やらかしてもカバーできるようにしておけば大丈夫という話(NC旋盤の場合)
「ヤバい、やってしまった•••。」
誰しも仕事においてこう思った経験はあるのではないでしょうか。
私は大事な下期予算のデータを消してしまったことがあります。
バックアップを取ろうとした時に操作を間違えてしまい、1から作る羽目になってしまいました。
やっていた仕事は1人でするものだったので、周りに迷惑はかけませんでしたが、現場仕事の工程でやらかしてしまうと後工程が遅れてしまいます。
またやらかしに気付かない場合は、規格外の製品を造ったことでお客様にご迷惑をかけてしまいます。
誰だってそんなことは避けたいですよね。
そんな大惨事を起こさない為の対策は打っておくべきです。
今回は、製造業の現場で働いている私 鉄鋼太郎が、過去に実践した大惨事を防ぐ方法について紹介したいと思います。
といっても、大事なのはこれだけです。
1.工程の急所を見つけること
2.1.をフォローできるようにしておくこと
終
制作・著作
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と書いてしまえばここで終わってしまうのですが、あまりにも味気ないので、実例をもとに紹介させていただきます。
鉄製品を造る際には、ロールという部品を使います。
熱した鉄の塊に上下からロールを押し当てることで、鉄製品は作られています。
このロールは製品の形を決める大事な部品で、NC旋盤という機械でプログラムされた型通りに削り出されています。
このNC旋盤の取り扱いにミスがあると、型の形が要求とは異なってしまうため、仕様外の製品ができてしまうのです。
なのでこのNC旋盤を使う作業というのはめちゃくちゃ重要なのですが、
先ほどお伝えした 1.工程の急所を見つけること でいう急所というのは次の3つです。
①プログラムを呼び出すとき
②手動対応から再度プログラムを呼び出すとき
③削る刃物の大きさを入力するとき
順を追って説明します。
①プログラムを呼び出すとき
先ほども少し触れましたが、NC旋盤にはプログラムが内蔵されており、選んでゴーサインを出すと、プログラムされた型通りに刃物が動き出し、ロールを削るようなつくりになっています。
その選ぶプログラムを間違えれば、当然要求とは違う形にロールは削れてしまいます。
同じ材料で作っても、調理法を間違えればカレーはいとも簡単に肉じゃがになってしまうのです。
②手動対応から再度プログラムを呼び出すとき
実際に作業していると予想外にロールが硬く、プログラムに頼るだけでは思うようにロールが削れない場合があります。
その際は削れない箇所を手動で削っていくしかないのですが、手動操作が終わった後、仕上げのために再度プログラムを呼び出してロールを削ることがあります。
その際に手動で削っていた時と同じ座標のままでプログラムを開始させてしまい、意図とは異なる箇所を削ってしまうことがあります。
③削る刃物の大きさを入力するとき
プログラムを呼び出してロールは削っていくのですが、ロール内部に欠陥があった際には、小さい刃物でその欠陥を取り除いていきます。
ロールと刃物との距離をNC旋盤へ正確に伝える必要があるため、刃物の大きさをNC旋盤へ入力しなければなりません。
大きい刃物を使う際はロールと刃物との距離は大きく、小さい刃物を使っているときは小さくなります。
なので大きい刃物を使っているのに小さい刃物の径を入力してしまうと、刃物がロールにめりこみ意図とは違う形にロールは削れてしまいます。
これら①〜③のタイミングがNC旋盤を使う上での急所です。
ここから先ほどお伝えした 2.1.で見つけた急所でやらかしてもフォローできるようにしておくこと
を考えていきますが、やっていることは基本的に同じで「オペレーターがミスっても大丈夫なようにプログラムを改造する」ということです。
①プログラムを呼び出すとき
元のプログラムには、製造する鉄製品の品種や、ロールの上下、刃物の初期位置、刃物の大きさ、といった情報も含まれています。
ミスを調べていくと異なる品種のプログラムを呼び出すことは少なく、ロールの上下を間違えるパターンが多いことがわかりました。
なので、オペレーターにロールの「上・下」のいずれかを入力してもらい、その情報がプログラム内のものと一致しているかを確認するように組み直したのです。
一致している場合は問題なくロールを削ることができ、間違っている場合はエラーメッセージが画面に表示されるようにしました。
これにより呼び出すプログラムを間違ってしまっても、NC旋盤が動くことはありませんから、操作をやり直せば、問題なくロールが削れるようになるのです。
②手動対応から再度プログラムを呼び出すとき
③削る刃物の大きさを入力するとき
先ほど①のパートにて「元のプログラムには、製造する鉄製品の品種や、ロールの上下、刃物の初期座標、刃物の大きさ、といった情報も含まれています。」と言いました。
これを再び活用します。
お分かりでしょうか。
②の場合は再度プログラムを呼び出す前に刃物の初期座標を、③の場合は刃物の大きさを入力するようにプログラムを改造し、プログラム内のデータと照合するようにしたのです。
この程度の改善ですが、これにより①〜③のケースにおいて、誤った形にロールを削ることは無くなりました。小さな改善ですが中々に大きな効果があります。
人は誰しもミスをするものです。
だからミスをする前提で作業を設計することを考えてみてはいかがでしょうか?
ちなみに冒頭で紹介した下期予算の仕事についてですが、1日余裕を持って仕事をしていたのでなんとかなりました(作り直すのが相当大変でしたが)。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
あなたの参考になったら幸いです。