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ギルド

診察日。あまり調子が良くなかった旨を話す。久しぶりに泣いてしまったこと、昔の記憶が出てきて不安感があること、気力がでないことなど。そうでしたか、といつものように先生が言う。面倒くさそうにしない(見せない)ところと、きちんとした距離で話してくれるところが彼の良さで、そういうところが信頼できると思っている。

行くときは早く帰りたいと思いながら運転して、終わったら終わったで帰ってしまったら終わりだ、と車の中で途方に暮れた。行くところがなかった。
どうしようか、と思いながらドラッグストアで処方箋を待つ。

待つ間、化粧品コーナーを彷徨っていると、鏡に映る顔があまりにもひどくて驚く。体調が悪いと、はっきりと見た目に出る。化粧ができないし、髪もとかないし、そのへんにあるくたびれた部屋着しか着れない。今日は顔を洗えていただけましなほう。

目元のクマ、くすみカバーに!というのが目に入って、テスターを塗ってみる。塗った方の右目と、塗ってない左目が全然違う。右だけちょっと元気そう。見えるだけで元気ではないのだが、黄土色がナチュラルベージュに進化した分のほんの少しだけ、気持ちもあかるくなった気がした。

いきおいで眉毛もかく(たくさん使ってすみません)。たまたま手に取った三角形の繰り出しタイプが思いの外かきやすい。え、両方買う。と思ったが家にまだあるので堪える。この数日、つもり貯金が功を奏していて、衝動買いを防ぐのに役立っている。これも一旦、買ったつもりにしておく。

薬をもらい、もうどうしようもないので帰る。油断して昔を思い出しそうになる。運転中は思考がまわりやすいので危険。首を降ってふりはらう。この嫌な記憶を嫌な気持ちを全部noteに書いてしまおうかと思いつくが、迷う。

書くという行為は、思っていることを頭の中から出してすっきりさせることができると共に、書いたことをよりつよく印象づけてしまうところの二面性があると思っている。だから迷う。掘り下げることによって繰り返し嫌なことを思い出すことにならないか。さらに強く記憶を定着させてしまわないか。

今日は書かないでおこう、となんとなく決着がついたところで信号が赤になった。前のトラックに何か絵がある。レンちゃん。ゆるきゃらだ。その会社のイメージキャラクターということらしい。そのイメージでいいのかというくらいゆるっゆるで力が抜けてしまう。なんにも考えてなさそうな(失礼)ぽわんと笑った顔を見ていたら、なんだかどうでも良くなってきた。いい意味で。

音楽をかける。間違えてCDを押してしまって、そしたら入りっぱなしになっていた(忘れていた)BUMPのアルバムだった。ギルド。嗚咽がでるくらい泣きながら聴いた時代もあったけど、今は単純にいい歌だな、と思う。(泣きそうにはなる)感じすぎないように抑えることを覚えただけか?でもそれもひっくるめていい歌だと思えるようになったくらいには強くなったと思いたい。

それにしてもぴったりすぎるなと笑い、口ずさみながら帰る。外に出るってこういうことだなと感じた。予定調和が崩れる。動くはずのなかったものが動く。勝手に傷ついたり勝手に励まされたり、それはみないとできない、出て行かないと、できない。だからもっと外に行こう!と簡単にはならないのがわたしのひねくれとこじらせだけど、今日のことは覚えていたくて、こうして書いた。書けてよかったと、思う。


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