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「運動の正解」 なぜ腕立て伏せが重要なのか

運動には正解があります。正解を知らずに、頑張っても無駄です。運動の正解を知るために、まずは「運動のジレンマ」について考えてみましょう。

運動のジレンマとは

運動にはジレンマがあります。そこまで難しいことではありません。頭部を固定し「しっかり見る」ということと、胴体をよく動かして「パワーやスピードを発揮する」ということの両立が難しいということです。

運動のジレンマを簡単に言うと、パワーとスピードを求めると視界がブレてしまい肉体のコントロールが疎かになる。反対に、コントロールを求めるとパワーとスピードの発揮が疎かになってしまうことです。皆さんも自らの運動経験に置き換えてイメージしてみてください。慎重にコントロールしようとすると体が硬くなり、反対に調子に乗って力を入れるとバランスが崩れた経験があるはずです。

しかし世の中には、このジレンマを克服してみせる上級者が存在します。それがアスリートです。つまりアスリートとは「肉体を激しく動かしながらも視界が安定している人」のことです。これがジレンマを克服した状態(=全盛期)です。

彼らはジレンマを克服するために何をしているのでしょうか。当たり前ですが肉体づくりです。しかし肉体を作るだけでは、ボディビルダーやフィットネスインストラクターのほうが一枚上手です。それもそのはず肉体づくりが専門なのですから。一方でアスリートの専門は、視界の安定と肉体の増強の両立です。そのためにいちばん大切なトレーニングは何でしょうか?

アスリートは体幹トレーニングを重視する

アスリートは体幹トレーニングに時間を割いています。なぜなら経験的に、体幹トレーニングがジレンマ克服→成績向上につながると知っているからです。

さてここで疑問です。自分でいっておいて難ですが、視界のブレの軽減はそこまで重要でしょうか?視界がブレたとしても脳には補正機能があります。だからパワーやスピードだけ鍛えておけばいいのではないでしょうか。

実はここに大きな問題があります。確かに脳は視界を補正してくれるのですが、脳の容量は約1500ccもあります。頭は重いのです。つまり、視界を補正するための脳の大きさ自体が、さらなる視界のブレを起こしてしまいます。またスポーツには相手がいて、頭部は相手の揺さぶりに対して脆弱です。

変な話、目玉がお腹に付いていて、脳みそもお腹の中にあれば運動は簡単だったかもしれません。カービィのような体です。この体なら運動音痴なんてものは存在しなかったかもしれません。首や四肢が短いので視野が狭くなりますが。。。

さらに残念ながら人体はもう一つ重い部分があります、お尻です。人体は頭部と臀部の2つに重心が分かれているのです。離れた位置に重い部位が2つある。こんな動物はヒトかキリンくらいです。

ここで興味深い事実があります。キリンのオスはネック・スパーリングで優劣を競いますが、ネック・スパーリングが得意な強いオスは首が太いのです。つまり頭が高い位置にあって重くても、それをつなぐ幹が強いと勝てるのです。

ではヒトの場合キリンの首のように、離れた2つの重心を1つにまとめてバランスを取る部位はどこでしょうか。それが体幹の筋肉なのです。体幹さえ強ければどんなスポーツでも初心者レベルは簡単に超えられるでしょう。

Q&A

Q1. 確かに視界は大切だが、球技以外でも視界の固定は重要なのか。

A1. 例えば陸上競技では、視界からのフィードバックの質が低ければ、次の足をどう出すべきかがほんの少しズレます。これは、目隠しをして走ることが難しいことからも分かります。一歩前の情報をもとに、修正を加え続けることが好成績につながります。過去の視覚情報を活かすためには、まず頭部を固定して「正確」な情報を得なければ、修正も正確にならないのです。


Q2. 重心は低いほうがいい?高いほうがいい?

A2. 難しい質問です。重心コントロールは大切です。ただし、重心が高いと不安定になると勘違いしてはいけません。人間は頭が重いので、頭に重心を近づけると、体幹がブレにくくなります。というよりかは、肩をすぼめて頭を下げると言ったほうが正確です。重心を低くしようと思って、腰を落としてしまうのはいけません。頭部とお尻の距離が長くなり体幹の一体性が減ってしまい、重心が2つに別れてしまいます。頭とお尻は重いので、その2つを1つにつなげる意識でいきましょう。

例えば、女性が自転車に乗るのが不得意な理由は重心が2つに分かれてしまっているからです。女性的な体はお尻が重くてスポーツには不利です。体幹が強ければなんとかごまかせるでしょう。お尻に筋肉がついても重くなりますが、体幹も同時に鍛えていれば問題ありません。お尻と太ももの筋肉は大きな筋肉で、パワーやスピードの発揮のために重要です。

結局、太ももから首までの筋肉量が、パワーとスピード、重心の安定、視界の安定、四肢のコントロールすべてにつながります。最後に食いしばることで、体にフタをして圧力をかけます。ですので歯並びやマウスピースは極めて重要です。

力士は太ることで重心をお尻からお腹に上げています。頭は胴より肉がつきにくく相対的に重心が腹部にまとまってきます。前傾姿勢でも後傾姿勢でもお腹の中に重心が残っていて、そのおかげで四肢のコントロールも効きます。痩せていると少し前傾しただけで重心が体外に出てしまい地面に手をついてしまいます。他のスポーツでも、細マッチョとは違う「動けるデブ」が好成績を残すことがあります。特に野球やゴルフはそうかもしれません。

フィジカルコンタクトのあるスポーツでは、コンタクトのとき上半身を丸めて体幹を球体にするイメージで固めるといいと思います。膝を曲げて腰を落とすと脚が出づらくなり、先にアクションを起こされてしまいます。いわゆる「後の先」ができなくなってしまいます。


Q3. 体幹はどう鍛えればいいのか

A3. 体幹トレーニングで原始的かつ効果的なのは、腕立て伏せです。腕立て伏せは腕のトレーニングではありません。体幹のトレーニングです。腕立て伏せのコツは、カラダ全体で地面を押し返す感覚です。英語ではプッシュアップと言います。ヘタな腕立て伏せは、腰が折れて腕や肩が疲れてしまいます。腹筋などの体幹の筋肉を動員して、腰が折れないようにお腹を固めて体を一枚岩にします。その一枚岩になった体で地面を捉え、押し返すのです。

参考↓


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