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随筆(2020/7/6):単純な物の見方しか出来ない人と、キレイゴトしか認めない人の、近さ(結)認知バイアスが困る場合と、認知バイアスをなくす努力が見合わない場合

5.認知バイアスは、問題解決の際には困るが、そうでないときにまで悪者にしてよいものではない

5_1.まだ現実に問題がないときにまで、認知バイアスを悪者にしてはならない

認知バイアスは、現実に問題がある場合は、しばしば有害です。
ここは当たり前です。現実が見えなくなるし、特に問題も見えなくなるなら、そりゃあ邪魔だろう。

でも、現実は問題に満ち溢れている訳ではない。
んで、しばしば、まだ現実に問題がない時まで、神経質に問題を予測して目を尖らせている人がいる。

それは確かに、リスク管理という意味では、とても正しいと思うんですよ。

が、緊急時に備えるために、資源を消耗して平常時のシステムが回らなくなり、破綻したら、話にならんやんけ。
そこまでして過度のリスク管理を行ってはいられない。
なので、リスク管理に資源のコストや労力のコストを全振りする訳にはいかないわけです。ここはどうしても兼ね合いになる。

つまり? 認知バイアス対策も、現実に問題が起きないなら、メリメリ消耗してまでやることでもない。ということです。
大事なのは、いざという時に、高いパフォーマンスを出せるかどうかであって。
それまでに疲れ果てて、高いパフォーマンスが出ないようになっていた、というの、リスク管理としては、まあかなりの失敗事例でしょう。
そういうことになってはいけない。

5_2.頑張って問題をなくしていった環境においてまで、認知バイアスを悪者にしてはならない

また、社会の諸制度は、しばしばそういう現実の問題に対して、人々がいかに努力をするか、そして解決するか、という仕組みの話でもある。
つまり、社会とは、ある程度は、「人々が頑張って問題をなくしていった環境」だったりする。
じゃあ、そういう中で、リスク管理を無理にするの、資源のコストや労力のコストの、かなり明瞭な無駄だ。

5_3.社会には脆弱性があり、一か所を潰すと別の所が開くので、何らかの妥協や折衷案は避けられない

もちろん、社会があらゆる問題に対応出来る訳ではないし、脆弱性はあちこちにある。
その穴を埋めるために、他の大事なところにダメージがあるなら、それは埋められないし、代わりとなる別の手を打つしかない。そういうものだ。

たとえば、感染症対策がそうだ。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)で、感染症対策上の様々な穴とその埋め方が明らかになった。
で、様々な穴の埋め方をガチで実行したら、私生活や経済には大打撃があることも明らかになった。

(穴のイメージ)

そんなこんなで、政府や地方自治体は、どうしても、折衷的な兼ね合いに満ち満ちた、妥協点、落としどころとしか言えないような政策を、やらざるを得ない。
政府や地方自治体に限らず、あちらを立てればこちらが立たず。ということは、問題解決を真面目にやっていると、しょっちゅう直面するだろう。

(立った! モグラが立った!)

(立ってねえよ。立つのはプレーリードッグだよ)

5_4.全員を満足させることは出来ないし、クレームのリスクは、常に、ありうる

当然、折衷的だということは、「あれだけをしろ、こんなことは自分にはどうでもいいからするな」という人たちの不満を生むということだ。
これは、兼ね合いを余儀なくされている環境下では、絶対に解決しない。
また、誰かの「あれだけをしろ、こんなことは自分にはどうでもいいからするな」を達成したら、他の人たちは超不満になる。
まして、そういう人たちに「解像度を上げたら、他の人たちの苦悩が見えてくる。解像度を上げて下さい」という話をどこまで出来るか。
つまり、政治において、万人の納得する解決ということは、まず不可能な話だ。

そういうことを本当にやるなら、本当に必要最低限の薄い粥のような福祉か、何かが出来る権利の拡張の話になるだろう。
しかも、これらが両方とも憎まれているのは、皆さんよくご存じでしょう。

「補償として考えた時に、苦しんでいるかどうか不明瞭なあいつらがもらえている量と、今正に苦しんでいる自分の量が同じなのは、おかしい。
しかもそれで予算が枯渇しそうだって? バカでは? あいつらになんかやるな。
他の苦しんでいるかどうか不明瞭なあいつらではなく、今正に苦しんでいる自分がまず潤沢に補償されてあるべきだ」

「あいつら、自分が得をしたら、他の皆への皺寄せに目も向けず、「自己責任でしょ」と言い抜けて、自分だけ逃げ切りやがった。盗人猛々しい」

世の中こんな話ばかりだ。
もちろんこんな状況下では、万人の納得する解決ということは、まず不可能だ。
その手の文句を言う人たちのクレームは常にありうる。そこは、公僕は、最初から覚悟して仕事をしなければならない。

誰かに皺寄せが来ているときに、補償をする。
では、補償をするために、誰かには皺寄せをしてもらわなければならない。
ふつうは、万人から税を集めてセーフティネットとする、ということになりがちだ。

で、万人が納得しなかったら? これはとてつもなく困ったことになる。
税と社会保障のケツモチをやっている政府や地方自治体による、納得の行くような説得が足りていない、というのはもちろんそうだ。そこは不徳の致すところです。
そこは、もちろん、埋めなきゃならない。本当にどうすればいいんだろうな…

5_5.認知バイアスは、問題解決の際には困るが、そうでないときにまで悪者にしてよいものではない

そんな訳で、大事なのは、
「そういった難しい問題を解決するためには、認知バイアスは邪魔になる」
ということです。

同様に、
「そういった難しい問題を解決する、という事情がないのに、万人に認知バイアスを解くほどの解像度の向上を、しかも資源のコストや労力のコストを無理に払わせてまで、強いるな」
ということは、これは非常に真剣に受け止めなければならないところです。

やっていきましょう。(終わり)

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