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アコースティックサウンドは街をかき鳴らせるのか?

2021年10月23日、この日は多分忘れることのない一日になったのだろう。名古屋の大須商店街でカフェを営む4店舗が合同でアコースティックサーキットイベントを開催したのだ。
大須商店街といえば一昔前は古着店と電気部品街だった。それに加えていわゆるアナログ、デジタルのオタクが集う街のイメージが強いのではないだろうか?メイドカフェの聖地、オタクファッションの発信地、名古屋におけるコスプレ、オタク文化といえば大須というイメージが強いはずだ。また文化の発信地といえば聞こえはいいが、アンダーグラウンド的な文化も育ってたりする。

アコースティックギターを掻き鳴らす(とあえて書かせてもらう)インディースアーティストは名古屋での活動といえば今池だし栄だし金山だ。大須商店街はどちらかといえば観光客のためのお買い物の街のイメージが強い。現にこの日だけではなく平日、休日を問わず多くの観光客が訪れていて、町中は人だかりができたり、人気のカフェや飲食店には行列ができたりする。お世辞にも大須商店街は音楽とは少し遠い街でもある。

CLAP! CLAP!というイベントをはじめて知ったのは2021年の夏のこと。折しも新型コロナウィルスが猛威をふるい、各地のお祭りイベントが軒並み中止になる中で、インディースアーティストが集って大須で音楽祭をやりたいというツイートを読んだのが始まりだった。そのツイートがこちら↓

主催の一人である”われ君に咲き誇る”の山本くんとはコロナ以前から交流があり、妻の追いかけるアーティストと対バンで演奏していったりするアーティストであった。他にも名古屋市内のイベントで偶然出演者だったりと何かと縁のあるアーティストで、熱すぎるメッセージが心地いいアーティストだ。
このイベントはそんな彼のツイートで知ったのだ。しかし先にも述べたが、時期が時期だけに開催は危ぶまれ、予定していたクラウドファンディングも募集期間の半分ほどがWebサイトの不備により申し込みができなかったりと、開催までに相当の苦労があったし、それを間近で感じていた、ほんとに開催できるのか?が実は常に頭を過ぎっていたのだ。

実は名古屋情報通というサイトでこのイベントの告知記事を執筆、公開したのだが、公開までに自分自身に相当の葛藤があったことを告白しておく。原因はコロナ禍のなか強行した常滑のライブイベントで、相当の批判にさらされながら全国ニュースにもなってしまったことは記憶に新しいと思う。さらに追い打ちを掛けるようにコロナの感染爆発が始まり、正直お蔵入り一歩手前まで考えたほど公開時期を見合わせていた。書き手のわがままかも知れないが批判上等で書き切るほど無責任ではない。感染症の怖さみたいなのと勝手に戦わせてもらっていた。
時期的に発信に踏み切ったのはクラファンが始まった9月1日から2週間ほどが過ぎた辺り。常滑の話題がニュースから消えたタイミングを見計らって公開に踏み切った。理由は後で述べる。

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大須という街にはきっと音楽になる題材が溢れている街だと私は思う。人の歩く音、雑踏の話し声、カフェの音楽やゲーム店の電子音、パチンコ屋のそれだって言い換えてみたら音楽そのものだ。そして雑踏という言い方が大須の様子を表すのに最適解で、これほど名古屋の文化を集約した街はないと思っている。
CLAP! CLAP!の告知記事公開に踏み切ったのは栄で主催者二人のインタビューを取り終えてから大須の街を歩き回り、会場を探してマッピングして、その帰り際にTOLANDという今回会場の一つになったカフェで公開用の記事を書いていたことを思い出したからだ。雑踏という言葉こそ大須の様子を表す言葉で、アコースティックサウンドこそこの街で足りない唯一の音なんじゃないだろうか?と改めて公開前の記事を読み直し、撮りためた大須商店街の写真を整理しながら考えたのだ。
また、TOLANDの窓の外に映る景色がどこか大須商店街を外から見るような情景であったこと、そこから見る大須商店街にこそCLAP! CLAP!というイベントは必要で、決して不要不急の範疇ではないこと、何より自分自身がそれを求めて止まないのだと気付かされたため、公開に踏み切ったのだ。

記事封切り後には心無いコメントも入れられていた。Twitterにはわざわざ引用RTではっきりと辞めろとも書かれていたし、運営側にも多少そのようなコメントが入れられたのだと思う。しかし批判よりも前を向くこと、上を向いて欲しいし、勘でしかないが、公開してこのイベントを開催しても問題ないだろうと。
なにより閉塞感のあった名古屋にイベント=お祭りを届けたかったことが勝っていたのだ。

さて、表題に戻ろう。アコースティックサウンドは街をかき鳴らせるか?これは間違いなくかき鳴らせる。大須の街でみたイベント会場は熱量のそれこそ以前とは異質だが、間違いなくお祭りがあった、音にあふれていた、人の笑顔がそこにあったのだから、このイベントは成功だったと断言できるし、音は街を豊かにするひとつのツールなのだと再認識したのだ。

次回、来年になるだろうが、もっと発展できることを願って止まない。アコースティックサウンドが大須をかき鳴らした一日は確かにあったのだ、だから来年もあなたのCLAP!が帰ってくる場所が大須にはあるのだと知ってほしい。

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