CLASSICAL新譜レビュー 後編【2020.2 144】
2020年2月20日発刊のintoxicate 144、お茶の間レビュー掲載のCLASSICALの新譜8枚をご紹介!
※CLASSICAL新譜レビュー前編【2020.2 144】はこちら
intoxicate 144
①【CLASSICAL】
マーラー: 交響曲第8番 《千人の交響曲》
ガブリエル・フェルツ(指揮)
ドルトムント・フィルハーモニー管弦楽団
[Dreyer Gaido CD21118] 2CD SACD ハイブリッド 〈輸入盤〉〈高音質〉
大阪交響楽団への定期的な客演(2020年8月にも登板予定)でおなじみのガブリエル・フェルツ。シュトゥットガルト・フィルと取り組んだマーラーのレコーディングは大胆不敵なテンポ、ダイナミクスの動かし方が話題を呼びました。その時第8 番は未録音でしたが現在の手兵ドルトムント・フィルとついに録音しました。注目は豪華な独唱者!カウネ、ヴァーミリオン(フェルミリオン)、藤村実穂子さんなど実績十分のヴェテランが揃う盤石の布陣。また収録はMTT:サンフランシスコ交響楽団による同作品の録音を手掛けたプロダクションTRITONUSが担当しています。もちろんSACDハイブリッド盤です。(渋谷店 中川直)
②【CLASSICAL】
マーラー: 交響曲第8番『千人の交響曲』
ヤニック・ネゼ= セガン(指揮)
フィラデルフィア管弦楽団
ウエストミンスター・シンフォニック合唱団/ 他
[Deutsche Grammophon 4837871] 〈輸入盤〉
ここに現出する祝祭空間の並大抵ではない熱量は、この破格の交響曲の本質からまさしく選び取られたものだ。マーラーがミュンヘンで指揮した1910年世界初演にはストコフスキーも列席し、1916年にアメリカ初演をフィラデルフィア管と敢行する。それから100年、この記念碑的演奏会をネゼ=セガンは音楽史的系譜を明瞭に意識した上で、巨大な音楽の太い流れを背景ごと音化することに傾注し、巻き起こるように沸騰するエネルギーの再現に成功した。第2部大詰め《神秘の合唱》の高揚の末に噴出する管弦楽が粘るように炸裂する凄まじさなどは、居合わせた聴衆さながらに聴き手の胸を熱くふくらませてくれる。 (新宿店 森山慶方)
③【J-CLASSICAL】
ベルギー・アルバム LA BELGIQUE
郷古 廉 (vn)加藤 洋之 (p)
[Exton OVCL-00695] SACD ハイブリッド 〈高音質〉
デュオリサイタル「土と挑発」で令和元年度(第74 回)文化庁芸術祭音楽部門大賞を受賞した郷古廉さんと加藤洋之さんのコンビによるニューアルバム。今回はタイトルの通り没後150年のルクーとその師匠格にあたるフランクのヴァイオリン・ソナタ、そして余白にイザイの小品2曲(《子供の夢》《冬の歌》)とベルギーの作曲家が並びます。郷古さんの線が太く渋い輝きを放つ音はフランク、ルクーのソナタにぴったりで両作品が宿す独特の粘性を強靭に表現しています。クリアな質感の彫りの深いタッチで聴かせる加藤さんのピアノとの響き合いも絶妙です。 (渋谷店 中川直)
④【J-CLASSICAL】
信時潔: 交声曲「海道東征」/「海ゆかば」
北原幸男(指揮) 東京交響楽団他
[ キングレコード KICC1504]
戦前" 海行かば"が軍国主義に利用されたこともあって最近まで忘れ去れつつあった作曲家、信時潔だがここ数年は神武天皇の東征を描いた交声曲『海道東征』が毎年のように大阪フィルハーモニー交響楽団によって演奏されるなど復権著しい。そんな『海道東征』に3つ目となる新録音が登場。今上天皇即位の奉祝行進曲《 令和》を作曲指揮した北原幸男さんが東京交響楽団を指揮した令和元年の録音。古語中心の北原白秋の作詞は多少古めかしいが格調高い。大阪に生まれ『海道東征』の後半に出てくる神武天皇と長髄彦が戦ったという生駒山を仰ぎ見て育った信時潔の没後55年を寿ぐ記念作。(梅田大阪マルビル店 西川智之)
⑤【OPERA&VOCAL】
R. シュトラウス: 4 つの最後の歌
ディアナ・ダムラウ(S)マリス・ヤンソンス( 指揮)
バイエルン放送交響楽団 ヘルムート・ドイチュ(p)
[Erato 9029530346] 〈輸入盤〉
充実の時を迎えるドイツの名花の《4つの最後の歌》。続いてピアノ伴奏で遺作の《あおい》を挟み《おとめの花》から幻想的な雰囲気を持つ傑作《3つのオフィーリアの歌》へと繋ぎます。ダムラウはシュトラウス独特の息の長いフレーズを高い技術と彩りのある豊かな表現を生かした歌唱が素晴らしい。ドイチュのピアノはリートの名手ならではでさすが。ラストはオケ版の《明日の朝》。儚げな美しさが印象的な名曲がいつもに増して胸に迫るのはこの録音の後、惜しまれながら世を去ったヤンソンスの指揮だからでしょうか。精神的、内面的な面を表現している曲が多い今回のプログラムを収めるのにふさわしい。(古川陽子)
⑥【CLASSICAL】
グレイト・レコーディングズ
マリス・ヤンソンス( 指揮)
バイエルン放送交響楽団
[Sony Classical 19439724632] 7CD
昨年11月30日に亡くなった巨匠ヤンソンスが、首席指揮者を務めていたバイエルン放送交響楽団と2003~9年にライヴ録音したCD7 枚を廉価BOXまとめたもの。オケの高い技量と豊かな音楽性、落ち着いたトーンを生かした正攻法の名演が揃っている。近年は速いテンポで軽やかに演じられることの多いハイドンが、ここでは充実した内容と熱量を示す。破格のスケールと分厚い響きをもったワーグナーも最高! 得意のチャイコフスキーは内側から燃え上がる情熱が物凄い。バルトーク、ストラヴィンスキー、ブリテンなど20世紀作品における色彩美、機能美もこの名コンビならでは。管弦楽入門にも好
適なお買い得BOXだ。 (板倉重雄)
⑦【CLASSICAL】
ベートーヴェン: 歌劇「レオノーレ」Op.72a, 1805 年版 (第1稿)
ルネ・ヤーコプス( 指揮)
フライブルク・バロック・オーケストラ
マルリス・ペーターセン(S)マキリミリアン・シュミット(T)他
[Harmonia Mundi HMM902414] 〈輸入盤〉
ベートーヴェンの序曲『レオノーレ』は第2番が素晴らしい!ヤーコプスによるそのオペラの全曲録音は第2 番を序曲として演奏。その素晴らしさに狂喜した。続く音楽やレチタティーヴォも全部を一気に聴くことができた。彼の指揮によるモーツァルト『フィガロの結婚』録音以上の名演奏。今聴くべきソプラノのマルリス・ペーターゼンのレオノーレが絶品。大仰な歌唱でなく、人間性に溢れて親近感がある。フロレスタンを歌うマキリミリアン・シュミットと歌う、叫ばず音楽的な二重唱は聴きどころ。フライブルク・バロック・オーケストラは音を叩きつけず、心地よい弾力性と歌心がある演奏を繰り広げている。 (渋谷店 雨海秀和)
⑧【CLASSICAL】
カーメン・ドラゴンの芸術
カーメン・ドラゴン( 指揮)
ハリウッド・ボウル交響楽団 キャピトル交響楽団
[Scribendum Argento SC820] 17CD 〈輸入盤〉
約20年前に当時の東芝EMIからシリーズが発売(現在いずれも廃盤)されて以来、久々のカーメン・ドラゴン(1914 ~ 1984)の体系的復刻、しかも主要録音がまとまったボックスです。アメリカ西海岸を中心に指揮者・作曲家・アレンジャーとして活躍したドラゴンは映画『あきれたあきれた大作戦』(1979)のラストにカメオ出演するなどフィードラー、コステラネッツと並んでライトクラシックのスター的存在でした。1978年には来日して読売日本交響楽団を指揮しています。ショパンからコール・ポーターまでキラキラ舞うゴージャスなサウンドが不思議と懐かしい、楽しみ盛りだくさんの一箱です。(渋谷店 中川直)
▶前編はこちら!
CLASSICAL新譜レビュー前編【2020.2 144】
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