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#704 学校歴が今ほど重要でなくなる社会はもうすぐ来る〜推薦・AO入試を批判した武田塾創業者・林尚弘氏の発言から考える〜

 私の出身高校は、生徒それぞれの高校生活に合うようにコース別に分かれている学校です。

 今は、時代の流れからコースがより複雑化していますが、当時は

 ①最難関大学を目指すコース
 ②勉強と部活を両立されつつそれぞれの進路を目指すコース
 ③スポーツを中心に全国レベルを目指すコース

 の3つに別れていました。学年が上がるにつれ、①に所属する生徒と、②に所属する一部の生徒は大学進学を目指していきます。

 事実として当時の①と②に所属する生徒にはある一定の学力が存在しました。世間で有名とされる大学に、一般入試で合格するには②に所属する生徒はなかなか厳しい。

 そんな中、彼らは指定校推薦を経て、有名大学への進学を目指します。①と②では、そもそも校内試験の難易度も異なり、その結果、指定校推薦に必要な評定(いわゆる内申点)も取りやすい。一般入試で合格する学力がない生徒にとって、指定校推薦の制度は、ある意味では、「抜け穴」的な側面があったと言わざるを得なかったでしょう。

 ②に所属するある生徒Aは、①でも成績上位の生徒が合格した私立大学の法学部に、その制度を用いて合格します。しかし、Aは大学での授業のレベルについていけず、複数年の留年を経験。なんとか卒業できましたが、後になって話を聞くと、非常に辛い思いをしたと語っていたのが印象的でした。

 ではなぜこんなことが起こるのか。それはやはり有名な大学・偏差値の高い大学に入学することが、社会の中で有利に働く現実があったから。自分が何を学び、そしてその学びをどう繋げるか(=学歴)ではなく、履歴書的側面(=学校歴)を求めていた結果、この歪な現象が起こっていたのだと感じています。

 高校生の時の私は、一般入試以外で学校歴を求める姿勢に非常に批判的でした。一生懸命勉強して学校歴を得ようとしている自分たちが、何かこう損をしている、そんな気持ちだったのを覚えています。私もまた学校歴を追い求める社会システムの中に取り込まれ、視野が狭くなっていたのだと思います。

 時代は流れました。学校歴は現在でも社会の中で一定の力を発揮します。しかし、その影響は徐々に薄まってきている。社会がより成熟していく中で、本当に大事なのは、学歴であると気付き始めている。受験方法の日陰的な存在だった指定校推薦やAO入試がより一般的になっていることも、その1つの証明でしょう。
 
 多様な入試形態による、多様な人材の確保。

 これが21世紀の日本の大学が求めてる指針であるのでしょう。

 『AO 指定校推薦はダメ 学歴ロンダリング」武田塾創業者が多様な大学受験を批判→賛否「そう思う」「様々な入り口が」』と言う記事を見つけました。

 武田塾創業者のる林尚弘氏は、自身のXで

「若者代表の意味、、、、 信じれるのは 一般受験のみ 素晴らしい制度は なんの差別もない 平等な 学力点数勝負 異論は認めたいけど 認められない、、、」

と述べ、指定校推薦やAO入試の存在を否定しています。

 まず学力点数勝負オンリーは本質的な意味において平等ではありません。たった1つの価値基準によって、学力を測ること自体が不平等です。そして、それぞれのシステムがその中で合理化されていれば、より多様な価値基準がある方が平等です。

 大学が学生に求める指標が変わっていることに気付いていません。前述したように純粋な学力だけが、大学という教育機関で学ぶために必要なことではありません。定量的なものだけを捉え、定性的な力を無視することは、優秀な人材を育てる上で大きな障害になります。

 塾も変化しなければならない。塾は今までは学校歴という資格を得るために存在していました。そこでは本質的な「学び」の価値が蔑ろにされる傾向にあり、結果、多くの学生を学校歴至上主義の鳥籠の中に閉じ込めます。

 時代は進んでいます。もちろん過渡期の中で、揺れはある。しかし、確実に、そして急速にアップデートされている。

 そんな時代に生きている私は、とても幸せだなと思います。


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