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〈JAZZロングレビュー〉スサンナ・アレクサンドラ&ヨーナス・ハーヴィスト(Susanna Aleksandra & Joonas Haavisto)「Souls of the Night」【2020.2 144】

■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間レヴュー JAZZ〉掲載記事。スサンナ・アレクサンドラ&ヨーナス・ハーヴィスト(Susanna Aleksandra & Joonas Haavisto)の2020年3月18日発売「Souls of the Night」をレビューした記事です。

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intoxicate 144


エストニアの歌姫とフィンランド人俊英奏者が導く、ジャズ・ヴォーカル表現の美意識(佐藤英輔)

スサンナj

【JAZZ】
Souls of the Night

Susanna Aleksandra(vo)Joonas Haavisto(p, synth.)Joonas Tuur(i b)Ville Pynssi(ds)
[BLUE GLEAM BG012]

 
 カーリー・ストリングスやトラッド・アタックなど、近年エストニアのミュージシャンを取材する機会が増えた。彼らはトラッドやポップの側にいる担い手だが、皆英語で受け答えし、なにげに上品な心地を抱えており、エストニアって洗練された国なのではないかとぼくは感じてもいる。そして、やはりエストニア人である、このジャズ・シンガーの技巧とフィーリングが高い次元で重なった歌唱を聴いていると、同様の心持ちを持ってしまう。1989年生まれで音楽一家に育ったスサンナ・アレクサンドラはヘルシンキにあるシベリウス音楽院で修士号を得ており、現在はフィンランドに在住。同国気鋭のピアニストであるヨーナス・ハーヴィストとのこの双頭名義作は、彼女にとって2作目のアルバムとなる。また、ここではフィンランド人のダブル・ベース奏者のヨーナス・トゥーリとドラマーのヴィッレ・プンシがつき、シンガー+ピアノ・トリオという形で基本録られている。


 効果的な隙間の感覚や清涼感がとても趣味良く活かされ、“北”の美的感覚を存分にたたえた現代ジャズ・ヴォーカル作品として推せる内容。アレクサンドラの歌は一言で形容するなら流麗であり、羽を得たようなスキャットも適時披露する。歌声はしっとりとしているのに、一方ではちゃんと奔放さも露にしており、彼女はジャズの歌い手として確かな能力の持ち主であると聴く者を頷かせよう。リーダー・アーティストとしても評価の高いハーヴィストら伴奏陣も過不足なくサポートしている。


 それから、特筆すべきなのは、多くの曲がアレクサンドラ自ら作詞や作曲をしているオリジナルであること。その部分においても、本作はアドヴァンテイジを持つ。風情に富む《ザ・ラヴ・ソング》なんて、他の人がカヴァーしたとしても不思議はない。また、1曲フィンランドのトラディショナルを取り上げ、それもまたエストニアとフィンランドの機知が折り合ったヨーロッパ発ジャズ表現の美点を伝える。


スサンナa


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