INTERNATIONAL新譜レビュー 【2020.8 147】移民の鳥/UNA REALIDAD DIFERENTE/ACOUSTIC/LA FLORほか
2020年8月20日発刊のintoxicate 147、お茶の間レビュー掲載のINTERNATIONALの新譜7枚をご紹介!
intoxicate 147
【AFRICA/FRANCE】
マグレブ・カセット・クラブ: サンテ・ライ、シャウイ、スタイフィ1985-
1997
v.s.
[Beans Records BNSCD-5522]〈輸入盤〉
アルジェリアで生まれ、10歳でフランスに移住したラシッド・タハがカルト・デ・セジュールでデビューするのが1983 年。その前夜マグレブ系の移民が集うリヨンのクラブに出入りしていた彼はその後華々しくロックスターとなっていくが、そのピークは98年頃。タハのスター街道と同時代に彼の第二の故郷リヨンで夜な夜な鳴らされていたマグレブ系の音楽達。それはギラギラとしたシンセとドラムマシンに乗ったこぶしの聴いたハイパーでいなたいポップミュージックで否応なく昂揚する。同時に移民の星であるタハの活躍を見つつ彼らがどんな想いで歌っていたのか想像するとまた一味も二味も違ってくる。(渋谷店 片切真吾)
【ARAB】〈CD/LP〉
移民の鳥
Tootard
[ ライスINR-7195(CD) INR-3524(LP)]
現行の最重要ワールドミュージックレーベル、グリッタービート発、ゴラン高原出身のグループ、前作はティナリウェンとグナワ・デフュージョンをシンセで味付けしたよなナイスなミクスチャー作品でしたが、見事に化けました。まずジャケ…例えばオマール・スレイマン的なアゲでいなたいアラビック歌謡を聞かせてくれる期待がビシビシ。で、1曲目でやられました。チープなシンセに導かれ、ケミカル・ブラザーズがサンプリングしたモロカン歌謡的リフに東京砂漠なメンズ・ウィスパー歌謡。このズンドコのスットコドッコイ路線で全編貫いて完走、正直同じグループとは思えないですが、この化けっぷり最高。(渋谷店 片切真吾)
【CLASSICAL/INDIA】
孔雀
ロビー・ラカトシュ(vn)Dr. L. スブラマニアム(vn)
[Avanti Classic NYCX-10159]
インド・ヴァイオリンとジプシー・ヴァイオリンのコラボ!「インド古典音楽のパガニーニ」とも呼ばれる著名なインド・ヴァイオリン奏者で作曲家のラクシュミナラヤナ・スブラマニアムと、ハンガリーのジプシー・ヴァイオリンの名手ロビー・ラカトシュが唯一無二の音楽を創り出す!ほぼ全編スブラマニアムのオリジナル作品で構成され、そのほかブラームスのハンガリー舞曲第5番が収録。超絶技巧炸裂の2本のヴァイオリンのほかに、ツィンバロム、タブラ、ムリダンガムとそれぞれの民族楽器も加わり、摩訶不思議なエキゾチック・ミクスチャー・ミュージックを生み出した。 (上村友美絵)
【SPAIN】
UNA REALIDAD DIFERENTE
ANTONIO LIZANA
[WARNER 0190295234959]
10歳からサックスを学びはじめたそうだが本職がどっちかわからんくらいに歌える男アントニオ・リサナ。フラメンコ・シンガーとしても、作曲家としての才能もかなりのもんでまさに鬼才。そんな彼の4作目はこれまで通りスムースなものからフュージョン風、アグレッシヴなスパニッシュといったジャズと、フラメンコを高次元で融合させた内容となっておりインストゥルメンタルだったとしても十分に聴きごたえのあるハイクオリティな構築度はさすが。しかしリサナの音世界は彼のハイトーン・ヴォイスが入ってこそ。彼のフラメンコ・ヴォイスが入ることでガラッと景色が変わる。ベッカ・スティーヴンスがゲスト参加したM2が聴きどころ。(梅田NU茶屋町店 小畑雄巨)
【AFRICA】〈CD/LP〉
ACOUSTIC
OUMOU SANGARE
[No Format NOF47(CD)NOF47LP(LP)]〈輸入盤〉
白地に描かれたウムの横顔。シンプルながら印象に残るアートワークなのだが音源の鮮烈さはそれ以上。女声コーラス、ギター、ンゴニ、鍵盤という編成による完全なるアンプラグドでヘッドホンなし多重録音もなし。スタジオ・ライヴ盤は数あれどここまでシンプルなものはそうない。ある種の伝統回帰ではあるが挑戦だと感じるし、エフェクティヴな前作とは対称的にナチュラルなアンビエンスを見事に捉えており、そういうレーベルの特長を活かしきってるとこも何とも素敵だ。よく目の前で演奏しているかのようなんて言うけどまさにそれで、とくにウムの歌声が放たれるや否やトキメキのようなドキリが胸を撃つ。 ( 梅田NU茶屋町店 小畑雄巨)
【CUBA】
LA FLOR
ANA CARLA MAZA
[Persona Editorial AD6189C]〈輸入盤〉
キューバの音楽一家に生まれ現在は拠点をスペインに置くチェリスト兼SSW アナ・カルラ・マサがラテン・アメリカへの架空の旅に誘う2ndアルバム。容姿はキュート、笑顔は天真爛漫、それでいて纏う空気はインテリジェントと見た目からして天才っぽいが、まごうことなき才女。楽曲はキューバやメキシコ、ブラジル等の音楽をクラシックやジャズ、また音楽を学んだパリからの影響といったフィルターを通すことでとても成熟なものに仕上げており、様々な奏法がチェロの表情を無限と想わせるほどに引き出し、伸びやかで柔らかかつ爽やかな甘さのある歌声はそれらを大衆へと届け得るポップなものへと昇華している。 ( 梅田NU茶屋町店 小畑雄巨)
【AFURICA】
FU CHRONICLES
Antibalas
[Octave-Lab/Daptone OTLCD76365]
故フェラ・クティの魂を継承する、NYブルックリンを拠点に活動するバンド。2000年のデビュー・ミニ・アルバムから本作で7作目。デヴィッド・バーンやセイント・ヴィンセントとのコラボや黒田卓也との共演といった経歴も持つ彼ら。ヘヴィー&ファンキーなアフロビートを基調としたブレない音楽性は、N Yのバンドらしい都会的なアレンジや、エキゾチックなメロディから感じる郷愁など、聴き手を飽きさせない多方向への魅力を含有し、まさに現代最高峰のアフロビート・バンドの面目躍如といった内容。メンバーがカンフー道場に通っていたことに由来する東洋的なジャケットの独特なセンスも○。(新宿店 栗原隆行)
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