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SS【審判の日】
仕事の引き継ぎをしたのはいいが、お腹が痛くて話をしっかり聞いていなかったぼく。
引き継ぎの時に渡されたこのリモコンは何やら変わっている。
温度調節のボタン、それに浄化と自転と書かれたボタンだけ。
リモコンで温度を一つ上げると、数年かけて地球の平均気温が一度上昇した。
寒がりなぼくは温度をもう一つ上げた。
また数年かけて地球の平均気温が一度上昇した。
人間たちの一部は、氷が溶け陸地が水没すると騒ぎ出した。
高い所にいるぼくは、まだ少し寒い。
でもぼくは、そんなことより気になることがある。
浄化と自転のボタンはいったい何に使うのかということだ。
とりあえず行動してから考えるタイプのぼくは、まず浄化ボタンを押してみた。
しばらくして地球の自転が止まった。
もの凄い速度で回転していた地球は、慣性の法則が働き、地球上の物質と空気はすべて東へ飛ばされた。
高層ビルは強風にあおられた空のペットボトルのように飛んでいった。
海水は巨大な津波となって大地にあるすべての物を洗い流した。
地球は浄化された。
どうやらぼくは神さまには向いていないらしい。
ぼくは自転のボタンを押した。
すると地球は再びもの凄い速さで回転し始めた。
審判の日。
かろうじて生き残った人間たちは、ぼくがミスした日のことをそう呼んだ。
終
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