展覧会レポ:生と死を糸で紡ぐ塩田千春、大阪中之島美術館で12月まで!
【約1,600文字、写真19枚】
場所やものに宿る記憶を糸で紡ぐ塩田千春氏。「存在とはなにか」をテーマにした展覧会で、私も絡まってきました。
いきなりっ!
会場に足を踏み入れると、蜘蛛も驚くほどの糸が張り巡らされたインスタレーション。これは過去に誰かが見た視線の痕跡でしょうか。
ポタポタと水滴が落ちる演出は、現実と幻想の境界を曖昧にします。水は立ちのぼって、戻ってくる、そんな「つながり」を感じさせます。
大阪出身のアーティスト、塩田千春氏が16年ぶりに故郷で大規模な個展を開催します。ベルリンを拠点に活躍する塩田氏は、「生と死」という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を問い続けています¹。
家>服>皮膚>内蔵
大量の糸は血管やへその緒を連想させ、命のつながりを感じさせます。
「~。これら全てが私であり、そして頼りなく私でないような感覚。それが他者である自分なのだ。」³
きっと誰もが、人生で最初に体験するのは「抱きしめられること」だったはずです。塩田作品は、もっと命を近くで感じたいという思いから制作されたのでしょうか。
「~。ぼんやりと流れる雲を見ながら座っていると私が私でなくなっていく感覚に陥る。」³
塩田氏の作品は、彼女自身の人生と深く結びついています。流産やガンとの闘病を経験し、自分がバラバラになった感覚を作品に昇華させているのです。
予期せぬ体験や偶然のつながりを通じて、一見バラバラな無数の点が絡まり合う複雑な世界を見せてくれます。絡まり合って抜け出せない、鳥肌級の「ボットー体験」です。
舞い上がる、お便りのコーナー
今回の展覧会では、全世界的な感染症の蔓延を経験した私たちが意識せざるを得なかった他者との「つながり」に焦点を当てています。
「〈つながり〉の感覚を持つということは、個人が健全な自己像を保持する上で決定的に重要である」²
この膨大なメッセージは、すべて「つながり」をテーマにした内容です。
タイトルの「アイ」には3つの意味があります。【アイ】-「私/I」、「目/EYE」、「愛/ai」を通じて、私たちと周囲の存在をつないでくれます。
過去の展覧会情報も宜しければご覧ください。
■information
大阪のおばちゃん!?
塩田氏のご両親については詳しく分かりませんが、ショップでは「大阪のおばちゃん」の雰囲気を感じられます。…でないと、こんなことはしません。
作品で使った糸を再利用してタワシを作るなど、ユーモアと実用性が満載です。つい買ってしまいました。
深刻な表情が印象的な塩田氏ですが、「なんでやねん」と笑いながら許可された気がしてきます。
ソース;
¹:フライヤー「塩田千春 つながる私(アイ)」大阪中之島美術館
²:木村浩則『「つながり」の教育』三省堂、2003
³:展示パネル「塩田千春 つながる私(アイ)」塩田千春
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