冬の日、姫林檎のケーキ

あの時、あの子は私のことを心から心配してくれていた。
体のことも、心のことも。

私は、笑いながら、でも真面目な顔で受け止めた。
ああ、なんてありがたい。
嬉しいな。
うん、気をつけないとね。
でもやるしかないんだ。
だから大丈夫だよ。

自分が一番自分のことを分かってるつもりだった。
今、はっきり思う。
全然大丈夫じゃなかったんだな。
全然大丈夫に見えなかったんだろうな。

あの子の気遣いが、思いやりが、何年越しに、暖かく届く。

今思えば、あの頃の私はハイだった。もっともっと頑張らないとって張り切っていた。身体のことも心のこともよく分かってなかった。本当にね。

自分の身体を置いて行って気持ちだけが先にさきになって、それは無理してるということだ。
人は、本当の意味で、根を詰めて頑張らなきゃいけないことなんて何もない。

あの時あの子と食べた姫林檎のケーキはとっても美味しかった。姫林檎から、あの子から、沢山の力をもらっていた。
そしてそれはいつまでも、どんなに時が経っても、胸の中できらりと光って、私に力を与えてくれる。

あの日、私は珈琲の香りに包まれながら、あの子の優しく可愛い愛に触れていたこと。そのそばで、膝を抱えて目を瞑り、憩っていた自分のこと。

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