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いまさら聞けない#1『地域包括ケア』ってなに?

この記事では、いまさら聞けないシリーズとして、リハビリテーション職種がよく目の当たりにするけど、当たり前に使われすぎてて誰も説明してくれないから、実はよくわからない…という言葉を私なりに解説します。

あくまでも私の解釈ですので、いやいやそうじゃないよということもあるかと思いますし、この地域包括ケアシステム今でも進化し続けている概念で調べれば調べるほど深い…
ご覧いただければ地域包括ケアシステムの概要とリハビリテーション専門職に求められているスタンスがなんとなく分かると思います。

お付き合いいただけると幸いです。

出典:厚労省

第1回目は『地域包括ケアシステム』
みなさん地域包括ケアってどんなものか説明できますか?

▼『地域包括ケアシステム』ひとことで表すと???

「地域包括ケア」を一言で表すと「みんなで見守りあいながら、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられるようにする仕組み」

例えるなら
・地域全体が大家族のようなもの
百貨店のような統合型サービス
だそうです。

だそうです。なんて曖昧な表現をなぜするかと言うと生成AIに説明をしてもらったから。すいません。けど、結構噛み砕かれててわかりやすいかもしれませんね。

・地域全体が家族のように支えあう
・地域で様々なサービスを受けられる

この辺りがポイントのようです。

地域支援事業に関わる方ならよくお世話になる三菱UFJリサーチの資料では以下のように説明されています。

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング 地域包括ケアシステムとは 何をすることか?

うーん…地域包括ケアシステムにおいてはたくさんの資料があるので使っている言葉もまちまちです。

▼地域包括ケアシステムのはじまりは

現行の制度の大半は、実は先行事例があります。当然、地域包括ケアにも先行的な事例があるはず。

ということで調べてみると以下のような情報に当たりました。

・地域包括ケアの出生地は広島

始まりは保健・医療・福祉の連携
地域包括ケアシステム論は、時代の流れに沿って発達してきました。その始まりは1970年代半ば、広島県の御調町(みつぎちょう:現 尾道市の一部)の国保病院(現 公立みつぎ総合病院)山口 昇(やまぐち のぼる)院長主導による、退院後の再増悪・再入院を減らす取り組みでした。御調町は介護保険制度が始まる前から全国に先駆けて保健・医療・福祉の連携体制の構築に取り掛かり、国保病院はその中で、入院医療と“出前”医療、施設ケアと在宅ケアをつなぐ体制の構築にあたり、中心的な役割を担っていたのです。
(埼玉県立大学 理事長 田中滋先生)

出典:慢性期.com 地域包括ケアシステムとは――その必要性と成立までの経緯

地域包括ケアシステムの生みの親は広島県御調町の山口医師なんですね。

公立みつぎ総合病院の近辺
すぐ隣に保健福祉センターといきいきセンター(高齢者センター)がある。
ぜひご自分でも確認してみてください。

公立みつぎ総合病院のHPに山口院長がどのように地域包括ケアシステムを推進したかの足跡が記してありました。

以下がその足跡です。

1.寝たきりゼロ作戦
外科医であった山口医師は、退院後多くの患者が褥瘡や寝たきりで再入院する現実に悩み、病院診療だけではどうにもならないことに気づいたそう。
そして院外出前診療をするに至った。これは今でいう訪問診療や訪問看護のようなものですね。

2.医療と福祉の併合
ただ、御調町では先だって行政保健師による福祉事業としての訪問が行われており、それとの統合を経て医療・福祉の併合が進んだようです。ここでしっかり行政との連携を図っています。

3.医療介護福祉保健施設の併合
それらの動きに合わせて、保健サービス(地域づくり)機能の中核を担う保健センターや在宅および居住系介護サービス系の施設、社会福祉協議会などを主要な拠点を約30分圏内で完結できるように整えた。

つまり、医療と行政が一体となって、保健・医療・介護・福祉サービスの提供に必要な拠点づくりを推進した取り組みが地域包括ケアシステムの元となった考え方であるようです。

ちなみに、30分圏内のコミュニティという考え方は、地域包括ケアシステムでは『日常生活圏域』という言葉で表現されています。市街によってまちまちではありますが、だいたい30分圏内くらいの生活範囲であり、中学校区程度の広さといった説明がよくなされます。この日常生活圏域ごとに包括支援センターが配置されています。

さて、公立みつぎ病院の掲げる地域包括ケアの定義は以下のとおりです。

①地域に必要なケアを、社会的要因を配慮しつつ継続して実践し、住民(高齢者)が住み慣れた場所で、安心して一生その人らしい自立した生活が出来るように、そのQOLの向上をめざすしくみ

②包括ケアとは治療(キュア)のみならず保健サービス(健康づくり)、在宅ケア、リハビリテーション、福祉・介護サービスのすべてを包含するもので、多職種連携、施設ケアと在宅ケアとの連携及び住民参加のもとに、地域ぐるみの生活・ノーマライゼーションを視野に入れた全人的医療・ケア

③換言すれば保健(予防)・医療・介護・福祉と生活の連携(システム)である

④地域とは単なるAreaではなくCommunityを指す

出典:公立みつぎ病院ホームページ

住民のQOL向上を目的として、コミュニティ(約30分圏内の生活範囲)を対象の範囲とした、保健・医療・介護・福祉と生活が一体的に連携するシステムのことを地域包括ケアシステムと呼んでいるらしいということがわかります。

▼よくみる植木鉢の図 植木鉢モデルとは?

地域包括ケアシステムを説明する上では、この植木鉢の図がよく利用されますが、山口院長が推進した地域包括ケアシステムは上図でいう葉っぱの部分にフォーカスした取組であるような気がします。

葉っぱ事業というのは『専門的なサービス』と表現されていますが、ざっくり言えば専門職が行う支援のこと。

医療・看護、介護・リハビリテーション、保健・福祉。
どれも専門職がいる領域です。

ただ、この植木鉢の図は葉っぱの部分だけでなく土の部分や鉢、受け皿の部分もありますね。これら部分は果たして誰が実施するものなのでしょうか?

今回は特に土事業にフォーカスしてみます。

御調町の地域包括ケアシステムの定義には『住民参加のもと』と言った文言が見られます。三菱UFJコンサルティング&リサーチの作成資料にはこんな説明が。

「介護予防・生活支援」は、介護予防・日常生活支援総合事業における取扱にもみられるように、専門職の関わりを受けながらも、その中心はセルフマネジメントや地域住民、NPO等も含め、それぞれの地域の多様な主体の自発性や創意工夫によって支えられる以上、全国一律な支援・サービスではなく、それぞれの地域の特性を反映した要素から構成される。

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング. (2016). <地域包括ケア研究会>地域包括ケアシステムと地域マネジメント(平成27年度厚生労働省老人保健健康増進等事業)

共通してみられる文言は『住民』という言葉。

そう。土事業は、地域の住民が中心となって、地域のNPOや社会福祉法人やボランティア団体、自治会などの地域に根差した企業などと連携しつつ『地域の多様な主体』が実施するものだ。そんな考え方になっているのです。

・葉っぱを育てるには良い土づくりから

我が街の男性向けの通いの場。男性が中心となって菜園を作っています。土からしっかり作りこみます。

この植木鉢モデルは、非常に重要な視点を示唆していると思います。

お察しの通り、植物は土に根を張り栄養をもらい芽や葉を出します。立派な葉を育てるのに重要なのは土づくり。農業でも土づくりの理論がしっかりあるくらい葉を育てるための土づくりは大切にされます。

植木鉢モデルでは、土として『介護予防・生活支援』と記載されてあり、そしてそれを中心となって行うのは『地域の多様な主体』と記載されています。

専門職は『地域の多様な主体』が耕した土から栄養をもらいながら葉として成長していく必要があるということですね。

さらに言えば、葉っぱとして芽吹く前に、植物は土に根を張りますよね。
専門職は根となって見えないところで土にも影響を与えていく存在となることを期待されているように感じます。

・4つの助と補完性の原則

出典:厚労省 平成25年3月 地域包括ケア研究会報告書より

また、この植木鉢モデル、補完性の原則(原理)というものに基づいて作られているといわれています。

補完性の原則とは、「自己決定・自己責任を基盤として人間の尊厳を保ちつつ自立した生活を送ることを基本として、地域自立生活が困難となった場合に、自分と家族で解決を図り、個人で解決が困難な場合は地域社会で解決を図り、それでも困難な場合は、公的責任において解決を図る」ということ。

かみ砕くと、ある課題をまずは個人で解決をはかり、難しければ家族や親族、近隣住民などのコミュニティで解決をはかり、それも難しければ公的存在である行政などが解決をはかる。ということです。

日本はこの原則を基盤として施策展開しています。様々な行政施策が原則手上げ方式(自己申告に基づく利用)なのはこれが理由です。

この考え方は地域包括ケアシステムの中でよく出てくる4助(自助・互助・共助・公助)の優先度とリンクします。

まずはセルフケアや民間サービスの活用(自助)を優先し、それで解決が難しい場合は、ボランティア支援や住民相互の助け合い・支え合い(互助)を活用、それでも解決が図れない場合は介護保険サービス(共助)や市区町村独自の行政サービス(公助)を利用する。
これが補完性の原則と4助の優先度の関係性です。

よくある行政施策が分かりにくい!もっとしっかり周知すべきだ!問題
これを例にとってみると、行政としては、自分たちでまず調べるなり知っている人に聞いてください(自助・互助)。ただ調べられない(自助・互助で解決できない)人もいるだろうから、最低限のことは行政発行の広報誌(公助)などに載せますよ。というスタンスだということですね。

少子高齢化で働き手人口が減ることが目に見えているご時世です。共助・公助の担い手となりうる世代の人口が減っていく。国がこの原則を重要視する理由も理解できるはずです。

国が基本的にはこの流れに則ってほしいと考えているからこそ、自助・互助を育む地域づくりが地域包括ケアシステムの中では重要視されているとも言えますね。

・実は進化を続ける地域包括ケアシステム

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング 地域包括ケア研究会「地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業 報告書」

ところで、この植木鉢モデルと言われる図、一度進化していることをご存知でしょうか?初代は2012年に登場しているのですがその3年後の2015年に進化しているのです。

変化をまとめてみましょう

①介護予防と生活支援が一体となり土事業となった
②土事業であった福祉が葉事業になった
③本人の選択がより重要視されるようになった

この中でリハビリテーション専門職の方に注目してほしいのは①です。

葉事業(専門職が中心となって取り組む部分)にあった(介護)予防が、土事業(住民が主体となった取り組む部分)に移っている。そして、生活支援と一体となっている。

もう少し踏み込んでみましょう。

2015年はいわゆる総合事業といわれる、介護保険・日常生活支援総合事業が実施されはじめた年です。当初、専門職が取り組むべきものとして葉っぱで表現されていた『(介護)予防』が総合事業の中で、地域の多様な主体が取り組むものとして土事業で表現されるように変遷した。そう解釈できます。

ここからなにが読み取れるか。誤解を恐れずに大胆に書いてしまいましょう。介護予防の主役は『地域住民』になったということです。

先にも書きました。葉っぱ(専門職)は栄養たっぷりの耕された土(地域住民等)により生かされます。そして政府としては補完性の原則に則り、共助・公助に頼る前に、自助・互助を優先してほしい。

総合事業移行へのポイントを解説した以下の資料でも、介護予防は『地域づくり』の中に位置づける方向にコンセプト転換したと説明されていますね。

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング『平成26年度厚生労働省老人保健健康増進等事業 介護予防・日常生活支援総合事業への移行のためのポイント解説(地域支援事業の新しい総合事業の市町村による円滑な実施に向けた調査研究事業)』

つまり何が言いたいか。

地域リハビリテーション活動支援事業等で、介護予防目的の通いの場に派遣されている療法士の皆さん。住民の前に立って自身にスポットライト浴びるような振る舞いしていませんか???主役は地域の皆さんですよ。

▼地域包括ケアシステムを推進するためにリハ専門職に求められていることは?

さぁ、ここまで読んでいただくとわかっていただけると思いますが

地域包括ケアシステムのシステムはエコシステムのことを指すのだと思います。色々な要素が相互に作用しあい有機的に連携しあうことを求めている。
そしてその目的は、住み慣れた地域の中で住民のQOLを向上していくことです。

そこに至るには専門職による支援(葉)によるものだけでなく、住民自身が主体(土)となって取り組むことも必要だと説かれています。

リハビリテーション専門職として療法士は、葉(専門的支援)の担い手としての取り組みと同時に、土(住民を中心とした多様な主体による地域づくり)にも関与していくことが求められているのですね。

▼おわりに

ここまでご覧いただきありがとうございます。いきなり自分でも難しいテーマを選んだなぁと思っています…笑
実際まだまだ関連する情報はありますが、これ以上はとんでもない量になってしまうので、ここまでにしようと思います。

シリーズ化していく予定ですので『これを解説して!』などのご希望をコメントでいただけると喜びます。

この記事があなたの活動の手助けに少しでもなれば幸いです。

この記事を作成したのはこんな人です。
自己紹介記事ですので良ければご笑覧ください。

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この記事を読んで地域づくりに関心を持ったり、すでに取り組んでいるが迷いがある。取り組んでみたいが何からやっていいかよくわからない。
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ご覧いただきありがとうございました!
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堀江勇夢|地域づくりコーチ@地域の作業をみる療法士
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