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ASKAシンフォニックコンサート名古屋公演配信の視聴レビュー

※楽曲のネタバレはありません。


ASKA『GET THE CLASSICS Premium Symphonic Concert 2022』レビュー

「新しい自分の音楽、自分の世界、ライフワーク」

ASKAが『Premium Symphonic Concert 2022』の名古屋公演で語った言葉だ。

ASKAが2004年に初めてシンフォニックコンサートを経験し、2007年でCHAGE and ASKAの活動に一区切りを付けて以降、シンフォニックコンサートは、ASKAのライフワークとなっている。

もちろん、CHAGE and ASKA時代からのバンドライブも継続しているから、程よいバランスで両立できている。

デビュー時代、演歌フォークと呼ばれるスタイルで世に出たASKAの姿からは、現在の日本を代表する数々のオーケストラをバックに歌う姿は想像できない。

アーティストは、誰しも時代や年齢と共に大きく変わり続けていく。
この歳になれば、新曲や新しい試みへの意欲が薄れていくアーティストも多い中、ASKAは、この歳になっても尚、精力的に新曲を制作し、新たな試みで聴衆を魅了し続けてくれる。

そのありがたみが、私も40代後半になって実感している。

ソロ活動に邁進し、楽曲「リハーサル」で歌った「やりたいことをやる やりたいように」が実現している今にASKAの充実度がうかがえる。

ときには、ASKAのSNSへの書き込みが物議を醸すこともあるが、新たな音楽活動の糧になっていると考えれば、気にならない。

少し前、エイベックスの松浦勝人会長が浜崎あゆみとの対談で語った言葉は、アーティストがどうあるべきか、を深く考えさせられる。

「すごく売れてる先輩のアーティストの人たちって、最終的にファンが何を求めているかっていうことの行動になるんですよ。
 だから、さっき(浜崎あゆみが)自分がやりたいことをやるって言ってたけど、それもいいんだけど、それが全くずれてると(ファンが)ついてこないわけよ。
 そこは、多少コントロールするというか考えてやった方がいいと思いますよ」

『【浜崎あゆみ】久しぶりにあゆと二人で昔の話をしてみた』(YouTube 松浦勝人公式チャンネル)


ASKAがSNSで発信する、政治やコロナに関する書き込みを見て、ファンをやめる者がたまにいたりする。

CHAGE and ASKAの脱退騒動でファンをやめてしまった者もいる。

しかし、その一方で、ASKAの精力的な新曲発表や上質なバンドライブ、そして、新たな試みに満ちたシンフォニックコンサート、バンド&シンフォニック融合コンサートは、新規のファンをも増やしている。

そんなASKAの想いは、昨年のインタビュー記事でも垣間見える。

「僕はあくまでも自分の音楽を追求してるんであって、押し付けになるような要求は受け入れない」

『BARKS ASKAインタビュー 2021.10.14』

ASKAは、世間の声に対してしっかりとアンテナを張りながらも、自らが目指す音楽への追求は揺るがない。
ASKAの音楽は、年々姿かたちを変えながら、表現の幅を広げている。

前置きが長くなってしまったが、今回の名古屋公演配信を視聴して、そんな想いを強くした。

名古屋公演の柳澤寿男指揮による京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団は、これまでのシンフォニックコンサートとはまた違った色を出していた。

全国各地の交響楽団と共演する各コンサートを観ていると、それぞれのコンサートでその交響楽団独自の色が出る。

京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団は、クラシックにしては極限まで音を削ったかのような熟成の雰囲気をまとっていた。

聴衆を過度に鼓舞するわけではなく、ゆったりとした落ち着く音色を奏で、自律神経が整えられてリラックスできるような優しい音楽だった。

セットリストも、情感と情景が浮かぶような楽曲が多く、今を生きる人々、未来を生きる人々へのメッセージが響いてきた。
極めてASKAの切ない歌声が生きるような演奏になっていたように感じる。

そして、今回、ASKAソロとしては初、チャゲアスでなら2004年の『熱風コンサート』以来となるメドレーが加わっていた。

曲目は、大ヒット曲を5曲連続で揃えるという、まさに名刺代わりの最強メドレーだった。

このメドレー以外のセットリストには大ヒット曲が入っていなかっただけに、その対比は際立っていた。

ヒット曲を聴きたいから、会場に足を運んでくれるファンもいる。そんなファンのこともしっかりと考慮したセットリストにしたのだろう。

少年少女合唱団の出演も、ASKAのシンフォニックコンサートの定番となりつつある。

やりたいことと求められることのバランスをとりながら、どんどん変わり続けていくASKA。

次のコンサートでは、どんな新たな試みを見せてくれるのか、楽しみで仕方ない。

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