見出し画像

〈JAZZロングレビュー〉アヴィシャイ・コーエン ビッグ・ヴィシャス(Avishai Cohen Big Vicious)『Avishai Cohen Big Vicious』【2020.4 145】

■この記事は…
2020年4月20日発刊のintoxicate 145〈お茶の間レヴュー JAZZ〉掲載記事。2020年5月に発売された、アヴィシャイ・コーエン・ビッグ・ヴィシャスのデビュー・アルバムをレビューした記事です。

画像1

intoxicate 145


ECMと共鳴したアヴィシャイ・コーエンの新バンド〈ビッグ・ヴィシャス〉が示す未来(渋谷店 片切真吾)

アヴィシャイj

Avishai Cohen Big Vicious
Avishai Cohen Big Vicious:
Avishai Cohen(tp, effects, synth.)
Uzi Ramirez(g)yonatan Albalak(g, b)
Aviv Cohen(ds)Ziv Ravitx(ds, live sampling)
[ECM/ ユニバーサルミュージック UCCE-1184] [ECM 086630(LP)]

 昨秋、アヴィシャイ・コーエンが〈ブーム・パン〉のウジ・ラミレスや、〈バターリング・トリオ〉のリジョイサー主宰〈ロウ・テープス〉から〈ソル・モンク〉としてソロ作をリリースするアヴィヴ・コーエンなどをメンバーに含むバンドで〈マッシヴ・アタック〉の《ティアドロップ》を演奏し、そのバンドでの音源がECMからリリースされるという情報を目にし、全身が沸き立つ興奮を覚えた。それがこの〈ビッグ・ヴィシャス〉であり、こうしてその通りに今その作品が届いていることに静かな喜びを感じている。


 バンドの結成は2014年、ウジやアヴィヴの他にはアヴィヴとともに〈ゲシェム〉のメンバーとして、あるいはニタイ・ハーシュコヴィッツやリジョイサー含む〈タイム・グルーヴ〉にも参加するギタリスト、ヨナタン・アルバラク、そして同じくイスラエル出身でECM の未来を嘱望されるシャイ・マエストロのレギュラートリオのドラマー、ジヴ・ラヴィッツが名を連ねる。イスラエルの音楽シーンの縮図のようなメンバー構成からもわかるように、彼らの演奏は純然たるジャズとは言い難い。もちろんECMはジャズ専門ではないし、ワールド・ミュージックや実験的な音源のリリースは寧ろその特色だが、それでも「沈黙の次に美しい音」を標榜しながらこのサイケデリック・ロックバンド然としたグループの作品をリリースすることは事件だろう。しかし、驚くことにそこに革新性を見出しつつもその美学は損なわれていない。どれだけノイジーにギターがかき鳴らされようが性急なビートが刻まれようがアヴィシャイのひと吹きで空気が変わる。どんなにスタイルを変えようと芯を貫く音があり、それは《ティアドロップ》とベートーヴェン《月光》の同居にも表れるが、ECMの美学と共鳴した結果、このビッグ・ヴィシャスですらリリースすることに躊躇いはない。それはECMがレーベルの未来の道筋の一つをアヴィシャイに託したという宣言なのかもしれない。


アヴィシャイa

Yonatan Albalak, Alviv Cohen, Avishai Cohen, Uzi Ramirez, Ziv Ravitz
© Ben Palhov / ECM Records



▲Twitter
https://twitter.com/intoxicate3
▲Facebook
https://www.facebook.com/tower.intoxicate/
▲Instagram
https://www.instagram.com/tower_intoxicate/
▲タワーオンライン(本誌オンライン販売)
https://tower.jp/article/campaign/2013/12/25/03/01

いいなと思ったら応援しよう!