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あそこにこそ、求める金色の種があるにちがいない|『シュナの旅』


本作は、宮崎駿が、1983年に発表したファンタジー絵物語。

絵物語、である。漫画ではない。

痩せた穀物しか育たず、人狩り、人買いが横行する世界。

食料は少ないが、平和な王国の王子・シュナは、ある日、見たことがない服装の異国の男を助けた。

疲労と飢えで、死を待つだけになった男は、死の床でシュナにこう語った。

「わたしは この地のはるか東方にある 小さな国の王子だ
国は貧しく 民はいつも 飢に苦しんでいた」

『シュナの旅』

そして、その異国の男は、シュナに持っていた袋の中身を見せた。

そこにはシュナの見たことがない、大きく、重い穀物の実が入っていた。

この実を貰えないか、というシュナに男は

「あげてもよい が これを地に撒いても無駄だ……
この実は殻をむかれて すでに死んでいる (後略)」

『シュナの旅』

そして、「貧しくとも それがわれらに与えられた天命なら この地に抱かれて埋もれるのも人の道だ」とさとす長老たちを振り切り、シュナは旅立つ。

西の彼方にあるという、この大きく、重い実の穀物が豊穣の波となってゆれる場所。
“神人の土地”を目指して。

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風の谷のナウシカよりも前のオリジナル作品

著者は 宮崎駿
説明不要の、世界的な映画監督。
本作は宮崎駿の初のオリジナル作品。

レーベルは アニメージュ文庫

出版社は 徳間書店

発売は1983年6月


アニメーションにするには重い作品。

1983年、ってことは『ルパン三世カリオストロの城』(1979)よりは後かもしれないけど、『風の谷のナウシカ』(1984)よりは前に描かれた作品のようだ。

本作は、宮崎駿がチベット民話「犬になった王子」を元に描いた作品だそうだが

アニメーション化に至らなかったのは、宮崎駿曰く

現在の日本の状況では、このような地味な企画は通るはずもありません。

『シュナの旅』あとがきより

……だそうだ。

作品に関する詳しい考察は岡田斗司夫さんがやってるので、こちらの方がよくわかります。(かなりネタバレしてるけど。徹底解説だから。)


確かに、アニメーション映画にはある程度必要そうな、活気、というか、甘さ、というか、ポップさ、というか、そういう物が一切ない。

人買いに、奴隷のヒロイン・テアを気に入ったなら持っている旧式の武器と交換しないか、と言われ、武器を手放して彼女を助けるべきか迷っていたシュナに、テアが言った言葉が

「武器を手放せば あなたもたちまち狩られてしまう」

『シュナの旅』

殺伐としてる……
世界に救いや良心がない。

っていうか、人買いはシュナに連れているヤックル(『もののけ姫』に出てきたお馴染みのヤックルです。)か、旧式の武器を交換材料に持ちかけてます。

それって、テアたちを引き渡したあと、シュナも含めてまた人狩りで回収……ってこと?

いや、そのつもりがあってもなくても、そうなる、ってことなのかしら。

そして、元になった作品は『犬になった王子』ですが、内容の印象は『天の火をぬすんだウサギ』を思い出しました。

意外と、『進撃の巨人』とかがヒットした現在なら、この『シュナの旅』も映像化したら、受け入れられそうな気もします。

『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『もののけ姫』『ゲド戦記』たくさんのジブリ作品に影響を与えた作品。
お好きな方は、是非読んでみてください。

(って、今回は私が読んだのが遅すぎた……みんな読んでるよね…… 私も今回、子どもの頃、書店で立ち読みしただけなのを慌ててちゃんと読みました)


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かおり
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