見出し画像

展覧会レポ:生と死を糸で紡ぐ塩田千春、大阪中之島美術館で12月まで!

【約1,600文字、写真19枚】

 場所やものに宿る記憶を糸で紡ぐ塩田千春氏。「存在とはなにか」をテーマにした展覧会で、私も絡まってきました。

入口の手前からこのお出迎え!
《インターナルライン》2022/2024、インスタレーション:赤い布、ロープ 550.0×1100.0×1400.0

いきなりっ!

《巡る記憶》2022/2024、インスタレーション:ミクスト・メディア 600.0×1290.0×3050.0

 会場に足を踏み入れると、蜘蛛も驚くほどの糸が張り巡らされたインスタレーション。これは過去に誰かが見た視線の痕跡でしょうか。

よーく見ていただきますと…
微かな水滴が!

 ポタポタと水滴が落ちる演出は、現実と幻想の境界を曖昧にします。水は立ちのぼって、戻ってくる、そんな「つながり」を感じさせます。

次の会場へさきほどの《巡る記憶》が溢れでてます。右手はカンヴァスに糸が張り巡らされた《終わりのない線》横もすごい

 大阪出身のアーティスト、塩田千春氏が16年ぶりに故郷で大規模な個展を開催します。ベルリンを拠点に活躍する塩田氏は、「生と死」という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を問い続けています¹。

家>服>皮膚>内蔵

 大量の糸は血管やへその緒を連想させ、命のつながりを感じさせます。

《家から家》2022/2024、インスタレーション:糸/鉄枠 サイズ可変

「~。これら全てが私であり、そして頼りなく私でないような感覚。それが他者である自分なのだ。」³

 きっと誰もが、人生で最初に体験するのは「抱きしめられること」だったはずです。塩田作品は、もっと命を近くで感じたいという思いから制作されたのでしょうか。

《多様な現実》2022/2024、インスタレーション:ミクスト・メディア サイズ可変

「~。ぼんやりと流れる雲を見ながら座っていると私が私でなくなっていく感覚に陥る。」³

《第二の皮膚》2023、黒ワイヤー 50.0×45.0×35.0

 塩田氏の作品は、彼女自身の人生と深く結びついています。流産やガンとの闘病を経験し、自分がバラバラになった感覚を作品に昇華させているのです。

《他者の自分》2024、ミクスト・メディア サイズ可変

 予期せぬ体験や偶然のつながりを通じて、一見バラバラな無数の点が絡まり合う複雑な世界を見せてくれます。絡まり合って抜け出せない、鳥肌級の「ボットー体験」です。

舞い上がる、お便りのコーナー

 今回の展覧会では、全世界的な感染症の蔓延を経験した私たちが意識せざるを得なかった他者との「つながり」に焦点を当てています。

《つながる輪》2024、1500通以上の手紙が織り込まれた

「〈つながり〉の感覚を持つということは、個人が健全な自己像を保持する上で決定的に重要である」²

 この膨大なメッセージは、すべて「つながり」をテーマにした内容です。

 タイトルの「アイ」には3つの意味があります。【アイ】-「私/I」、「目/EYE」、「愛/ai」を通じて、私たちと周囲の存在をつないでくれます。

《風景》1992、油彩/カンヴァス 163.0×130.0


 過去の展覧会情報も宜しければご覧ください。


■information

「塩田千春 つながる私(アイ)」
会期:2024年9月14日(土)– 12月1日(日)
会場:大阪中之島美術館 5階展示室
住所:大阪市北区中之島4-3-1
電話番号:06-6479-0550(代表)
開館時間:10:00 – 17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日、9/17(火)、24(火)、10/15(火)、11/5(火)
*9/16(月・祝)、23(月・休)、10/14(月・祝)、11/4(月・休)は開館
料金:一般 2000円 / 高大生 1500円 / 中学生以下無料
事前予約:不要
所要時間:約1時間
混み具合:常に誰かいる
写真撮影:可能(映像など一部の作品は不可)
webサイト:https://nakka-art.jp/


大阪のおばちゃん!?

 塩田氏のご両親については詳しく分かりませんが、ショップでは「大阪のおばちゃん」の雰囲気を感じられます。…でないと、こんなことはしません。

 作品で使った糸を再利用してタワシを作るなど、ユーモアと実用性が満載です。つい買ってしまいました。

塩田千春の母&フレンズ特製!つながるたわし 500円(税込)

 深刻な表情が印象的な塩田氏ですが、「なんでやねん」と笑いながら許可された気がしてきます。

ソース;
¹:フライヤー「塩田千春 つながる私(アイ)」大阪中之島美術館
²:木村浩則『「つながり」の教育』三省堂、2003
³:展示パネル「塩田千春 つながる私(アイ)」塩田千春


最後までお読みいただき、ありがとうございます!
スキ・コメント・フォローなどいただけますと、お礼の品をもって参上したいくらい喜びます。ご感想もぜひお聞かせください。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?