CLASSICAL新譜レビュー 前編【2020.8 147】レオンスカヤ・プレイズ・シューマン/レシェティツキ: ピアノ曲集/ブルッフ: 交響曲全集/ザ・コンプリート・コロンビア・アナログ・レコーディングズほか
2020年8月20日発刊のintoxicate 147、お茶の間レビュー掲載のCLASSICALの新譜7枚をご紹介!
※CLASSICAL新譜レビュー後編【2020.8 147】はこちら
intoxicate 147
【CLASSICAL】
レオンスカヤ・プレイズ・シューマン
エリーザベト・レオンスカヤ(p)
[EaSonus EAS29407] 2CD 〈輸入盤〉
レオンスカヤが奏でるその演奏からは、聴き手の心情にそっと寄り添うかのように語りかけてくれる。長きに渡って音楽界を担ってきた巨匠が奏でるシューマンの調べ。5月にEaSonusレーベルから、2017年に録音された『シューベルト: 初期ピアノ・ソナタ集』が発売されたばかりだが、早々と同レーベルから新作がリリース。《アベッグ変奏曲Op.1》を始めとする小作品数と2曲の《ピアノ・ソナタ》。小作品では、流れるようなタッチで静寂を感じさせる表現力と共に、一方で力強いタッチで1曲1曲弾き分ける技巧力は聴き手を唸らせる。《ピアノ・ソナタ》での演奏は、終始聴き入ってしまう見事と言える音楽が広がっている。(新宿店 飛田陽海)
【CLASSICAL】
レシェティツキ: ピアノ曲集
トビアス・ビッガー(p)
[BIS BISSA2518] SACD ハイブリッド〈高音質〉〈輸入盤〉
美メロ好きに嬉しい新たなアルバムがBISレーベルより発売。パデレフスキを始め多くのピアニストを弟子に持ったレシェティツキだが、彼自身が作曲した作品のアルバムは非常に少なく、今回のアルバムは大変貴重な1枚と言えよう。演奏しているのはドイツ人のピアニスト、トビアス・ビッガー。1曲、1曲は5分に満たない楽曲ばかりだが、当時のサロン音楽を目的として作曲されており、聴きやすい作品に仕上がっている。今にも踊りたくなるような《2つのピアノ曲Op.38》は、バランスよくテンポよく演奏されている。一方で《2つの小品Op.43》から《ラ・ピッコラ》は超絶技巧が光る1曲。僅か2分の作品だが一気に聴き手をその調べに誘う。 ( 新宿店 飛田陽海)
【CLASSICAL】
R. シュトラウス: ツァラトゥストラはかく語りき、英雄の生涯、他
サー・ゲオルグ・ショルティ(指揮)
シカゴ交響楽団/ ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/ バイエルン放送交響楽団
[TOWER RECORDS UNIVERSAL VINTAGESA-CDCOLLECTION PROC-2292] 2CD SACDハイブリッド〈高音質〉
ショルティが1970年代に録音したリヒャルト・シュトラウスの管弦楽曲をSACDハイブリッド化。黄金コンビを築いたシカゴ響との3曲では《ツァラトゥストラはかく語りき》が破格。定評ある金管のみならず、Samuel Magad 率いる弦楽器の透明度と深いうねりに心奪われる。ウィーンフィルとの《英雄の生涯》は楽団のポテンシャルが全開で量感のある艶やかなサウンドが生き生きと脈動する。キュッヒルのソロは鋭敏かつ伸びやか。バイエルン放送響を起用した《アルプス交響曲》は速いテンポの中での陽陰のコントラストが鮮烈。今回の復刻によりショルティが形作る横の流れの美や各楽団の高い総合力を改めて実感した。 (渋谷店 中川直)
【CLASSICAL】
ザ・コンプリート・コロンビア・アナログ・レコーディングズ<完全生産限定盤>
アイザック・スターン(vn)
[Sony Classical 19439724252]75CD 〈輸入盤〉
生誕100年を迎えた巨匠ヴァイオリニスト、アイザック・スターン(1920-2001)が1945年~ 1980年にColumbia Recordsに録音したアナログ録音を集成したボックス。全盛期のG線の輝きを軸にした力感あふれる雄大な演奏がたっぷり味わえます。オーマンディ指揮のメンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー、シベリウス、バーンスタイン指揮のベルク、ヒンデミット、バルトーク、バーバーといった協奏曲は表現の柄の大きさに魅了されます。一方イストミン、ローズとのトリオやズッカーマンのヴィオラと共演した協奏交響曲ではコクのあるハーモニーが見事です。晩年日本とも縁の深かった世紀の大音楽家を俯瞰できるセット。(渋谷店 中川直)
【CLASSICAL】
ブルッフ: 交響曲全集
ロバート・トレヴィーノ( 指揮) バンベルク交響楽団
[CPO 555252] 2CD 〈輸入盤〉
ヴァイオリン協奏曲があまりにも有名なブルッフ。以前初めてこの曲を聴いて感銘のあまりほかの作品を聴いてみたいと思いマズア指揮の交響曲全集を手に入れたが期待が大きすぎたためかあまりピンとこなかった。今回トレヴィーノ指揮バンベルク交響楽団の久々の新録音となる交響曲全集を聴いてみて認識を改めざるを得なかった。ブラームスに献呈された1番、短調の荘重な2番、叙情あふれる3 番とそれぞれの魅力を引き出す指揮者トレヴィーノは現在30代半ば、マルメ交響楽団とのベートーヴェン交響曲全集も同時リリース。来日も頻繁で10月には大阪フィルに来演と今後注目の指揮者。(梅田大阪マルビル店 西川智之)
【CLASSICAL】
マーラー: 交響曲第9番
アダム・フィッシャー(指揮) デュッセルドルフ交響楽団
[CAvi Music 8553478] 〈輸入盤〉
この録音で初めてマーラーの第九交響曲が理解できた。アダム・フィッシャーは楽譜に書かれた細かな指示、旋律を余すことなく聴き手に届けてくれる。デュッセルドルフ響は、指揮者の左右に配置した弦楽器と、管楽器のバランスが良い、立体的で歌心ある熱演を聴かせる。第1楽章は旋律を丁寧に歌わせ、複雑な音楽をしなやかに聴かせる。第2楽章はウィーン風のリズムを表現したダンスが愉しい。第3 楽章では急減速、急加速の繰り返しが興奮させられる。終楽章は情念を誇張することなく、しっとりと弦楽が歌を流麗に紡ぐ。静寂の終結部へ向けての高い緊張感が見事だった。(渋谷店 雨海秀和)
【CLASSICAL】
ボヘミアの物語~ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲、他
オーガスティン・ハーデリッヒ(vn)、ヤクブ・フルシャ(指揮)
バイエルン放送交響楽団、チャールズ・オーウェン(p)
[Warner Classics 9029527476] 〈輸入盤〉
アウグスティン・ハーデリッヒは、技巧は維持しつつ、音色は深く熟成した中低音が心地よいヴァイオリンを聴かせている。彼は1984年生まれの36歳。私が彼の演奏を演奏会で聴いた時は古典のハイドンと現代音楽のアデスのヴァイオリン協奏曲の2 作品を素晴らしい技巧、透明な音色で一気に弾いて驚かされた。数年経て聴いたこの『ボヘミア物語』。ドヴォルザークの協奏曲は、1981年生まれの39歳の指揮者フルシャと共演。良い意味で年齢に似合わぬじっくりと濃密で大きな音楽を奏でている第2 楽章が白眉。ヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタは滲み出る情感と滴る美音を駆使した名演奏だ。(渋谷店 雨海秀和)
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