SS【黒いサンタさん】755文字
「ねえお父さん。子どもの頃、家にサンタさん来たことある?」
「ああ。サンタさんなのかはよく分からなかったけど、似たような人は来たな」
「どういうこと?」
「あれは今にも雪が降り出しそうな寒いクリスマスイブだった」
「うんうん」
「誰かに足を踏まれた気がして目が覚めたんだ」
「ほう」
「ぼくはもしやと思って枕元に置いていた穴の空いた靴下を確認したけど何も入っていなかった」
「うんうん」
「そのあと何かドタバタと音が聞こえていたけど、空の靴下にガッカリしたぼくはムスッとして布団をかぶって寝たんだ」
「よく寝れるわね」
「翌朝、ぼくは誰よりも早く目覚めると、枕元に見たことのない黒いサイフを見つけた。中を覗いたぼくは、その時初めてたくさんのお札を見たよ。扇子が作れそうなくらいのね」
「へえーー」
「お母さんに渡すと、あら、サンタさんの落とし物ねって言ってお札を自分の財布にしまっていた」
「はあ・・・・・・」
「それからお巡りさんがたくさんやってきて手足を縛られたサンタさんを連れて行ったんだ」
「サンタさん、ずっと縛られていたんだね・・・・・・」
「ぼくはサンタさんをハッキリと見なかったからお母さんにどんな姿だったか聞いたんだ」
「お母さんはこう言ったよ。帽子も服も真っ黒で白いヒゲも無かった。でも顔は真っ赤に染まっていたって」
「ねえ、本当なら真っ赤なのはサンタのソリを引くトナカイの鼻だよね? それお母さんがやったんだよね? 赤いのは血だよね?」
「小さい頃だし、ぼくは寝ていたから真相はよく分からないよ。でも翌日、お母さんが近所のお金持ちの子にも負けないくらい大きなオモチャを買ってくれたんだ」
「それ口止め料じゃない? そう言えばお婆ちゃんの家に木刀あったよね?」
「こういう言葉を知らないか?」
「どんな言葉?」
「終わりよければ全てよし」
終