2018年おすすめVOCALOID楽曲10選
このノートは、高校生の頃からDTMに憧れながらもボカロは聴く専門の筆者が、2018年に発表されたVOCALOID楽曲限定でおすすめの10曲を紹介します。わりとメジャーな作品多めなので、なじみがない人も入口として是非。
初代「初音ミク」のリリースから今年で11年、まだまだ数多くのボカロソングと派生作品が生まれています。おすすめ10選の過去2014版・2017版はブログに書いていましたが、最近noteをよく更新しているのでこっちに書いてみます。
※VOCALOIDコミュニティは「ニコニコ動画」が本籍だと思うんですが、たぶんちょっと敷居が低いYouTubeの埋め込みで紹介します。気になった人はぜひニコ動でも探してみてください。筆者、普段は音声再生アプリ"NicoBox"で聴いてます。
祭典「マジカルミライ」から3曲
(1) グリーンライツ・セレナーデ / Omoi
今年はクリプトンの公式祭典、「マジカルミライ2018」大阪版の初音ミクライブに参加。インテックス大阪の大箱が満員の中、老若男女みんなでカラフルなペンライトを振って飛び跳ねる体験を味わいました。3Dのバーチャルアイドルがステージに映し出され、両脇は生音のバンド演奏が固めるボカロライブは、なかなか独特な空間です…。
初音ミクライブの象徴でもある「グリーンライト」(黄緑色のペンライトの光)を冠したこの曲は、マジカルミライ2018の公式ソング。ハイテンポで明るく、歌詞も前向きで分かりやすい、まさに「ライブ向き」の1曲です。初音ミクにはやっぱり明るい未来を想像させる歌が似合うよね。『テオ』のOmoiさん、見事なお仕事です。ヘッドホン大音量推奨。
参考インタビュー)初音ミク「マジカルミライ 2018」特集|Omoiインタビュー&Gigaインタビュー 11年目の初音ミクと鏡音リン・レンの曲 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー
(2) ロキ / みきとP
古株みきとPの『ロキ』は、おそらく2018年に一番「歌ってみた」「踊ってみた」の派生作品が多かった曲じゃないでしょうか(今日時点でニコニコ動画に「ロキ(みきとP)」タグがついた投稿は2219件ある)。原曲自体、みきとP自身がVOCALOIDの鏡音リンとデュエットで歌うという新しい形態。2人組の掛け合いも、ロックミュージシャンの奮闘と悲哀(?)を描いた歌詞と言葉遊びも、さっぱりノリの良いロックンロールの曲調も、非常に楽しい一曲です。
サビ前のフレーズ「死ぬんじゃねえぞ お互いにな!」の「な〜〜〜」って延ばすところのグロウル(うなるような声の演出)は、2014年末の新バージョン「VOCALOID4」で搭載された目玉機能の一つ。黎明期に比べ、ここ数年の調声「神調教」ぶりはどなたもハンパなくて、ほぼ人間の声と見分けつきません。
(3) アンノウン・マザーグース / wowaka
ニコ動の方に「神の帰還」っていうタグついてますが、2009年の作品『裏表ラバーズ』を筆頭に、ボカロシーンの黎明期を築いたスターの一人であるwowakaさんの最新曲です。6年ぶりだそうです。マジカルミライのライブでも演奏ありました。「この曲について」という投稿も必読です。そのテキストも含めて、長く活動されているアーティストならではの、熟成された感じの楽曲、しみます。
あと筆者は「踊ってみた」というカテゴリもとても好きなのですが、人気の高い5チームの振付師が結集したというこの曲の「踊ってみた」もとても良い感じです。
ロックボーカル「v flower」の3曲
(4) ベノム / かいりきベア
VOCALOIDというジャンルの中には、多くの「声」=「ライブラリ」があります。その中でも個人的に特に好きなのは「v flower(ブイフラワ、通称「花ちゃん」)」です(ガイノイドという別のメーカーが出しているので、マジカルミライには出ない)。2014年に発表された少し新顔ですが、このところ普及が目覚ましく、v flower専業に近いボカロPも複数います。
今年8月には、人気の「v flower使い」が恵比寿に顔を揃える「v flower DJ NIGHT」というイベントが開催されました。生放送で聴いてましたが楽しそうだった。
かいりきベアさんの『ベノム』は、DJ NIGHTのテーマソング。ベアさんは「女子高生の鬱々とした日常」みたいなテーマの曲が多いんですが、ライブではギターをびんびん弾く細身男子でした。以前は、ギガPさんとかかいりきベアさんのような「賑やかな」曲は避けていたんだけど、2017年秋の『レミングミング』以降、すっかりファンに。
(5) デカディズム / ぬゆり
ぬゆり(@nulut)さんの『命ばっかり』が昨年2017年の個人的お気に入り大賞に輝きまして、2018年も『ターミナル』『終末じゃない』『ロンリーダンス』と相当意欲的に作品を発表してます。今年1曲お気に入りを選ぶなら、台湾発ボーカル心華(シンファ)も起用した『デカディズム』。ぬゆりさんはインスト(歌無しの曲)もとても上手いんですが、和田たけあきさんのギターが入るとグンとクールになる。
この曲も収録された5thフルアルバム "Outer Sample" は12月発売、予約済み!v flower DJ NIGHTでのDJプレイもかっこよかったです。
(6) 8.32 / *Luna
*Lunaさんの作風はとてもユニークで、「アルバム収録曲1曲ずつ全部違うボーカルに歌わせる」かつめちゃくちゃたくさんライブラリ持ってるんです。市販のボカロライブラリ全部持ってるんですか?「猫村いろは」とか「VY1」とか相当マイナーですよ。
という中で*Lunaさん的には珍しくv flowerが歌う『8.32』は、誰もが夏休みの最終日に思い描く「+1日」がテーマの歌。8月後半聴きまくり、来年の晩夏にもまた絶対聴きたい1曲です。本当にのびやかで綺麗なボーカル。织布机loomさんのジャケットイラストも綺麗すぎです。「夏っぽい曲」ってどうやって夏っぽさが出てるんですかね。完全に爽やかな夏の1曲です。
*Lunaさんはマジカルミライ会場の「クリエイターマーケット」に出店されていて、アルバム『君だけがいない夏』は会場で買いました。アルバムからもう1曲シングルカット(って言うのか?)された、ちょっとダークな曲『シャリューゲ』も殿堂入り(ニコニコ動画10万再生越え)で良い感じです。
映像作品としても見入ってしまう3曲
(7) トーキョーゲットー / Eve
ひょえーこれYouTubeで1000万再生越え!(12月頭に越えたらしい)
そんなメジャーな曲を勧めるのもあれですが、昨年の『ドラマツルギー』辺りから幅広く支持されているボカロP兼歌い手のEveさんです。トーキョーゲットーはWabokuさんのアニメーションMVの世界観が圧倒的で、映画見てるみたいな感覚で何回も再生しちゃいます。Eveさん歌唱版のYouTubeを貼りますが、ニコニコ動画側では初音ミク歌唱verが聴けます。
参考)Eveの快進撃を考察 ボカロ文化発の才能が日本のロックを更新する(CINRA.net)
(8) アスター / はるまきごはん
《Music & Words & Illust & Movie:はるまきごはん》。文字通りの完全マルチクリエイター恐れ入ります。はるまきごはんさんは、楽曲が毎年のマジカルミライでも選曲される実力派ですが、それでいてこのクオリティの映像までぜんぶソロでやっちゃうんですか…。
彼の最新アルバム『ネオドリームトラベラー』が今月出るんですが、この曲『アスター』のぬゆりRemixがヴィレッジバンガード専用特典に収録されるということで、迷わずヴィレバンで注文です!(反対に、ぬゆりさんの『ターミナル』はるまきごはんRemixもヴィレバン特典。こういう特典1曲で、特定の店舗で注文する意味がグンと増すんですね。タワレコやHMVなど各店で特典が違うので、比べるのも楽しい)。個性的なクリエイターお二人とも仲良しで、お互いに「らしさ」が際立つ作品を出してくれるのは本当に嬉しいです。
(9) ガランド / ピコン
ボビデバビデンベッデボン。また変な映像ですよ…
いわゆるR&B調の曲は、VOCALOIDの人気曲にはけっこう少ないです。宇多田ヒカルとMISIAで育った世代である私にとって『ガランド』は待望の1曲。変な映像も相まって繰り返し聴いています。前述Eveさんの「歌ってみた」もとてもはまってる。
圧倒的なアイデアと完成度の1曲
(10) アカリがやってきたぞっ / GYARI(ココシガP)
最後は圧倒的にこれ!!!
exVOICEという「効果音」?みたいな素材の組み合わせで創り上げられた奇天烈楽曲です。サビの歌詞を見てください。
もぐもぐ キラキラ ギュイーン ピカピカ ピコーン もふもふ なでなで にこにこ
グルグル デーン ゴロゴロ デデーン
わくわく うずうず バタバタ
ドコドコ シャン タンタン シャーン ぎゅんぎゅーん
カッ ドン ドッ じゃーん!
あはは ね!
それで、曲として聴いてみると普通に綺麗なジャズなんです。
元々GYARI(ココシガP)さんのことは昔同僚から「ジャズが上手い人いるよ〜」ということで『ボーカロイドたちがオリジナル曲をセッションしたようです』(2011年)を勧めてもらったのがきっかけ。2015年以降、『ボーカロイドたちがただ2コードくりかえすだけ』『ボーカロイドたちがただテッテーテレッテーするだけ』『ボーカロイドたちがただ叫ぶだけ』と、20分近いインスト曲でありながら3本すべてニコ動で100万再生越えと、大人気作品を連発しているクリエイターです。手描きイラストでつくられる映像もかわいくストーリーも笑える。そして、「2コード繰り返すだけ」に象徴されるような、ジャズアレンジの技術と幅が、はんぱないのです。2014年のメイキング記事を読むと、曲自体はめちゃくちゃあっさり作ってるように感じる。。
その実力を背景に、とことん遊びを追求した『アカリがやってきたぞっ』。題名の元ネタとか「ピアハノロ」「イヤンホホ」とか色々埋め込まれたネタを調べていくとインターネットって色々あるんだなーという気持ちになれます。って調べながら何回も何回も聴いちゃうわけです。推理小説の読後感的というか、5分01秒の構成・組み立て(ネタバレですが4:00とか)もきわめて美しいと思います。
「ボーカロイドたちがただ何かするだけシリーズ」は、spotifyにはありませんが(残念)、Apple Musicでは配信されてます。鉄板の作業用BGMです。マジカルミライの「バンドメンバー紹介」の時の曲もGYARIさんのでした。
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ということで10曲紹介しました!気に入った方はぜひ「CDを購入」「イベントに参加」「ニコニ広告で拡散」「twitterをフォロー」などでクリエイターさんを一緒に応援しましょう!2019版もお楽しみに〜