「頭の中の声」について知りたい方必読! 『おしゃべりな脳の研究 ――内言・聴声・対話的思考――』
ずっとこのような本を探していました! 私が最近記事にしているような「頭の中の声」についての研究をまとめた本です。物書きさんでなくても、頭の中で聞こえる「声」の正体について知りたい方にオススメの一冊。ただし、気軽に読める本ではないので、ここで簡単に内容をまとめておきたいと思います。これを読んで「深く知りたい」と思った方はぜひ、ご自分で読んでみてくださいね(^O^)
なぜこれまでこのような本がなかったのか?
それは、「頭の中の声」について調査するのが非常に困難だからです。「声」は当人にしか理解できず、また一字一句言語化・視覚化するのも難しいため、研究しようとする学者が少ないのが実情のようです。
また「頭の中の声」は幻聴=病的とも考えられ、捉え方によっては「統合失調症」などの精神疾患と判断される場合もあります。それを嫌って積極的に「聞こえます」と言わない人もいるのです。かくいう私も、長い間「キャラと対話しています」などとは言えませんでした。
「内言(=頭や心の中でする会話)」は多くの人が行っている
相手の言動を予想したり、行動を取る気にさせたり、評価したり、自己を認識したりするために「頭の中で会話」することは、多くの人が日常的に行っていることが証明されつつあります。特にスポーツ選手の「セルフトーク(自分との会話。この場合は声を出す場合と出さない場合の両方がありうる)」は、試合でのパフォーマンス向上や感情抑制を助けてくれる効果があることが分かってきています。
この「内言」というのは、他者との対話が内在化したものです。小説を黙読する際、登場人物の声を「聞き分けられる(演じ分けられる)」のは、人間として成長する過程で他者と会話した経験があるから。内言とは、社会的関係の中で生まれるものだといいます。
幼児がよく、誰もいないのに独り言を言っている場面がありますが、これは幼児自身が聞いた、様々な会話を元に実演されたもので、著者はこれを「解放された駐車スペース」と表現しています。
ここには何でも好きな言葉を一時的に置くことができます(図1参照)。その言葉への応答の生成が「内言」だというのです。これを繰り返すことにより私たちは認知機構を獲得していきます。
作家は物語の登場人物の台詞を「自分で」生み出しているのか?
この章(12章)を真っ先に読んだのは、他でもない。私自身が小説を書く身として最も気になったからです。
これを読む限り、物書きの大半は私と同じく登場人物に物語を「書かされて」いる。あるいは彼らの生活の中に入り込み、こっそり「立ち聞き」した内容を書き取っている(「受信する」人もいる)ことが分かります。つまり、頭の中で想像していることでありながら、それは自分の意志で生み出してはいないと、多くの作家は感じているのです。
著者・チャールズ・ファニーハフ氏の、小説家としての体験が非常にわかりやすかったので紹介します。それは「『移動郵便局の中で不倫関係を持つ二人』についての一文を思いついたとき、思わず声を上げて笑ってしまった」と言うエピソードです。笑ってしまう、と言うことは、この文章が自分で選んだ言葉ではなかったという何よりの証拠。事前に分かっていたなら笑えるはずがありません。
では、登場人物たちはどこからやってくるのでしょうか?
実は結論は出ていません。ただ言えるのは、自分を苦しめる声が聞こえると訴える「統合失調症」のような精神疾患を持つ人と違い、作家はそのような声を「自ら求める」ということです。
本書の中では、幼児期に見られる「想像上の友だち」とも関係がありそうだ、としています。
物書きさんの中で、子どもの頃、空想上の友だちとの会話を楽しんでいた方はいるでしょうか。私の場合、はっきりとそう言える記憶はないのですが、何かと「物」に話しかける習慣はあったように思います。おそらくそれが「空想上の友だち」だったのでしょう。
作家の多くはこのような経験を持ち、大人になってからもその友だちが存在すると答える方もわずかにいるといいます。このことから、作家の想像する登場人物もこれに当たるかもしれない、というのです。
考察
ここからは私の考察ですが、おそらく物書きさんは幼少の頃から「内なる対話」を頻繁に行っていて習慣になっている。そのため「解放された駐車スペース」にやってくるさまざまな「視点」や「声」を長く留めておくことができるのではないでしょうか(図2参照)。
そしてそこに留まった「視点」や「声」同士が会話を始める……。
私はそう思うのですが、いかがでしょうか。
著者のこの言葉が確かなら、私たちの中には「大勢が存在している」ことになります。であれば、意識してその「声」に耳を傾けられる物書きさんは、「大勢」の声を、会話を、聴く能力だってあるんじゃないでしょうか。
ちなみに、著者の調査では物語の登場人物と「直に対話できる」と回答した人はほんのわずかだったとか……。私はごくごく少数派の人間なんだな、と再認識。でも、世界には仲間もいる、と励まされた結果でもありました。
あなたの中で常に語りかけてくる声は、あなたにとってどんな存在でしょうか? 友好的ですか? それとも思考を邪魔する嫌な存在ですか? 歓迎すべき声か、病的な声かを最終的に判断するのはあなた自身だ、と著者はいいます(どこからが幻聴か、治療が必要なレベルはどこか、著者は言及していません)。
私は物書きとして、意識の一部分にしばらく滞在してくれる登場人物たちとはいつまでも「友人」でいたいと思っています。そしてその友人が、作品の数だけ増えたらこの上なく幸せです。これからも、「解放された駐車スペース」に遊びに来た人物の文だけ物語を紡いでいくつもりです。
補足:
本書では、幻聴に関すること、スピリチュアル的な(いわゆる神の)声に関すること、そばにいるように感じる声など、様々な「内なる声」について書かれています。作家的視点以外の「内言」「聴声」に興味を持たれた方は、本を手に取ってみて頂けたらなと思います。
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