須賀川市の中高生たちが、地域で暮らす人たちの困りごとを解決するアプリ開発に挑戦【まちづくりDX人材育成プロジェクト・須賀川ワガママLab報告会】
福島県須賀川市では2023年6月から10月にかけて、中学生・高校生を対象にまちづくりDX人材育成プロジェクト「須賀川ワガママLab」を行いました。
須賀川ワガママLabでは、須賀川市で暮らす中高生の皆さんと一緒に4ヶ月間活動し、地域のことを知り、さらに地域で暮らす人たちの困りごとを解決するアプリをつくる挑戦を行ってきました。
本記事は、2023年10月22日に実施した、須賀川ワガママLabでの挑戦を讃え合い、つくったアプリを発表する活動報告会「Wagamama Awards(ワガママ・アワード)」についてレポートしていきます。
須賀川ワガママLabを実施する背景
福島県須賀川市の人口は約7.5万人。多くの地方都市同様、近年の産業構造や生活様式の変化、さらには高齢化や人口減少による課題が多く存在します。
特に社会減の大きな要因となっているのが20〜30歳代の若者の流出です。地元に暮らし続けたくても仕事を理由に離れていくという現状も存在しており、若者が暮らし続けられるまちであるためには地域におけるデジタル人材を育成し、新たな挑戦の機会をつくることや仕事の創出が欠かせません。
須賀川南部地区では、令和3年1月に「須賀川南部地区エリアプラットフォーム」を構築し、令和4年3月には未来ビジョン「みちしるべ」を策定しました。そこで設定した「10のみちしるべ」のうちの2つである「中高生が自分の将来をイメージできるまち」「先端技術を導入し便利で快適なスマートなまち」の実現を目指し、中高生を対象としたアプリ開発プログラム「須賀川ワガママLab」を実施してきました。
須賀川ワガママLabとは
須賀川ワガママLabは、中高生自らがデジタルを活用して須賀川の地域課題の解決者となり、地域で暮らす人の困りごとを解決するアプリをつくる取り組みです。須賀川市で生まれ育った8名の中高生が、4か月にわたって活動してきました。
これまでの活動スケジュールはこちらです。
たったひとりの困りごとを解決するアプリをつくる
地域の課題を解決する、というと難しく感じるかもしれません。須賀川ワガママLabでは、たったひとりの困りごとを解決することを通じて、地域の課題解決に繋げていきます。
アプリをつくるのに使用したのがMIT App Inventor(MITアップインベンター)です。アメリカのボストンにあるマサチューセッツ工科大学が提供している誰もが無料で使えるソフトウェアです。
MIT App Inventor(MITアップインベンター)とは
MIT App Inventorは誰でもパズル感覚でスマートフォンアプリを作成できます。特徴なのは、初めて使用する場合でも30分以内に簡単なアプリをつくれてしまうというところです。
プログラミングと聞くと、特別な知識が必要で難しいというイメージがあるかもしれませんが、直感的にブロックを積み上げることでアプリがつくれます。
コードを書かずに操作ができるので、特に若者たちがテクノロジーの消費からテクノロジーの創造へと移行できるようになります。誰もが課題の解決者になれるように、ソフトウェア開発の民主化を目指しているところがMIT App Inventorの特徴になります。
現在、世界中の人たちがMIT App Inventorを使って身の回りの課題解決のためのアプリ開発を行なっています。ワガママLabは世界のMIT App Inventorのコミュニティと連携しながら、日本で活動を広めています。
地域交流創造施設「須賀川みらいラボ」にて開催
今回、会場となったのはNTT東日本の地域交流創造施設「須賀川みらいラボ」です。ワガママ・アワードは、須賀川みらいラボのオープンの日に実施し、拠点での最初のイベントとなりました。
アワードの前にはオープニングセレモニーも執り行われました。
今後、須賀川みらいラボは地域内外の多様な人材の交流が行われ、 デジタルを活用した地域課題の解決などを推進する地域交流創造拠点となります。
須賀川ワガママLabはその取り組みの第一弾として取り組んでいます。アワードの冒頭には、関係者の皆様からのご挨拶もいただきました。
参加した中高生たちは、たった1人の困りごとを解決することを真剣に考え、アプリとして形にしてきました。2つのチームがつくったアプリの紹介します。
挑戦することが不安な高校生の背中を押したい
1チーム目は高校3年生と2年生の学生たち。「誰のどんな課題を解決したいか」を話し合っていると、みんな共通した経験があることに気がつきました。
それは、なにか挑戦したいことがあっても1人だと一歩踏み出すのが不安で、あきらめたことがあるという体験でした。
実際にこのチームには、須賀川ワガママLabに参加することが1人だと心細かったので友達を誘ってきたというメンバーもいました。
挑戦したいという想いを持った高校生があきらめることがないように。挑戦しようとする高校生の背中を押せるアプリをつくることにしました。
アプリ内では、自分の目標を投稿することができて、さらに他の人の目標も見ることもできます。自分が掲げた目標と近い目標を持った仲間とLINEのオープンチャットのグループでつながれるようにしました。
また、須賀川市のバイトやボランティア情報も掲載して、挑戦できる機会も見つけられるようにしています。
何かやりたい、挑戦したいという高校生が仲間や行動できる機会を見つけ、自分がやりたいことをやれる人が増えるようになればという想いを込めています。
おじいちゃんが友達をつくって楽しく暮らしてほしい
次は中学生と高校生の混合チームです。身近な家族の困りごとを解決したいと考えた結果、みんな共通して感じていたのが、自分のおじいちゃんやおばあちゃんが人と関わる機会が少ないということでした。
高齢者の孤独は、日本全国で起きている地域課題のひとつです。調べていくと、須賀川市では高齢者向けのイベントはたくさんやっていることがわかりました。ではなぜ、自分たちのおじいちゃんやおばあちゃんはそこにいかないのでしょうか。
実際に本人への取材をしてみたところ、理由はそれぞれ違うことに気がつきました。最初はみんなで1つのアプリをつくろうとしていたのですが、自分のおじいちゃん、またはおばあちゃん専用のアプリをつくることにしました。
このアプリができるまでのストーリーと、アプリの詳細はこちらの記事で紹介しています。
たったひとりの困りごとが、地域の課題の解決につながる
中高生たちが注目した、自分たちや家族の困りごと。”たった1人”に着目して深掘りしていけばいくほど、課題の本質にたどりつき地域全体の課題解決のヒントにつながることを体感してきました。
そして「こういうものがあればいいのにな」というアイディアが、実際にアプリになっていたことで、会場で発表を聞いていた方々からも圧倒的な納得感や共感を呼んでいました。
発表を聞いてくださった皆様にも感想をいただきました。
ワガママLabプログラム開発に携わる、マサチューセッツ工科大学認定・教育モバイルマスタートレーナーの石原先生にもコメントをいただきました。
4ヶ月間の活動を通じて感じたこと
発表メンバーたちに感想を伺いました。
ワガママ・アワードをもって須賀川ワガママLab第1期の全プログラムは終了となります。須賀川みらいラボという拠点もでき、須賀川市では今後、多様な人たちが集まりデジタルを活用した地域課題を解決する取り組みが加速していきます。
須賀川ワガママLabの今後の取り組みにもぜひご注目ください。
▼須賀川ワガママLabのこれまでの活動をまとめたマガジンがこちら
▼当日の様子が「テレビュー福島」にて放送されました