『高校数学のロードマップ』A_4(関数編)1『微分』

(2019/11/27差し替え)

(※注:「理系に進学したいが数学が苦手な知人の高校生に、数学の良さを教える」というミッションのための草稿を、あらかじめWebに掲載して、ダメなところを指摘してもらおう、という趣旨の記事です)

(2022/5/26追記)
このA_4の記事はことさら使用に堪えません。今ではベクトルと微分の順序がおかしいと思います。論点先取をやっている疑いが極めて強い。とはいえもう納品してしまったので(そしてこの高校生は今は国立大学に見事合格してしまったので)今更しょうがないんですよね…困ったな。

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〇微分

●関数のグラフから積分までのロードマップと重要な中間生成物

・いずれ数学でも物理学でも非常に便利な道具となる関数から、先に説明しておきますといかなる図形からも面積や体積を導き出そうという積分までの、ロードマップが存在します。
だいたい

関数のグラフ→傾き→微分→ベクトル→ベクトル空間→(ノルム→ユークリッドノルム→)ユークリッド距離→三角関数→角度→(曲率→)ユークリッド空間→((「馴染み深い図形」としての)多様体→)積分

というロードマップだと思ってください。
(それぞれのキーワードが何を意味しているかは、後で説明します。
ただ、実は、括弧の中の部分は大学でやることです。
「うわっ! 大学に行くまでやらなくていいはずのキーワードの説明がまた、今度はいくつも来た!」と誰しもまずは思うところですが、そういう反応は予想されることなので、ユークリッド幾何学の章と参考編の中で、本当に超高速モードの説明をします。

●分かりづらい関数の分かりやすい性質を調べる

・関数のグラフは、上がったり下がったり、なだらかになったり急になったりして、捉えがたいところがあります。せめて、どこでどれだけ上がるか、どこでなだらかになるか、どこから下がるか、くらいのことは分かりたい、というニーズがあります。
(こういう観点から、「ボールを上空に投げたらどう落ちるか」ということについて考えてみても面白いでしょう。ボールがどこでどれだけ上がるか、どこでなだらかになるか、どこから下がるか、そんなことを思いながら観察してみるとよいでしょう。
結論から言うと、ボールを上に投げて地面に落ちるまでは、とあるシンプルな中学校数学レベルの関数のグラフと全く同じ軌道を描きます。高校物理では正にそういう関数を教えられるはずです。
実は、これはかなり衝撃的な話です。本当に自然法則が中学校数学レベルの関数で書ける! デタラメな話ではなかった!

●曲線のどこかの点に果てしなく近づくと曲線が果てしなく直線に近づく場合がある

・さっきの、関数のグラフとしての曲線が、座標軸に照らし合わせて、どこでどれだけ上がるか、どこでなだらかになるか、どこから下がるか、ということを捉える方法があります。
直線においては、xを1増加させるとyがいくつ増減するか、という傾きが定義出来ます。この教材のやり方だと、傾きより距離の方が後のキーワードになります。また、直感には反しますが、実際に傾きから距離を作ることも出来ます。とはいえ、今は面倒なので説明しません。後でユークリッド空間と多様体の章を読んで下さい。)
 関数のグラフの調べたい点で、関数のグラフの点を通る直線を用意し、その傾きを計算すれば、その傾きが、「関数のグラフがどこでどれだけ上がるか、どこでなだらかになるか、どこから下がるか」を厳密に表す、という寸法です。

・と、簡単に言いますが、その点を通る直線は無限にあるわけです。
どの直線が、その点でのグラフの傾きと、同じ傾きを持つ直線である、と言ってよいのか、という大きな問題があります。
(グラフが直線だった場合、その直線の傾きをそのまま使えばいいので、話は非常に簡単なのですが、曲線だった場合はどうしてもこの問題からは逃れられなくなります。)
・そこで、解析学では、「曲線のどこかの点に果てしなく近づくと曲線が果てしなく直線に近づく場合がある」という考え方をします。
極限や実数でも書いた、解析学での言い回し、「どこかに果てしなく近づくと、何かが別の何かに果てしなく近づく場合がある」というやつです。
要するに、「その点における、曲線に果てしなく似た、ただ一つの直線」の傾きこそが、ここで要求されている傾きです。実は、こういう直線や傾きを求める厳密なやり方があります。授業で出てきたら是非覚えておきましょう。

・この傾きを果てしなく細かく並べると、運がいい場合は直線になります。この直線はもちろんある1つの変わらない傾きを持ち、この傾きのことを、微分係数(びぶんけいすう)と呼びます。
運が悪いと別の曲線になりますが、この曲線に同じ操作を有限回やると、運がちょっと良い場合は最終的に直線になります。この、運が悪かった時の別の曲線は、前の曲線と比べると、曲がる部分がより少なくなっている、という特徴があります。この中間生成物の曲線や、最終生成物の直線のことを、まとめて導関数(どうかんすう)と呼びます。
(「どこでどれだけ上がるか、どこでなだらかになるか、どこから下がるか、という目的のためには、その時その時の傾き、つまり微分係数だけ分かればいいじゃないか」と言いたくなると思います。
が、実は、導関数には、逆転の発想的な便利な使い道があります。これについては後で積分の章で説明します。)
どれだけやっても直線にならないような、本当に運が悪い場合も稀にありますが、そういうのは高校数学の、少なくとも微分の授業では、まず出て来ないと思います。
(この手の関数の一種が実は、三角関数などの別のジャンルの授業で、おそらくは出て来るはずです。面倒くさいですね。ですが、その話はまた後でします。)
中学校数学レベルの関数から、微分係数や導関数を求める操作の方法が、厳密に定められています。この操作を微分(びぶん)といいます。

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