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〈JAZZロングレビュー〉、ブルーノ・メジャー(Bruno Major)『To Let A Good Thing Die』【2020.6 146】

■この記事は…
2020年6月20日発刊のintoxicate 146〈お茶の間レヴュー JAZZ〉掲載記事。2020年6月5日に発売されたブルーノ・メジャー(Bruno Major)『To Let A Good Thing Die』をレビューした記事です。


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intoxicate 146


甘い歌声とジャジーなギターから香り立つロマンティシズム(村尾泰郎)

ブルーノメジャーj

【POP/ROCK】
To Let A Good Thing Die

Bruno Major
[Beat Records/HARBOUR BRC-638][HARBOURJULY006(LP)]

 クラシカルでモダン。そして、普遍的でありながらパーソナルな温もりも感じさせる歌。イギリスのシンガー・ソングライター、ブルーノ・メジャーは、そんな優れたバランス感覚と才能の持ち主だ。毎月1曲ずつ新曲を発表して、1年間で一枚のアルバムにまとめたデビュー作『A Song For Every Mo on』(2017年)で注目を集め、友人でもあるサム・スミスのUKツアーの前座に抜擢されたメジャー。新作となる本作にはビリー・アイリッシュの兄、フィネアス・オコネルがソングライティングのパートナーとして参加。妹の作品にも深く関わっているオコネルは、妹を通じてメジャーの曲を知って気に入り、何か一緒にやろうと声をかけたらしい。


 もともとソングライターとして成功することを夢見ていたメジャーは、ジェローム・カーンやコール・ポーターといったアメリカの作曲家を意識して曲を書いていた。彼が敬愛するランディー・ニューマン 《She Chose Me》のカヴァーも収録した本作でもアメリカン・スタンダードへの憧憬を感じさせて、クラシカルなジャズやソウル・ミュージックをベースに甘美なメロディを紡ぎ出している。レコーディングはメジャーの家に庭にある小屋に作ったスタジオで行われ、マイクは一本だけの最少限度の設備。使用する楽器も最少限度に抑えていて、しっかりと練りこまれたアレンジにもメジャーのこだわりを感じさせるが、ギタリストとしてキャリアをスタートさせたメジャーのジャジーなギター・プレイも聞きどころ。オールドスタイルな曲なのに古めかしさを感じさせないのは、ヒップホップやクラブ・ミュージックを通過したビートが生み出す心地良いグルーヴや繊細にデザインされたサウンド・プロダクションのおかげだろう。そして、そっと胸の内を打ち明けるような憂いを秘めた歌声も魅力的。親密さと洗練されたソングライティングが溶け合うなか、気品に満ちたロマンティシズムが香り立つようなアルバムだ。

ブルーノメジャーa


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