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読書ログ:ヤバい経済学 世界の裏側を知った気になれるお得な本
こんにちは、アイルランド在住のつぐみです。
今日は読書ログ。原題 Freakonomicsは、10年以上Podcastでも続いている超人気番組。身近にある不思議を経済学の観点から分析する、ものすごく面白い読み物です。
大ヒットしたので購入していましたが長い間積読でした。もっと早く読めばよかった!
アングラなトピック、論争を巻き起こしたトピックなど、事実だから仕方ないとブラックユーモアたっぷりに語る小気味いい本。
■経済学はインセンティブの学問
人には、経済的、社外的、道徳的インセンティブがある。
法律や社会的規範、報酬などルール設定を誤ったばかりに、変なインセンティブが働くことがあまりにも多い。
中絶と犯罪率の因果関係は有名ですが、この著者の1人が学会に発表したらしい。胎児の価値と赤ちゃんの価値比較したり、相当な反発があったらしいが、データは嘘をつかない。
その他にも、ルール設計ミスによるインセンティブが誤った方向に生じた例がたくさん紹介されてる。
・扶養控除ルール変更により、国民台帳上、子供が700万人も消えた
・シカゴで5%の学校で、「先生による」テスト回答書き換えの不正が行われていた。
・相続税減額が適応された年は、前年の12月の死亡率が低く、適応後1月の死亡が不自然に高かった。
■正しいデータの収集方法
例えば、路上犯罪は数えやすくデータにしやすいけど、知的犯罪はデータにしづらい。なぜなら路上犯罪は数えやすいけど、知的犯罪は私たちの耳に入るのがインチキして捕まったほんの一部の連中のことだけだから。横領を働く連中のほとんどは平穏無事に、また理論的には幸せに、生きている。
事実をみるために、正しいデータ収集には知恵を絞る必要がある。
KKKやコカイン売人への潜入調査など、潜入にも様々なインセンティブがあるが、逮捕のためだけではなく、論文を書いたり情報を売るためなどの理由で潜入をする人たちもいる。そのような人たちが入手するデータは非常に貴重。
KKKが秘密主義だからこそ与えていた恐怖を、情報漏洩によって無効化したり、コカイン売人のヒエラルキーはプロスポーツ選手や企業のそれと何ら変わりないことなど、興味深い事例が紹介されている
■良い質問者
疑問を立てた時、それが果たして良い質問か否かをまず考える。
論文とは、ストーリーを語ること。伏線やトリックを貼り、読む人にこちらが思う道筋を通り結論に辿り着かせる
データは嘘をつかないので、直感に反するデータに基づく事実を確認する。
サメとイヌどちらが本当は危険なのか。
子供を遊びに行かせる時に、銃のある家庭、プールのある家庭だと、後者に行かせる親が圧倒的に多いが、死亡率は後者の方が高い。(環境要因として銃がある家の方が危険だとは思うけど)
我々はリスクを危険と恐怖で計る。車と飛行機は、コントロールの有無と恐れの違いであり、恐れは慣れた環境で低下する。
また実際の値段は、健康リスクや時間も加味した金額にならなければならない。時間や健康被害も価格の一部。レストランで待つ時間も価格、健康の長期的影響を考えるとチーズバーガーはサラダより2.5ドル高い
■子育て
子供の成績は、育ての親の知能指数より生みの親の知能指数にずっと強い影響を受ける。養子は大概知能指数が里親より低い。子供を養子に出す母親は養子を取る人たちに比べて通常知能指数が低いから。かなりクレームが来そうな結論を出しているけど、彼らは科学データが全てではない、あくまで統計と主張して言いたい放題。
しかし、予想していなかったが、一番心に響いたのは子育ての部分。
学業成績と相関がある項目リストと、相関がないリストを比べると面白いことがわかる。例えば①家に本がたくさんある(相関アリ)。②親が毎日本を読んであげる(相関ナシ)。
①は親がどんな人か、②は親が何をするか。親として何をするかはあんまり大事じゃない──大事なのは、親がどんな人か。つまり親が自分を高めることが結局子供の成績を上げる。
本がたくさんある家の子は成績がいい。しかし、これは本をたくさん読むからではなく、本がたくさんあるような家庭は、教育に重きを置き学びを重視する人が多いから、その姿勢が子供に引き継がれるため成績が良くなる。
「本は本当は、知恵をくれるものじゃなくて知恵を映すものなのだ。」というセリフにしびれる。
世界の裏側を見た気になれる興味深い本でした。