〈INTERNATIONALロングレビュー〉成底ゆう子「ダイナリズム〜琉球の風〜」【2020.2 144】
■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間レヴュー INTERNATIONAL〉掲載記事。成底ゆう子の2020年3月11日発売「ダイナリズム〜琉球の風〜」をレビューした記事です。
intoxicate 144
デビューから10 年。節目に送る多才な歌声の数々(渡部晋也)
【OKINAWA】
ダイナリズム~琉球の風~
成底ゆう子
[キングレコード KICX-1111]
沖縄は芸能の島々、と呼ばれるほどに伝統音楽や郷土の民謡から歌謡曲、ポップスに至るまで多才な才能を送り出してきた。成底ゆう子もその一人だが、彼女の場合はちょっと辿った道がユニークだ。出身は石垣島。祖父が好きだった三線の音色から父が聴いていたクラシックまで様々な影響を受けて、後に東京の音楽大学に進学。卒業後は歌劇団の研修生となりイタリアでの研修も経験するが挫折して帰国。やがて自ら作詞作曲を始め、シンガーソングライターとしてのインディーズ活動を経て10 年前にメジャーデビューを果たす。
そんな成底にとって今年はデビュー10 周年。節目にリリースとなった4 年振りのアルバムは、これまでの彼女のキャリアを形作った代表作から、最新のナンバーまでを収録したベスト仕立てとなっている。
ここに収録された16曲で聴ける成底の歌声は実にヴァラエティ豊かだ。テレビ番組で採り上げられた《ふるさとからの声》や沖縄方言のタイトルがついている《いちまでぃん》などは曲そのものはポップス仕立てだが沖縄らしい節回しだし、同じく方言タイトルで曲の中に三線の響きが聴ける《生まり島》はポップス調の歌い口。さらにNHK『みんなのうた』に採用された《おばあのお守り》は子ども向けプログラムとして意識したのか可愛らしさを込めたストレートな歌声と引き出しの多さを感じさせる。
一番の話題曲は甲子園の応援歌として知られ、創作エイサーの定番曲でもある《ダイナミック琉球》だろう。そもそもこの曲は現代版組踊の創作をリードした平田大一とS SWのイクマあきらによる楽曲だが、成底は平田による現代版組踊のひとつ『オヤケアカハチ』に関わる事でこの曲に出会い、2011年のアルバムに収録している。甲子園で人気に火がつく7年も前の話だ。壮大なメロディにのせた成底の力強い歌声は、日本中に響き渡る応援歌に成長したわけだ。この10 年を礎にしてさらに進む成底のこれからを気にしていきたい。
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