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自分の感受性くらい自分で守ればかものよ


今日は本、というか詩の話。

みなさん、詩集とか読まれますか?
本棚の中にありますか?

わたしは読書は好きだけど、
詩や詩集というものはほとんど触れたことがなく
子供の頃や10代の頃には読んでいたことが
あったのかもしれないけれど、
大人になってから、少なくとも覚えている限り
自分で選んだことはおそらくなくて。

そんな中で初めてちゃんと読んだ詩が
八木重吉さんと、茨木のり子さんのものでした。
八木重吉さんのものはまた今度、
別の記事で書こうと思っています。
今日は茨木のり子さんの詩のお話を。


どこかで見た、
「自分の感受性くらい自分で守ればかものよ」
という言葉が茨木のり子さんの
詩の一節だということを知り、
いくつかの本に収められているということでした。

その中で、
「言の葉」という詩やエッセイが年代ごとに
まとめられたシリーズの2巻を選びました。



私が選んだ「茨木のり子集 言の葉 2」は、
1970〜1980年代をまとめられたもので
1980年代は生まれた年ということと
「自分の感受性くらい自分で守ればかものよ」が
収められていることもありこれに決めたのでした。
全400ページほどの1冊の中の、前半150ページほどが詩、
残りがエッセイになっています。

心に残ったものはいくつもあれど、
やはり初めて読んだものの印象が強く
知らない方にも読んでいただきたいなと
思ったので、記載しておきたいと思います。




「自分の感受性くらい」茨木のり子


ぱさぱさに乾いてゆく心を
人のせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

ダメなことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ




自分のことを、自分以外の何かや
誰かのせいになどするな、
それはわずかに光る尊厳の放棄なのだと。
自分の尊厳を放棄するな、
自分自身と真正面から向き合え、
自身のことすら何かや誰かのせいにするのか、
自分の尊厳や感受性や自分自身を守るために
己が立ち上がらずしてどうするばかものよ、
そう言われているような、
強烈な右ストレートに心が吹っ飛ばされる。
叱咤激励というにしても、かなりの強さだ。

茨木のり子さんは大正15年生まれ、
19歳の時に終戦を迎えたそうです。
この詩も、戦争中に生活の中から芸術や娯楽が
消えていったときに詠まれたものだそうです。

ですがこの詩はおそらく、
今を生きる全ての年代に強く響きますよね。


ぱさぱさに乾いてゆく心を人のせいにするな。
気難しくなってゆく自分を誰かのせいにするな。
苛立つことを身近な人間のせいになどするな。
初心を忘れゆく自分を日々のせいにするな。
ダメなことの全てを、
自分の感受性が守れないことを、
人や時代や世界のせいにするな。

これだけでも、日常の中で響くことばかり。
響きすぎてじんじんと痛いほど。


教科書などにも載ってきた詩だと見ましたが
わたしのときにはなかったような…
いやいや、わたしのことなので、
どうせうとうと居眠りでもしていて、
忘れてしまっているだけなのだろう笑



わたしは弱い、
昔から今もずっとずっと弱い人間で、
弱いくせに必死に強がってきたような人間です。

だけども、弱いながらにも、
心を奮い立たせて踏ん張ったことだって
何度もあった。
その踏ん張りは、人から見たら
大したことないくだらないことかもしれない。
でもそうして、まだ生きている。

弱い人間でいい、弱いままでいい、
だけどずっと膝抱えてないで、
立ち上がるときは立ち上がって、
踏ん張るときは踏ん張ってみよう。
世界で一番の自分の味方は自分自身なんだ。
例え泣きながらでも、
立ち上がって踏ん張って少しずつ歩いてみると、
見える景色もすれ違う人たちも、
空の色も、心の色も、
変わってゆくかもしれないから。

著莪(シャガ)の花。
咲くのは4〜5月頃だけど、
初夏の季語になるそう。



よろしければこちらも。

誰かの悪意につまずいたかもしれない、
何かの不運につまずいたかもしれない、
でも、立ち上がらないのは誰のせいでもない。
立ち上がらないのは自分の問題。
誰かのせいにしたって、何も変わらない。


本や読書に関する記事をまとめたマガジンです。
よろしければ過去の記事も。



それでは今日はこの辺で。


最後まで読んでくださってありがとう。

また気が向いたら、来てくださいね。




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