#421 共通テスト(英語)に対する個人的な考察
先日、大学入試共通テストが行われました。特に英語は非常に難化しているとネットの声。大学入試問題には、形式の流行り廃りがありますが、こと英語に関してはセンター試験から共通テストに移行する中で、形式が大きく変わりました。発問・アクセント問題と文法問題(イディオム・語順整序)が消えて、それこそ◯ーイックに近づいているように思います。
テスト作成は教員の大きな仕事のひとつ。私も定期考査や校内模試、高校入試の問題作成に携わりました。英語に関して言うならば、実力考査(定期考査ではない)の問題の難易度をあげるのはとても簡単です。①分量を増やす、②文構造・語彙が難しい英文を出題する、③抽象度が高い(内容が難しい)英文を出題する、以上の3つをやれば誰でも難しいテストを作ることができます。極論を言えば、設問形式に工夫は入りません。文構造が難しい英文を和訳させ、抽象度の高い部分を説明させるだけで良いのです。あとは難解な語彙と分量で、受験する児童・生徒は苦しんでくれるでしょう。
しかし、難易度は高くすれば良いという単純なものではありません。彼らの現状の英語力を大学入試共通テストという公試験で測ることは、彼ら、強いては学校教育の目指すべき「英語力」の姿であり、またそのテストを通じて児童・生徒の高校終了時(もちろん浪人生もいるけれども)の英語力を結果を測るフィードバックとして機能するからです。
テスト問題とは、その試験を受ける児童・生徒へのメッセージです。毎年約50万人が受けるテストのメッセージを間違えば、日本全国の英語教育は、不適切な方向にいってしまうのです。
そんなことを思いつつ、私も共通テストを解いてみました。感想はネットの記事にあるものとおおよそ一緒。語彙が難解で、そして英文量が非常に多い。これを80分、しかも極度の緊張、さらには1日目試験最終科目で解かなければならない(リスニングなんかもう眠たい)と思うと、もう地獄です。平均点の予想は約50点だそうですが、得点分布と中央値を見てみないことにはその実態もよくわかりません。(正直いって平均点は、テストの本質的な難易度を測る上であまり意味がありません)
個人的に思うことがある。それは、内容自体はそんなに難しくない。語彙は確かに難しい。しかし、難解な語彙が分からなくとも、問題を解くのに致命傷になる部分はほとんどない。つまり、量。ということは情報処理のスピード力が求められるということ。できるだけ早い時間で、大量の情報を瞬時に分ける力。もちろん基礎的な英語力(文法力・語彙力・読解力)はいる。しかし、もし制限時間を倍にしたら平均点は何点上がるだろうか。例えば、世界史は時間を倍にしてもさほど平均点は上がらない。なぜならそもそも問題数が多くないし、選択問題の世界史は時間をかければ解けるものではないから。
で、最初に述べたところに戻ってくる。英語の問題を難しくする最も簡単な方法は制限時間に対する問題量を増やすことで、テストはメッセージであるところ。単に難易度をあげるために物量を増やしているならば、これほど安易な方法はないし、情報処理力を求めるメッセージであるならば私は個人的には納得しかねる。なぜならば、情報処理のスピード力を求めるために英語を使う必要はないと感じるから。
もちろん様々な意見がある中の、あくまで私個人的な主張ではあります。しかし記事の中にも2020年の最後のセンター試験の出題語数(約2800)に対し今年の共通テストは約4900語で1.8倍増得ており、時間内に効率よく解く力が求められているとあります。「時間内に効率よく解く」ことが本当の英語力を鍛えることに繋がるのかは個人的には非常に懐疑的なのです。