JAZZ新譜レビュー 前編【2020.4 145】
2020年4月20日発刊のintoxicate 145、お茶の間レビュー掲載のJAZZの新譜7枚をご紹介!
※JAZZ新譜レビュー後編【2020.4 145】はこちら
intoxicate 145
①【JAZZ】【CD/LP】
ウィー・アー・セント・ヒア・バイ・ヒストリー
Shabaka & The Ancesters
[Impulse!/ ユニバーサルミュージック UCCI-1047]
[Impulse! 0864563(LP)]
アフロ~スピリチュアルを消化した圧倒的なサウンドでジャイルス・ピーターソンのレーベル〈Brownswood〉から2016年にデビューを果たしたシャバカ・ハッチングス。名門インパルスに移籍してのリリースとなるこの2作目は、前作同様にアフリカにルーツを持つアーティスト達が参加した、アフリカ文化に関連した作品。人類の絶滅という重いテーマのコンセプチュアルな内容だが、シャバカのテナーのブロウに熱く込み上げるものを感じさせられる。UKジャズの洗練さとスピリチュアルな力強さを兼ね備えたサウンドで、現代UKジャズの最先端を牽引するアルバムだ。(新宿店 栗原隆行)
②【JAZZ】【CD/LP】
You Already Know
Ted Poor(ds)
[Impulse! 0861784(CD)0861642(LP)]〈輸入盤〉
クオン・ヴートリオから、アンドリュー・バードのバンドまで幅広く活躍するドラマーの初リーダー作、ノンサッチ辺りから出そうなキャリアではあるが、リリースはインパルス。アンドリュー・ディアンジェロのアルトをフィーチャーした、ドラムとサックスのミニマルな編制に随所で効果的にピアノやベース、ストリングなどが最小限で配される。とにかく耳を惹くのが研ぎ澄まされた音響、ブレイク・ミルズとの共同プロデュースによるところ、最も効果を発揮するのが抑制されつつ原始的かつメロディアスに叩かれるドラムが作品全体の空気を完全に支配、その緊張感たるや…金縛りにあったように聴き入る。(渋谷店 片切真吾)
③【JAZZ】【CD/LP】
Snow Catches on her Eyelashes
EivingAarset(g)JanBang(electronics)
[Jazzland 3779250(CD)3779252(LP)]〈輸入盤〉
北欧ジャズシーンを代表するエレクトロニクスの使い手ヤン・バンとギタリスト、アイヴィン・オールセット。共にニルス・ペッター・モルヴェルの作品でもお馴染み、最近ではアルヴェ・ヘンリクセンと共にECMからティグラン・ハマシャンとの連名でのリリースでその音に触れた人も多いだろう。互いを知り尽くした二人による初のデュオとなる今作の音作りは対話というより共同作業によって間を響かせ空間を作り上げるという趣。瑞々しい緊張感と瞬発力、アイディアに満ちた素晴らしいドローン・アンビエント作品でもある。90年代にフューチャー・ジャズと称された音楽の到達点の一つであろう。(渋谷店 片切真吾)
④【JAZZ】【CD/LP】
アブサード・イン・ザ・アンスロポシーン
Dan Rosenboom(tp)Jeff Babko(producem key)David Binney(sax)
Tim Lefebre(b)Vinnie Colaiuta(ds)
[BSMF RECORDS BSMF5091(CD)Gearbox GB1557(LP)]
脳波音楽で知られる実験音楽家デヴィッド・ローゼンブームを父に持つトランペッター、ダニエル・ローゼンブームの最新作がギアボックスから。デヴィッド・ビニー、ティム・ルフェーヴルなどダニー・マッキャスリン周辺のプレイヤーからヴィニー・カリウタまで参加の充実ぶり。プロデュースはサイモン・フィリップスやラリー・カールトンなどと関わりの深い鍵盤奏者、ジェフ・バブコ。超重量級なビートによる絶え間ないボディブロウと同時にプログレッシヴでフリーキーなプレイが交錯する攻撃的ジャズ・ロックに脳天を打ちのめされる。確かな技術と実験精神の交配から生まれるサウンドには無敵感が漂う。(渋谷店 片切真吾)
⑤【JAZZ】
ライヴ・アンド・アンリリースド
The Brecker Brothers:Randy Brecker(tp&vo)Michael Brecker (ts)
Mark Gray (key)Barry Finnerty (g)NeilJason (b&vo)Richie Morales (ds)
[Jazzline Records/King International KKJ029] 2CD
傑作ライヴ・アルバムとして名高い『Heavy Metal Be-Bop』からおよそ2年後の1980年7月2日、ハンブルグのOnkel Pos Carnegie Hallでの演奏を収録した未発表ライヴ。ランディ・ブレッカー曰く「頂点に達した」という、脂の乗り切った演奏がパッケージされている。81年リリースのアルバムタイトル曲から始まり、《Inside Out》《Some Skunk Funk》《East River》など選曲も申し分なし。オリジナルは6分程度だった《Funky Sea, Funky Dew》はマイケルのソロも含めて18分40秒と、ライヴならではの聴きどころも充分。(新宿店 栗原隆行)
⑥【JAZZ】【CD/LP】
ゴーゴー・ペンギン
GoGo Penguin
[Blue Note Records/ ユニバーサルミュージック UCCI-1047]
[Blue Note Records 0878918(LP)]
ブルー・ノートから4年ぶり3枚目のフル作が登場するゴーゴーペンギン。現行のUKジャズ評価の嚆矢となったこの若きピアノトリオの存在感は今尚増し続ける。今作はセルフタイトルかつ、白地に白のロゴマークをあしらったきわめてシンプルなアートワーク、これが真の我々だと言わんばかりの意匠。あくまでアコースティックなピアノトリオの出音に拘りながら作曲工程や演奏に最新のテクノロジーを駆使し表現の地平を切り拓こうとする攻め続ける姿勢、彼らのアイデンティティそのものだ。フジロック出演が決まった、この最小編制のトリオが苗場の観衆を興奮の渦に巻き込む情景がありありと浮かぶ。 ( 渋谷店 片切真吾)
⑦【JAZZ】
Schumann Kaleidoskop
Johanna Summer
[Act Music ACT9681]〈輸入盤〉
ヨハンナ・ズマーの〈ACT〉初登場盤、自身二枚目はシューマンのインタープリテーション。クラシックのジャズへの翻訳としては最高にいい!シューマンへの目線もジャズへの着地点も素直でいい! 前作のトリオは、彼女のジャズへのストレートな愛が溢れ過ぎて出来は平均点。このソロ・アルバムは、シューマンをよく聴き、よく弾いた人にしかできないジャズが溢れている。誰もが聴いたことのある子供の情景のあの一曲目がこのアルバムを締めくくるのだけれど、ドイツロマン派の響きがキース・ジャレット風に馴染んでいく。ある意味妥当。ピアノに近づき過ぎた?マイクのドライな響きも独特。生で聴いてみたい。 (高見一樹)
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