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映画の締めはミスターGO!

僕はそれなりに映画が好きだ。「それなりに」というのは、映画好きを断言してしまうと、「年間何本見ているのか?」とか「この名作はもちろん見たんだろうな?」といった、映画ガチ勢から飛んでくるいろんなものを防ぐ枕詞だと思ってもらって構わない。とにかく僕は、それなりに映画が好きな人間だ。

それなりに映画が好きな人間は、映画に対して向き合う姿勢が、それほど整っているといえない。そもそも映画館にはそれほどいかないし、エンドロールなんて見ずに帰るし、何ならたまにトイレにもいく。「よくわからなかったなぁ」みたいな適当な感想のまま、映画を垂れ流すこともしばしばあるこの状況は、LiLiCoに見つかったら羽交い絞めにされそうな、怠惰な鑑賞スタイルだと、自分でも思う。

そうやって雑多に映画を見ていく中で、鬱映画や胸糞映画と言われるタイプの映画は、とりわけ印象に残り、いろいろと考えさせられることが多い。ダンサーインザダークの、救いのない世界でも広がる音楽の楽しさや、冷たい熱帯魚で描かれている、生きることの辛さなど、題材を深く考え意見を持つことができる映画は、僕個人的にハッピーエンドの映画よりもネガティブなエンディングを持つ映画の方が多い。すっきりした気持ちには正直ならないが、何かを考えるきっかけになれるという意味で、僕はいい映画だと思っている。だから僕は、鬱映画や胸糞映画も映画としては嫌いではないジャンルだ。


ただ僕は、それなりに映画が好きな人間。

問題は、しんどくなっちゃうこと。


僕がガチ映画好きだったら、これまで大量に映画を見てきた経験から、鬱映画に対しても涼しい顔で受け止められるのかもしれない。過去の経験から展開を予想し、ダメージを受けずに楽しめるのかもしれない。ただ僕は、しっかり受け止めて、しんどくなってしまうのだ。

鬱映画はジャンルとして嫌いではないのに、見るとそれなりのダメージを受けてしまうのである。というかそういえばだが、風立ちぬを見て2時間映画館のベンチから動けなくなったくらいだから、そもそも心が弱すぎる。


でも鬱映画は見たい。でも見たらしんどくなっちゃう。でも見たい。

僕がこのジレンマの解決策として見つけ出したのが、「映画の締め」だ。


鬱映画やしんどい映画を見た後、今まで見たことのある、何も考えないで楽しく見れる映画を、締めに見ることにしたのだ。メッセージ性が大してなく、ストーリーも王道で、何ならそこまで面白すぎない、ぼーっと見れる映画を締めの映画として一本見ることで、調整することにしたのだ。死ぬほど飲んだ後の塩ラーメンのような、ホッとする時間を映画にも作ろうと考えたのである。

そんな映画の締めで、僕が常連のように通っている作品が、タイトル「ミスターGO!」である。ミスターGO!は2013年に公開された日中韓合作の映画だ。ちなみに日本からはオダギリジョーが出演していて、今でもアマゾンプライムで見ることができる。なぜこの映画を締めにするのかというと、この映画。


ただただ、ゴリラがホームランを打つ映画なのだ。


これ以上でも以下でもない。ただただフルCGのゴリラが、気持ちよくホームランを打つ。それだけの映画なのである。一応オダギリジョーも出てくるが、別にどうでもいい。ただゴリラがホームランを打つのだ。

一応ストーリーは、雑技団で野球の芸をしていたゴリラが、借金返済のために野球選手になるといったもので、ヒロインの少女とゴリラが悪戦苦闘したりはしている。してはいるのだが、とにかくゴリラがホームランを打つ姿にしか目がいかない映画なのである。

ただただフルCGのゴリラが野球場に立って、片手で気持ちよくホームランを打ちまくる。それだけでなんかすっきりするのだ。見終わったころには、さっき見たちょっとしんどい映画のことも、「同じ映画とは思えないな」と鼻で笑えるほどにスカッとしている、僕にとっては最高の締め映画なのだ。


映画好きの人からすると、映画を見た後に続けざまにほかの映画を見て、前の映画を打ち消すような鑑賞の仕方をすること自体が、かなりナンセンスと思われるのかもしれない。ただ僕は、それなりの映画好きとして、こういった邪道な映画の楽しみ方を、これからも続けたいと思っている。

「思ったより鬱だったなぁ…」と、ぼったくりバーに入ってしまった時のように落ち込む僕は、これからも締めの塩ラーメンを食べに、ミスターGO!を見ながらひとりほくそ笑むことになることでしょう。


#映画にまつわる思い出


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