されました。

②マクロな視点での未来社会のイメージアップ
はじめに横田さんからマクロな視点での分析の重要性をお話しいただきました。ミクロな視点の事例は創造性が高く面白いことが多いですが、「メガトレンド」と呼ばれる社会風潮には抗えません。そのため、ミクロな視点と同様にマクロな視点での議論を十分に行うことも重要であるということでした。

チームタスクとして、i.labが集めたメガトレンドの中から初期視点や①での議論に関連性が深そうなもの数点をそれぞれ選び、選抜した理由とともに共有しました。

次に、未来における自分や身近な人への影響を示唆するような情報を挙げ、議論をさらに深めました。特に「企業・商品の持つブランドやストーリーが購買の判断基準としてより重視されるようになる」というメガトレンドに対しては、チームメンバーの多くが経験していることでもあり議論が活発化しました。

③未来の社会シーンの創造と洞察
①・②で議論したミクロ・マクロ視点のなかで特に気になるものを選定した上で、それぞれの視点を掛け合わせた未来の社会シーンの事例としてどのようなものがあるのかを考察しました。各自がポンチ絵を用いて創造を行い、その後共有と議論がなされました。チームメンバーで掛け合わせるミクロ・マクロ視点が異なるとともに、同じ視点だとしてもアイディアが異なったこともあり、多くの未来の社会シーンが創出されました。

④機会領域の創造的議論と設定
③で想像された未来の社会シーンの中から「テーマ・初期視点との合致度」・「アイディアの出しやすさ」・「着眼の新規性」の3つの評価軸を元に1~2点を選抜し、機会領域として設定しました。

その後文章やマトリクスを用いて概念を整理しながら機会領域の精緻化を進めました。私たちのチームでは精緻化の段階で一度行き詰まりましたが、最終的にはチームメンバー全員が概念を共有できる機会領域を創出することができました。初期視点で主眼を置いていた「行動」ではなく「体験」そのものに価値を置くようになり、チームとしての議論の進行に実感が持てました。

以上がDay2の内容です。

Day3までの事前課題は、設定した機会領域をさらに具体化するための題材として、日常に潜むアナロジー事例・インサイト事例を収集することです。

Day2は、土曜日の日中に多くの時間を取って開催されたこともあり、内容・議論ともに充実した1日となりました。

久手貴就
一橋大学商学部2年
2021年度 i.school通年生

画像2

【Day3 (5/26)】

3日目は、前回課題として出されていた機会領域のイメージアップ、参考事例の分析、個人でのアイディアの創出が実施されました。

まずファシリテーターの横田さんからWS2の目的、全体の構成についての再確認がありました。WS2の目的はコロナウイルスに影響により、かつて当然のこととして享受していた「楽しみ」が容易にできなくなってしまった現状を踏まえ、オルタナティブでビジョナリーな楽しみの機会領域を設定し、具体的な製品やサービス・体験のアイディアを創出するということでした。

①機会領域のイメージアップ
初めにブレイクアウトルームでそれぞれ設定した機会領域を確認し、全体の場で共有するという作業を行いました。1分間で機会領域についての説明をしたのち、ファシリテーターの横田さん、メンターの島村さん、DPの方からのフィードバックをいただきました。グループ内では気づけていない改善点が明確になりました。特に「無意識」「非日常」などの言葉はなるべく避けたほうが良いというフィードバックが印象的でした。

次に、機会領域の世界観について具体的にイメージするために、機会領域内の登場人物を想定するという作業を行いました。身近な人や具体的な人物を設定し、機会領域に関連した価値観や基本行動などをグループで他己紹介していきました。

②参考事例の分析
事前課題であったアイディア創出に利用できると感じた参考事例を共有し、各自どんな示唆があるか(アイディア出しのヒントになる可能性のあること)を書き出しました。i.labの方が準備してくださった事例も合わせて分析を進めました。そして特に示唆が多かった事例についてはグループ内で議論しました。

③個人でのアイディア出し
①の機会領域内の登場人物と②の参考事例を掛け合わせて、個人でのアイディア創出を行いました。横田さんから登場人物が未来社会でどのように楽しむかという視点で考えると良いというアドバイスも頂きながら、時間の限りアイディアを絞り出しました。なかなかアイディアが出ない部分もあったため、4日目までに個人でのアイディア出しを引き続き行うこととなりました。

4日目は各自が出したアイディアの選定、評価を行っていきます。
グループのメンバーがどのようなアイディアを出したのか、それをもとに議論することが楽しみでした。

重本栞里
千葉大学文学部人文学科行動科学コース社会学専修2年
2021年度 ischool通年生

画像3

【Day4 (5/29)】

最終日4日目は、アイディアの発想的な創出と、各自のアイディアからお気に入りを2,3個選別しポンチ絵で描くことが課され、参加者が課題を準備して当日を迎えました。

まずファシリテーターの横田さんからWS2の目的、全体の構成についての再確認がありました。WS2の目的はコロナウイルスに影響により、かつて当然のこととして享受していた「楽しみ」が容易にできなくなってしまった現状を踏まえ、オルタナティブでビジョナリーな楽しみの機会領域を設定し、具体的な製品やサービス・体験のアイディアを創出することでした。

①アイディアの共有・評価・選抜
ブレイクアウトルームに分かれた後、15分間でポンチ絵の説明を順に行いました。メンバーが考えたアイディアを真摯に理解することも重要であるとの説明があったことから、みなポジティブに聞こうとしている姿勢が印象的でした。

②アイディア評価
メンバーが出したアイディアに対し、アイディアから少し距離を置いた「講評者」として評価が行われました。45分間で議論内容を基に以下2つの観点毎に各アイディアに◎、○、△を付け、最終的にコアとなる一つを選抜しました。選別が難しい際は、全体共有の際に裾野が広がりそうな選択肢を選ぶようにアドバイスがありました。

1、オルタナティブでビジョナリーな「喜び」や「楽しみ」を提供できるか?
2、アイディアから遡って考えると、機会領域や社会シーン、価値観変化、メガトレンドへのロジックがしっかりしているか?

③アイディアの具体化とプレゼン準備
各チーム、ヒトモノコトの観点でアイディア内容に関する共通認識を作りました。その際、言語ではなく、情景を先行して共通認識を形成しました。

ヒト:ユーザー像
モノ:機能、デザイン、提供価値
コト:利用シーン、体験フロー

最後のまとめとして、各チームからmiro上で3分間の発表が行われました。プレゼンでは機会領域の基になった価値観変化事例やメガトレンドが紹介されました。また、アイディア創出時にアナロジーで用いた参考事例とアイディア側から見た抽象的な特徴、具体的なユースケースも紹介されました。プレゼン後は全員が各チームに対してmiro上で質問やコメントを残しました。
以上がDay4となります。

プレゼン準備では4日間を通じてアイディアの言語化が主要な方法であったため、情景を先行させる際の合意形成に手間取りました。横田さんからは、アイディアをビジュアライズすることも重要な作業である、とのコメントがありました。

今回は機会領域を定めた後、世界観が一致するエクストリームユーザーへのインタビューは行わないことなりました。他のワークショップではインタビュー設計について学ぶ機会があるとのことなので、それは今後の楽しみの一つとなりました。

下川さわ
東京大学工学系研究科
2021年度 ischool通年生

画像4

<ご案内>

i.school流のアイディア創出法について「ビジネスデザイン講座」を開講中!


いいなと思ったら応援しよう!