CLASSICAL新譜レビュー 後編【2020.4 145】
2020年4月20日発刊のintoxicate 145、お茶の間レビュー掲載のCLASSICALの新譜8枚をご紹介!
※CLASSICAL新譜レビュー前編【2020.4 145】はこちら
intoxicate 145
①【J-CLASSICAL】
モザイク ~近現代ピアノ曲集
八坂公洋(p)
[日本アコースティックレコーズ NARC-2155]
八坂公洋さんはカナダのマギル大学(ピアニストのシャルル・リシャール=アムランさんなどを輩出)出身。モントリオールを拠点に活躍中で2014年に邦人作品集『和のかたち』(NAR)をリリースしました。澄んだタッチと敏捷性、響きに繊細な変化を与える色彩美が魅力です。今回のアルバムは日本、カナダの現代作品にドビュッシーの《版画》、中田喜直の《雨の夜に》を加えた構成。カナダの作品はトイピアノを入れた作品など多様。邦人作品ではフランス現代風の枠組みにシューマンをコラージュした小櫻秀樹さんの《Reine Liebe》が面白いです。奏者の色付けの巧みさが作品を引き立てています。(渋谷店 中川直)
②【J-CLASSICAL】
Lyrical...
加々見茉耶(p)
[Triton OVCT-00170]
約10年前、とあるコンクールの本選会場で加々見茉耶さんの演奏に心底驚いた記憶は今も鮮明です。ずば抜けた反射神経、音楽の山と谷をくっきり描き出す力、響き全体の生きの良さ…結果はもちろん第1位でした。以来加々見さんのことはずっと気になっていましたがイモラ音楽院などで研鑽を積み、演奏活動も重ね、ついに待望のデビューアルバムです。チャイコフスキー「四季」からの4曲ではすっきりした流れの中にあでやかな色彩を煌めかせ、ラフマニノフやカプースチンにおいては持ち前の切れ味鋭い指捌きが冴え、聴き手をグイグイ引き込みます。もっともっと聴きたいピアニストです。(渋谷店 中川直)
③【J-CLASSICAL】
マーラー: 交響曲 第3 番 ニ短調
小泉和裕 (指揮) 九州交響楽団 清水華澄 (A)
九響合唱団 RKB 女声合唱団 多目的混声合唱団"Chor Solfa!" ほか
[フォンテック FOCD9831]
小泉和裕さんと九州交響楽団のコンビが話題を呼んだ「千人の交響曲」に続いて再びマーラーの大作、第3番に挑みました。量感のある豊麗な響きでじっくりと仕上げられた音楽が拡がり、作品の内包する要素をあますところなく描いています。九州交響楽団の演奏は瞬発力、アンサンブル、スタミナの全てにおいて素晴らしく、第1楽章冒頭のホルンからフィナーレの叙情性まで緊張が維持されています。清水華澄さんの潤いのあるアルト独唱、地元九州を中心に揃えた合唱団も見事です。2019年7月27日、アクロス福岡シンフォニーホールにおけるライヴ録音。(渋谷店 中川直)
④【J-CLASSICAL】
鏡の中の鏡
齋藤真知亜(vn)鷹羽弘晃(p)
[マイスター・ミュージック MM-4075]
齋藤真知亜さんはNHK交響楽団のヴァイオリン奏者やマティアス・ストリングスの主宰者などとして活躍する一方、1999年から毎年ソロ・リサイタルを行い、多彩なプログラムで聴衆を魅了しています。そして今回2019年6月21日に東京のハクジュホールで行ったリサイタルのライヴ録音がCD化されました。ペルトの《鏡の中の鏡》に始まり、共演ピアニストの鷹羽弘晃さんの編曲によるオッフェンバックの《天国と地獄》、さらにピアソラと齋藤さんの対応力の高さを物語る内容です。研ぎ澄まされた音で綴るペルト、大胆に作品の輪郭を縁取ったピアソラがとりわけ見事です。(渋谷店 中川直)
⑤【CLASSICAL】
コープランド: アパラチアの春/ リンカーンの肖像 他
アーロン・コープランド( 指揮)
ロンドン交響楽団/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団/ 石丸幹二( 語り)
[Sony Classical SICC-30555]
Blu-spec CD2 〈高音質〉
《リンカーンの肖像》は、格調の高い英語原稿の語りとオーケストラが共演する15分ほどの美しい作品。真珠湾攻撃をきっかけにコープランドが国威発揚のため作曲し、1942年に完成した。アメリカでは政治家、俳優、詩人などが語りを務め折々の話題を集める有名曲である。作曲家の自作自演盤は1968 年、名優ヘンリー・フォンダの語りにより収録されたが、その語り部分が今回石丸幹二の日本語朗読に差し替えられた。「言葉」と背景の「音楽」が意味深く重なる醍醐味が、石丸の美声による日本語で直に伝わり、作品の感動が強く身に迫る。胸のすくようなリズムと色彩、愉悦に満ちたコープランドの名作を集めた選曲も良い。 (板倉重雄)
⑥【CLASSICAL】
ラ・パッショーネ
バーバラ・ハンニガン(S、指揮)ルートヴィヒ管弦楽団
[Alpha NYCX10136] 〈輸入盤〉
エーテボリ響首席客演指揮者に就任、“歌い振り”を武器に“マエストラ”としての活動に磨きがかかるソプラノのバーバラ・ハンニガンが、創立から協働してきたオランダの精鋭たちと、掌中の珠とする『受難』3作品を綴った意味深いコンセプト・アルバム。作品が自ずと希求する現在性を、演奏者と聴き手を強力に吸引する求心的な音楽として創出する彼女の手腕は圧倒的だ。ノーノからハイドンへ、彼女は実演でも両作をアタッカでつなぎ、越境的に生成される知情意を聴き手と共有する。『受難』交響曲のアダージョ冒頭の荘重な響き! ラトル&ベルリン・フィルと取組んでいたグリゼーの遺作での憑依的な凝集はまさに圧巻。 (新宿店 森山慶方)
⑦【CLASSICAL】
ゴドフスキーへのオマージュ
アンドレイ・ググニン(p)アレクサンドル・デスプラ(指揮・編曲)
フランス国立管弦楽団
[Hyperion PCDA68310] 〈輸入盤〉
2020年に生誕150年を迎えたレオポルド・ゴドフスキー。ゴドフスキーと言えば、自身もヴィルトゥオーゾ・ピアニストとして、そして作曲家としてはピアノ音楽史上屈指の難曲として知られる『ショパンのエチュードによる53の練習曲集』など超絶技巧を駆使した作品を多数残しています。このアルバムはゴドフスキーに献呈された作品を演奏したもので、ピアノ学習者にはお馴染みのモシュコフスキーに、リストの《ラ・カンパネッラ》のブゾーニ編曲版、ブルーメンフェルト、レシェティツキなどマニアックな作曲家の作品が並びます。どれもがメロディアスで技巧的。知られざる作品にしておくのはもったいない! (上村友美絵)
⑧【CLASSICAL】
未発表録音集~サン= サーンス作品集
ジャンヌ= マリー・ダルレ(p) シャルル・ミュンシュ(指揮)
ボストン交響楽団トーマス・シッパーズ(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
[Solstice SOCD363] 〈輸入盤〉
往年のフランスの大ピアニスト、ジャンヌ=マリー・ダルレ(1905~99)の未発表放送音源が二枚組で登場!曲目は彼女の極めつけ、師匠筋にあたるサン= サーンス作品。しかも共演者がミュンシュ、シッパース、ベンツィ、ソリアーノ、マレシャルと、夢のような顔合わせである。何という豪華絢爛たるピアニズムだろう!宝石箱をひっくり返したような色彩の横溢、軽やかなリズムによる素晴らしい指の走り、激しい情熱の高揚と果てしない想像力の拡がり…。これだけ激しく感情表現を行いながら全体として洗練された感覚と造形を示すのも凄い。印象派以前の19世紀フランス音楽の爛熟がここに刻み込まれている。 (板倉重雄)
▶前編はこちら!
CLASSICAL新譜レビュー前編【2020.4 145】
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