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〈POP/ROCK/NEW AGE ロングレビュー〉岩崎宏美『すみれ色の涙から…』『夕暮れから…ひとり』『I Won't Break Your Heart』【2020.4 145】

■この記事は…
2020年4月20日発刊のintoxicate 145〈お茶の間レヴュー POP/ROCK/NEW AGE〉掲載記事。2020年3月25日に発売された岩崎宏美の3作品をレビューした記事です。

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intoxicate 145


作品と二人三脚で「年輪」を刻む岩崎宏美の航跡群( 末次安里)

岩崎ひろみj1

すみれ色の涙から…(+5)
岩崎宏美
[Tower to the People/Victor NCS-80009]SACD ハイブリッド〈高音質〉

岩崎ひろみj2

夕暮れから…ひとり(+5)
岩崎宏美
[Tower to the People/Victor NCS-80010]SACD ハイブリッド〈高音質〉

岩崎ひろみj3

I Won't Break Your Heart(+6)
岩崎宏美
[Tower to the People/Victor NCS-80011]SACD ハイブリッド〈高音質〉

 昨年のタワレコ日本上陸40周年記念企画として、世界初SACD/CDハイブリット盤化が進行中の宏美盤。各700枚の完全生産限定盤だが、私的にはオトナ買いの好機/待望の仕様群ゆえ全作揃える所存だ。4年前の秋、愛車のA Mラジオから流れる岩崎の《許さない》に初めて触れた日の情景を鮮明に憶えている。検索したら通算53枚め(デビュー25周年時)のシングル曲、作詞にドリアン助川を迎え、作曲は筒美京平。<殴ってもいいですか/あなたの胸を>の詞に即、山上路夫:作詞《春おぼろ》の<怒っているでしょ/ぶってもいいのよ>を連想したが案の定、件のB面は後者のLIVE版が飾っていた。アルバム未収録(昨秋復刻の『パンドラの小箱』+4にボーナス・トラック収録)の《春おぼろ》も阿久悠の筆と誤解している向きが意外と多いが、そんな刷り込み自体が岩崎独自の、至宝性の一端を物語っているだろう。阿久は自身の作品群から「岩崎宏美に触発されて書いた詩を取り除くと、かなり色合いが違って来る」と、自著で書いている。百恵/淳子の成功例を引きつつ、宏美の場合は「架空とか虚構の手段を選ばずに、きちんと年齢とつきあいながら、最も困難な、二十歳を越えることに成功した歌手であった」と、歌手と作品が二人三脚で年輪を刻んだ好例と綴っている。卒業に涙した《思秋期》を経て、結婚を反対される二人を描いた《春おぼろ》、その後の成熟と喪失の集大成的な秀作《許さない》…阿久→山上→助川と作者は変わりながらもヒロイン(像)の精神的バトンは脈々と継がれていた。そんな日本人歌手は稀だろう。


 今回の3作は、ブルコメの《すみれ色の涙》からブレバタの《ともしび》も聴ける1981年の邦楽カヴァー集。やはり宏美自身がプロデュースに名を連ね、二様の《聖母たちのララバイ》や、作家陣の多彩さが堪能できる1982年の最大ヒット盤。そしてD.フォスターをはじめエアプレイ人脈が脇を固めた2度目の米国LA 録音盤(1984年)。20代前・中期の歌唱が輝く!


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