〈JAZZロングレビュー〉ジョン・エリス&アンディ・ブラゲン(John Ellis & Andy Bragen)『The Ice Siren』【2020.4 145】
■この記事は…
2020年4月20日発刊のintoxicate 145〈お茶の間レヴュー JAZZ〉掲載記事。ジョン・エリス&アンディ・ブラゲンの2009年の作品をレビューした記事です。
intoxicate 145
ニューヨーク・ジャズ・ラージ・アンサンブルのトレンドを予見した、2009年初演のジャズ・オペラ(常盤武彦)
The Ice Siren
John Ellis & Andy Bragen
[Parade Light Records PL003]
※タワーオンライン取り扱いなし
ニューヨークの先鋭的アーティストの拠点であるジャズ・ギャラリーは、アーティストに資金とスペースを提供して委託作品を、世に送り出している。ジョン・エリス(ts,ss,b-cl,cl)とリブレット(音楽脚本)ライターのアンディ・ブラゲンは、2007年に「Dreamscapes」、2009年に本作「The Ice Siren」、そして2011年に「MOBRO」と3作のラージ・アンサンブル作品を制作し、2014年に『MOBRO』が、アルバムとしてリリースされた。『The Ice Siren』は初演から7年後の2016年にジャズ・ギャラリー20周年記念コンサートの一つとして再演され、後日、録音されたのがこのアルバムだ。恋人を亡くし失意のどん底にある男が、彼女が葬られた地下室の墓所に毎週花を供えて弔ううちに、彼女の幽霊に出逢い地下室の深い場所まで誘われ、永久に氷漬けにされるというティム・バートンのようなホラー・ストーリーだ。男を『MOBRO』でも主演をつとめたマイルス・グリフィス(vo)が直情的に演じ、幽霊に扮したグレッチェン・パーラト(vo)が、幻想的なヴォイスで男を誘惑する。エリスはストリングス・クァルテットをフィーチャーし、メインのテナー・サックスに加えて、バス・クラリネット、B♭管のクラリネットでストリングスとの親和性を高めている。ニューオリンズでキャリアのスタートを切ったエリスは、マーカス・ロジャスのチューバでベース・ラインを構成する。クリス・ディグマンのヴィボラフォン、マイク・モレノのギターが、随所で効果的なインプロヴィゼーションを散りばめ、ストーリーをドラマティックに盛り上げる。昨今のニューヨーク・ジャズ・ラージ・アンサンブルのトレンドであるストリングス・クァルテットのフィーチャーを、2009年にすでに予見しているエリスの慧眼に驚かされた。「ブラゲンにインスパイアされて、このジャズ・オペラが完成した」とエリスは語る。ジョン・エリス&アンディ・ブラゲンの次作にも期待したい。
John Ellis @ The Cornelia Street Cafe, NYC 2016 Ⓒ Takehiko Tokiwa
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