〈CLASSICALロングレビュー〉アンドレア・バッティストーニ『ベルリオーズ: 幻想交響曲、黛敏郎: 舞楽』【2020.4 145】
■この記事は…
2020年4月20日発刊のintoxicate 145〈お茶の間レヴュー CLASSICAL〉掲載記事。2020年5月20日に発売された、DENONレーベルのセッション・シリーズ「BEYOND THE STANDARD」第4弾の作品をレビューした記事です。
intoxicate 145
古典的たたずまいの《幻想》とゴージャスな《舞楽》〜バッティストーニ新境地
(池田卓夫 音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)
ベルリオーズ: 幻想交響曲、黛敏郎: 舞楽
アンドレア・バッティストーニ(指揮)
[Columbia COCQ-85492] UHQCD 〈高音質〉
イタリアの俊英アンドレア・バッティストーニ(1987ー)が首席指揮者を務める東京フィルハーモニー交響楽団とともに日本コロムビアで2018年春から2020年秋にかけて年2タイトル、計5点のリリース予定で続けている「BEYOND THE STANDARD」。シリーズ第4作ではベルリオーズの《幻想交響曲》(1830)と黛敏郎のバレエ音楽《舞楽》(1962/1966)を組み合わせた。
熱狂的な音楽を期待すると、肩透かしを食らうかもしれない。バッティストーニは今や完全に掌握した東フィルの隅々まで磨きをかけ、木管楽器の巧みなソロとアンサンブル、金管楽器のパワー、絶えず透明感を漂わせながら美麗に歌う弦それぞれの良さを最大限に引き出しつつ、ベルリオーズのスコアの極限まで克明な再現を目指す。もちろん、一瞬のルバートで管を印象的に浮上させる(第1楽章)、ワルツが終わる寸前にオシャレなリタルダンドをかける(第2楽章)…などなど、随所に若い指揮者ならではの新鮮な感覚が記されている。
だが、それにも増して際立つのはシャルル・ミュンシュから小澤征爾にかけての「ロマン精神大爆発」路線ではなく、ジョン=エリオット・ガーディナーやフランソワ=グザヴィエ・ロトらによって再考を促されベルリオーズの古典志向をしっかりと押さえた知性である。最終楽章の鐘が「人生に絶望した孤独な芸術家への弔鐘」として響き、金管楽器の強奏する「死の舞踏」の主題が一段と深い意味を帯びるあたりに、バッティストーニの“読み”の深さを感じる。
雅楽を下敷きにした黛の《舞楽》は管弦楽版の日本初演者、岩城宏之指揮NHK 交響楽団のセッション録音(1967年)と、比較試聴してみた。元の音楽の古典美を踏まえ、一直線に進む「活火山指揮者」の岩城に対し、バッティストーニはニューヨーク・シティバレエ委嘱の舞踊音楽としての躍動感を優先、よりゴージャスで明るい音響により、SFX映画のサウンドトラックのような輝きを与えることに成功した。
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