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やっと自分に「いいよ」って言える

私が俳優を目指すことを、ずっと否定してきた「私」がいる。

できない、下手だ、あれを持ってない、これを持ってない。自分が舞台に向いていない理由を探し続ける私だ。

でもそのなかで、じゃあどうやって克服しよう、あれをやればいいか、これを学べばいいかとしがみつく私もいた。


演劇を始めて12年、お客様からお金をいただくようになって6年が経った。

お客様からお金をいただくようになってからの6年、長い長い時間、私はずっと自分に「いいよ」って言えなかった。

下手なくせに、お金をもらって舞台に立ち続ける私を許せなかった。

遊びでやってるわけじゃない。でも下手くそだ。自分がやってることを真剣だと思ってもらえるかどうか、ずっと気がかりだった。

そうなると、演技をしていても楽しくなかった。
中学校と高校の6年間演劇部にいて、毎日楽しくて仕方なかったあの頃とは決定的にちがった。
ずっとどこかで苦しかった。

あの楽しかった頃より確実に芝居が上手くなっても、私はちっとも楽しくなかった。それでも演劇にしがみつく私がいた。どうして今楽しくないのか知りたかったから。あの頃の私が持っていたものを、私は手放してしまったように感じたから。


一度演劇をやめようとした。

けれどうまくいかなかった。結局また芝居をはじめた。

でも、俳優は向いていないと思った。


向いていないと感じながら、私はまたさらに演技を学ぶために、ある演技教室の門を叩き、そこに通っている。

通い始めてから半年すぎて、私は昨日と今日で、やっと自分のしたかったことと、自分が演技に求めてきたものが一致した。


私は私のために芝居をしてきたのだと思った。そしてそれを「いいよ」って思えた。

私が私のために何かを願うことを、やっと自分自身に許すことができた。

演じることを続けてきてよかったと、私はこの道を通るべくして通っているのだと、やっと私を認めることができた。

長い長いトンネルだった。


あとは私の歩いて行く先が、お客様のいる舞台に繋がっているといい。

私が私のために望むことが、いつか誰かの光になりますように。

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