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読書ログ:Bad blood シリコンバレー捏造スキャンダル全真相


休暇中で読書が進む!
数年前にシリコンバレーを騒がせた捏造スキャンダルが、元従業員の告発を経て世間に暴露されるまでの話。

スタートアップやシリコンバレー投資環境、訴訟事情など、ドラマのような展開ですが、これが現実に行われているのがなんともアメリカらしい。ドラマ化・映画化もされた衝撃の企業捏造ストーリーのオリジナルが本作品。サスペンス好きにおすすめ。



シリコンバレーを騒がせたヘルスケアスタートアップきぎ、「セラノス」の成長と転落を描いたノンフィクション。
若く情熱に溢れたスタンフォード中退のエリザベスと、その恋人かつCOOであるサニーが、シリコンバレーを騒がせた詐欺企業であるセラノスの中心人物。


エリザベスは、スティーブ・ジョブズを崇拝し、タートルネックに身を包み、そのカリスマ性で次々にサポーターを獲得していく。実際には全く機能していないにも関わらず、革新的なヘルスケア技術を開発したとして、セラノスを時価総額90億ドルのユニコーンにまで成長させる。


彼女のサポーターは、スタンフォード大学教授、ベンチャー業界の重鎮、元国務長官、大物政治家、軍人、有名弁護士と錚々たるメンバーで、実際の機器開発が全く進んでいないにも関わらず、企業価値だけどんどん増えていく。エリザベスはTIME誌の最も影響力のある100人にも選出、メディアへの進出、バイデンの企業訪問など、外から見るとアツいスタートアップに見えるが、中身が伴っておらずただの虚構。


安全が確保されていない検査機器が、実際の市場で利用されていた事実にも驚愕だが、何より興味が惹かれるのが、こんな杜撰なテクノロジーが、なぜこんなにも長い間にもわたって、警鐘を鳴らされることもなく、成長し続けられたのかと言うところ。
それは、誤った方向に用いられたエリザベスの類まれなるピッチの才能と、セラノス内での徹底した秘密主義、情報分断、恐怖政治という企業文化。


いたるところで全く同じ構図で、見識があるはずの人々が騙されているのが本当に興味深い。現場の科学者や医療技術者は、医療機器や検査の不具合及びその会社対応に不信感を募らせて、毎回上層部に報告するのに、そのトップ層は軒並みエリザベスに騙されており、自分に上がって来た警鐘を無視してしまう。


原因はいくつもあって、ヘルステックという金持ち老人が好みのインダストリー、低金利市場で金余りの投資家は血眼で投資先を探していた環境、若い女性主導のユニコーンという市場が求めていた理想像などが相まってこの事件が起きてしまった。
多くの商品は夢を見せるために、売られているわけで、エリザベスは金持ち達に夢を売っていたんだと思う。

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