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歓びを得なば当に楽しみを作すべく…

 人の命は儚いものだからこの世ではみんな仲良く快楽を追求しましょう。漢詩を読むと、昔からこういうテーマの詩が歌われてきていて、都と田舎の格差だったり階級社会だったり世の中の仕組みによって人々が苦労していたのだろうと分かる。
 今もこのような問題は形を変えて残っている。花束みたいな恋をしたという映画を見て思った。U-NEXTで配信されていた。

 麦と絹は気が合いすぎる二人だった。学生時代に出会って仲が深まっていくが、卒業後も就職活動は続く。絹はフリーター、麦はイラストレーターになり幸福な同棲生活を送るが、麦は夢で食べていく現実の厳しさから諦めて就職活動をすることに。絹は簿記の資格を取得して病院の事務職へ就職が決まるが麦はなかなか決まらず。ようやく決まった就職先で営業として働くうちに出会った当初のように絹と趣味を共有する余裕がなくなりすれ違いが増えていく。一方絹は合わない病院事務の仕事を辞めて賃金は下がるが趣味を活かせるイベント会社へ転職する。二人はお互いに別れを決意するが…。

 同じ世界にいた二人が別々の世界に進んでいく。快楽主義の絹とハードルを下げて現実主義になった麦。「生きるってことは責任だよ」なんて言うくらい。そりゃあ、イラストの仕事の厳しさを浴びたらそうなるか。
 お互いに別れを決意して、楽しかったねってファミレスで話している中で、4年間を振り返ると麦が恋愛感情が無くても結婚して続けることができるし家族になれると絹を説得するが、結婚だったら…家族だったら…でも出会ったばかりの絹と麦を再現したような初々しいカップルを見て、二人は泣いてハグして別れた。
 「我々のこれまでの道のりは美しかった。あと一歩だった」っていうのはふたりの関係性だったのか。

 麦も望んで現実主義になったわけじゃなくて、イラストの仕事の得意先とうまくやれていたら…、または就職先の営業の仕事が募集要項通り5時終わりで帰れる職場だったら…、というように世の中が少しでも違ったら出逢った頃のままの愛情量をずっと維持できたかもしれない。

 いい映画でした。趣味が合う人との会話は楽しそう。わたしはこれからどう生きようかと考えるきっかけになった。

 絵の具は色を混ぜすぎると汚い。汚いしもとに戻らない。不可逆的なのは、人生と同じ。
 人の命は儚いからこそ人生は楽しまなければならない。
 やりたいことだけをして生きていたい。絹みたいに生きたい。でも麦みたいに生きるしか無い。あと一歩がんばる。

 ところでこの映画の有村架純が可愛すぎた。彼女と付き合いたい。彼女のようになりたい。完璧に演じられていた。有村架純と菅田将暉の演技すごい。さすがすぎた。

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