【第10話】朝時間にキラキラは必要ない
今回の1分で読める1000文字小説は、仕事の合間のカフェ時間が舞台。話題は朝活に。主人公は朝活の話が面白くない。キラキラした自分を必死にPRされているように感じ不愉快だったからだ。その晩まだ不愉快さが消えず自分の朝時間を振り返ることにした。
1000文字小説
この話は俺へのマウントか?最近は毎朝5時には起きて、軽いヨガをして、手帳にジャーナリングし、スムージーを用意して朝食をとり、朝食後はペン習字の練習をするのだそう。どっかの女性誌の朝活特集に出てきそうな内容を丸パクリしたみたいだ。
「それでね、一ヶ月くらい続けてると体の調子はよくなるし、毎日が楽しくなってきたのよ」
「長く寝た方がいいんじゃない?」とやや投げやりに応える。彼女が仕事仲間じゃなかったら早々に話を切り上げたいところだ。次の打ち合わせまでの調整のカフェ時間が辛い。
「だから、早く寝るのよ。夜時間をグッと減らすの」
「俺には無理だわ、動画見たいし、晩酌もしたいし」
さっきよりも体をやや乗り出してきて、いかに朝時間が素晴らしくて、どうすれば出来るようになるのか、まるで何かをセールしているかのように説明してくる。
「一日の疲れやストレスをリセットする楽しみが必要だわ」と俺。
「そうよ、それを朝時間にあてると毎日が良い方向に変わるのよ」
頭が痛くなってきた。すごいねと賛辞の言葉が欲しいのだろうけど、とても言う気にはなれない。生活が乱れた俺を心配して朝時間というアドバイスをしている感じに段々となってきているが、イケてるを演じている自分をアピールしてるだけにしか見えない。虚栄は醜い。
その晩、ビールを片手に今日の不愉快な会話を思いだす。朝活をやったことはあるが、自分には合わず今に至っている。自分に甘いのかもしれないが、朝のルーティンで最も大事にしているのはリズムだ。いつもと同じリズムで朝を過ごすことが今の俺には合っている。
いい機会なので今の朝のルーティンを振り返ってみた。
・起床
・天候に関わらずベランダにでて朝の空気を胸いっぱい吸う
・着替え、朝食、トイレ
・ごみ捨て
・玄関の掃除
・植物への水やり
・めざましテレビの「イマドキ」のコーナーを視聴
・トイレ
・家を出る
・ほぼ日刊イトイ新聞を読む
・会社の始業時刻までの約1時間の自由時間
自由時間ではなるべく仕事をせず消費だけの時間つぶしの時間にもせず、手帳なりパソコンなりに何かしらをアウトプットするようにしている。
さぁどうだ俺の朝のルーティン。雑誌に載るような派手さはない。SNSに投稿するようなキラキラ感はない。それじゃダメか、自分に一番合った心地よい朝の過ごし方じゃダメなのか。朝が一番大事な時間なんだったら朝こそ自分らしく過ごせばいい。