〈JAZZお茶の間ヴューイング〉キャメロン・グレイヴス(Cameron Graves)インタヴュー【2020.4 145】
■この記事は…
2020年4月20日発刊のintoxicate 145〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された、キャメロン・グレイヴスのインタビューです。
intoxicate 145
Photo by Makoto Ebi
グランド・ピアノが持ち上がる? メタル・ジャズというユニークな存在
interview&text:原雅明
キャメロン・グレイヴスは、カマシ・ワシントンやサンダーキャットらと共に注目をされ、評価を高めて来たピアニスト/キーボーディストだが、その出自がクラシックにあるところが個性にもなっている。いま最も気に入っているピアニストもユジャ・ワンだという。
「父の影響で4歳からピアノを始めたんだ。10年くらいクラシック・ピアノをやったよ。年配の女性のピアニストが先生でとても厳しかった。ピアノまでの歩き方や座り方まで厳格でね(笑)。でも本当に素晴らしい教え方だった。おかげで今もクラシックの練習はしているよ」
やがてグレイヴスは、音楽教育に力を入れるロサンゼルスのハミルトン・ハイスクールからカマシも通ったUCLAの民族音楽学科へと進み、多様な音楽を吸収していったが、そうした環境がロサンゼルスのジャズ・シーンの活性化に繋がったという。
「この10年から15年くらい、ロサンゼルスはDJが活躍する場が多かったんだ。でも80年代生まれ90年代育ちの僕みたいなミュージシャンが台頭してきた。それは音楽教育が充実していたからだと思う。その後、カットされてしまうんだけどね。だから、その恩恵を受けた最後の世代が僕らだと思う」
だが、グレイヴスらの活躍があって、若い世代のミュージシャンが育ってきている状況はあるだろう。ジョージ・デュークやスタンリー・クラークがグレイヴスらをサポートしたように、彼らもまたシーンを活性化したからだ。そんなグレイヴスはデビュー・アルバム『Planetary Prince』に続く新作のリリースを控えている。
「もうほぼ完成しているんだ。基本的にはメタルに影響されたジャズ・サウンドだよ(笑)。カマシ、ライアン(・ポーター)、ロナルド(・ブルーナー・ジュニア)らは基本的にヒップホップやR&Bからジャズに入って来ているけど、カマシはフェラ・クティやアフリカの影響も入れて来たよね。じゃあ、自分は何なんだろうか、と顧みたときにメタルからの影響だと素直に思ったんだ」
今回、ブルーノート東京で観たソロ・コンサートは、『Planetary Prince』のファンキーな楽曲もヘビー・メタルの演奏スタイルを採り入れていた。ギター、ベース、ドラムはメタルのメソッドに則り、グレイヴスのピアノとキーボードはクラシックとメタルの間を行き来する。そしてバンド全体はジャズのアンサンブルを基調にしていた。なかなか言葉では伝えにくいのだが、グレイヴスが形容する〈メタル・ジャズ〉は確かにこれまでにないユニークなアプローチとなっていた。その独自性がどうアルバムとして表現されているのか、完成を待ちたい。
『Planetary Prince』〈CD/LP〉〈輸入盤〉
Cameron Graves(vo, p)Kamasi Washington(t-sax)
Ryan Porter(tb)Ronald Bruner, Jr.(ds)
[Mack Avenue MAC1123(CD)MAC1123(LP)]
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