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ごみ捨ての朝

 私は山口県の日本海側の長門市仙崎で育った。
かまぼこの・・と言ったら通じる人もいるかもしれない。
漁師町だった。

 あまりガラはよくないし、漁師同士は仲良くもあり、ライバルでもあるので、夏祭りの打ち上げではキレイ、上品、優雅とは真逆の世界をよく観てきた。

 そんな人たちと海の匂いと共に育った。

 家から海まで徒歩20秒。

 ときに波も高くなるので海岸沿いの道路には堤防があり、
テトラポットもまあまあ敷き詰められていた。

 堤防にのぼり、海と空を一人でぼーっと観るのが好きだった。

 普段の波の顔は穏やか。

 ザッパーン、ザザーっと繰り返されるだけだが
単調の中に癒しを感じていたと思う。

 あとから近所のおばあさんやおじさんから
 「あんた、あそこにすわっちょったな」
と言われた。
 田舎はすべてオープン。
 町では鍵もかけないし、隠し事なんてないw(たぶん今は違う)

 特にごみ捨ての日の朝が好きだった。

 「あんた、何やってんの?もう学校遅刻するよ」

 母からよく言われた。

 学校に行きたくなかったのか、
堤防横のごみ捨て場にパンパンの袋を捨てた後、
いつもの堤防にのぼってしばらくぼーっとしていた。

 波音、鳥の鳴き声がいろんな雑音、雑念をかき消してくれた。

 自然と対話できる限られた時間

 もしかしたらごみ捨ての朝はそんな特別日だったかもしれない。

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