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【ゲーム考察】「牛乳はもう飲まないと言え。」ーMilk outside a bag of milk outside a bag of milk(前編)

※この記事では「Milk outside a bag of milk outside a bag of milk」のネタバレを含んでいます。
また、「ホラー」「精神的恐怖」に関するコンテンツが含まれています。
苦手な方はご注意ください。



はじめに

こんばんは。
かぐやです。

今回は、『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』というゲームの考察をしていこうと思います。

このゲームを知らない方は、まずゲームをプレイすることをお勧めします。

また、ゲーム概要と私の感想をまとめた記事、そして前作にあたる、『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』についても記事を投稿しているので、そちらも見ていただけると嬉しいです!



⇩『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』の購入はこちら


⇩前回までの記事はこちら



※以下、
「Milk inside a bag of milk inside a bag of milk」を「インサイド」、
「Milk outside a bag of milk outside a bag of milk」を「アウトサイド」
と書きます。


この記事の流れとしては、

ゲームの流れに沿って、情報を整理。

インサイドでの情報、考察に基に考察。

今回は本編のみの考察です。
エンディングの意味についての考察は、後編で書きます。








情報整理

はじめに、主人公である少女の視点から語られた情報を順番にまとめてみます。


1.家に帰る~部屋に入るまで

・おどけた影たちが、あちこちで踊っている、影が顔を掠めるように感じる。
・自制心や、時間の感覚をぱっと忘れる時があり、楽しい踊りに身を任せる。
・部屋に生ける屍がいるのではないかと考える。

(ドアを開ける)

・買った牛乳の袋が置いてある。
・牛乳は私が安全な場所から得体の知れない世界へと連れ出してしまったのではないかと考える。

(部屋前の廊下)

・ドアの前に馴染みのある生命体が、手を締め付けて、体中の匂いを嗅ぎ始める。
・少女は抵抗せず、締め付けに耐える。
・頭からつま先まで匂いを嗅ぎまわった後、鋭く尖った爪をむき出しにした。

生命体『また…?』『動くな。』

・生命体が少女の手を締め付けて、血管が浮き出る。

生命体『何度も言ったでしょ。』『じっとしろ。』

・とがった爪が少女の腕を貫く。爪から毒が流れ込む。

少女『痛い…。』

・少女の指が痙攣し、全身に広がっていく。『この前と一緒だ。』

少女『なんで、なんでこんなに暑いの?』

・少女の血管が燃えている
・全身が震えている。
・乳白色の泡を吹き出す。

・それに気づいた生命体が怒って私の方に向かってきて、毒槍を刺したまま首を鷲掴みにされた。

少女(?)『殺して、殺して』

・生命体が私の首をひっかき始める。
・水しぶきがあちこちに飛ぶ。少女がその飛んだ位置を覚えようとする。

少女『覚えなくちゃ、覚え…』

・痛みの波がまたやってくる。
・少女の視界が真っ黒になる。

生命体『牛乳はもう飲まないと言え。』
少女『ぎゅ…』
生命体『言え。』
少女『牛乳は…もう飲まない。』
生命体『もう一度。』
少女『牛乳はもう飲まない!』『牛乳はもう飲まない!』


2.部屋の中~蛍探しの前

・先の一軒でひどく疲れ、ママに寝るように言われ支度をしているが、まったく眠くない。
・薬は一気に飲んでしまっている。
・薬の説明見たり、いじったりするが捨てて、飲まない理由をこじつける。
・代わりに自分で薬を作って、その治療効果に溺れた。

(イマジナリーフレンドとの会話を再開)

(鏡の前へ)

・壁からの視線を感じる(目を閉じても意味がない)。
・計算をして気分をよくする。『2の二乗…』
・薬が大切だということは理解している。
・自分で戦えると思ったが、今は3倍ましで痛む。
・薬に対してめまいや痛みよりも考えたくない程に嫌なイメージがある。
・一人が怖いことを認める。

(床に横たわって)

・上からの脅威(天井)、下からの脅威を感じる。
・考えを整理したいと言い、未完成の思考を並べ始める。それを蛍として見るもまとめきれずどこかに行ってしまう。『えへへ、またか。』


3.最初の死

※床に転がっている時何を考えていたかを聞いた場合

(少女の首が絞められる演出が入る)

・目がかゆくなり、こすり始める

選択肢「???どうして泣いてるの???」
   「???どうして泣いてるの???」

選択肢「???牛乳を飲んだ???」
   「???彼が牛乳を持って来た???」

・まつ毛を一本一本抜いたらかゆくなくなるのではと言い出す

選択肢「???何をしたの???」

・『グラスを片付けて、お風呂に入って…』

選択肢「ほら、牛乳でも飲みなよ。」

(発狂)


4.部屋の探索(蛍探し)

(蛍を回収しようとし、部屋の探索をプレイヤーにやらせようとする)

・部屋が散らかると気分が悪くなる。
・選択肢がいくつもあるとパニックになる。

探索時の画面

クローゼット
・全部少女が使えるものではない。

(蛍の回収)
・考えたくないこと。

ノートの1ページ(蛍の回収)
・容量、用法と副作用が書いてある。少女が書いたものではない(爪痕)。
・少女は薬について暗記していない。

???(箱のようなものが積んである)
・(クリックしても何もないが、カーソルを当てると砂嵐のような演出がある。)

ゴミ箱
・薬の箱、ノートの紙切れなどが入っている
ノートの1ページ(蛍の回収)
・容量、用法と副作用が書いてあるが少女が書いたものではない(爪痕)。
・少女は薬については暗記していない。

花壇
・とうの昔に枯れている。

目覚まし時計
・昔の体操を始めようとして、時計を見ているよう頼んでくる。
・秒針をずっと見ていられない。
・昔は時計と目が合った、話しかけて助けを求めてたのではないか言う。

通気口(?)

ラジカセ(?)
・(部屋に計3つ。クリックすると音楽が流れる。)

ノートパソコン(蛍の回収)
・何年も触っていない。
・親に使うことを勧められた。
・画面の前で過ごすことが多かった。
・『地下でなにもかも与えられたハムスターだったけれど、ペットショップに連れて行かれ、ゲージの中に住むことになる。温かく快適だけれど、他のハムスターはショップ出身』
・オンライン友達がたくさんいた。(ゲーム、イラスト、計算、3Ⅾモデリング)
・ウェブの友達は本物ではないし電源を落とすと死ぬが、少しも不安じゃない。なぜなら、コンピュータのプログラムで構成された数字の組み合わせだから。(人 ➡ 適当な画像文字列、メッセージ ➡ 実行可能な数列とコード)
・ある人との出会い『リアルのふりをするのがうまく、騙された。』と言っていて、それ以上は考えたくない。


・全部鍵がかかって閉まっている。
・中身は見たくない。


・自分を天井から守ってくれるもの。

寝袋
・いつもなら寝ている時間
・『私の思考には眠りにつくっていう機能がない。いつも不眠症になる。』

スケッチブック(蛍の回収)
・白紙が多い。
・使い切ってしまうと、文具店にはバスに乗る必要があって自分では行くことができないため、たまにしか書かない。
・椅子の上にある。見下ろすと脚は2本しかないが、かがんでみたら全部ある。
・風が吹いてページがめくれると、前のページを見ることを怖がって目を閉じてしまう。

カバン(蛍の回収)
・膨れたお腹のよう。
・大体は本。ペンやノートは出している。
・前は学校に行っていた。
・教室が明るく、ベッドがふわふわで、給食も美味しかったのが楽しかった。
・授業に全て出ていたが、他の子はサボってた。
・卒業はしていない。
・最後の日について
「普通の日」だった。
パパが迎えに来て、学校のカリキュラムが私に合ってないと言った(前からわかってた)。
家に帰って、ママが出迎えてくれて、夕食を食べ、部屋に戻った。

パパが迎えに来て、もっと大人になりなさいと言った。抵抗せず家に帰った。
家に帰って、ママが出迎えてくれて、夕食を食べ、部屋に戻った。

パパが建物から引きずり出し、抵抗した。
いつものように先生たちは見ているだけだった。
車に押し込まれ、家に向かった。
『帰り道で牛乳を買った。』『まただよ。』『私牛乳が大っ嫌い。』
『ママはいなかった。』『まただよ。』『私ママが大っ嫌い。』

・部屋の中にあるものを把握するのに数か月かかった。

ライト

エアコン

扇風機
・ケーブルがついてとらわれているのではないかと言い悲しむ。

写真
・焦がした
・今は壁のヒビを隠しているだけ

紙切れ(メモ?)
・『これは何?』(エンディングの分岐に関係する。)


5.二度目の死

(※探索終了後、バルコニーにでた場合)

・オンライン友達(親友)の話
彼はネット上のルールを破った。
ずっと口を閉じて、ベットから出ずに、目や耳から何も入ってこないひたすらに夢を見続けるのが理想。(※話がそれている)
彼は図々しく、また自分の存在がリアルだと語り、自分にもそれを求めてきたため、自分のことをすべて話した。

大量のボットを送りつけてきたが、ウィンウィンの関係だった。
文字や動画の自動生成が同時に実行される。
少女の名前がネットに浮上する。
少女にとって耐えられなかった。
監視の目が向けられているように感じる。

全て終わらせると決めた。


6.寝る前

・これからも薬は飲まない。
・頼み事があるが、言うのがのが怖い。誰かが聞いているようにも感じる。
・文字や眼光などが常に見ている。それが怖い、立ち向かえない。

(少女が眠り、エンディングへ)


本編考察

インサイドの考察では、

1.少女の精神状態
2.少女とパパ、ママの関係性について
3.「O」とは

について書きました。
これをアウトサイドで得られた情報を基に 比較・上書きして、

1.少女の精神状態
2.家に帰ってから何があったのか?
3.少女の過去
4.「O」は何か?

の4つにまとめていきたいと思います。



1.少女の精神状態

インサイド時点での私の考察は、

・過度な神経質
・複数の情報処理が苦手
・危機的状況に鈍感

これをアウトサイドでの情報を基に見直していきます。

まずは部屋に入るまで。
おどけた影が踊っていたり、彼女に触れたり、屍がいると思っていたり、自制心や時間の感覚を忘れたり…、と部屋に入るまでかなり考え込んでいます。

また、自分を落ち着かせるために『2の二乗、二乗の二乗…』と考え始めたり。

ここで思ったのは、前回考えた過度な神経質だというのは間違ってはいないのかなと思います。

また、鏡の前で『壁からの視線を感じる』と言っていたり、寝る前には『誰かに聞かれている』『文字や眼光が怖くて立ち向かえない』と恐れていたりもします。

少女のもつ神経質さは、特に「他人」や「もの」なのではないでしょうか。
精神疾患を持っている少女は、何も知らない他人からすれば、「異端」などとみなされることは少なからずあると思います。
インサイドの「O」の人もそのように感じ、『這うように逃げた』のかも。

その上で、物事を深く考えてしまう。
一つ一つの行動に思考が付きまとうため、一つ一つの行動も苦痛なのではないでしょうか。

それが牛乳を買いに行くということだけであっても。

蛍探しの時には、『複数の選択肢があるとパニックになる』と、複数の情報処理が苦手であると少女から明かされました。

また、少女がパソコンについて話している時と、二度目の死の場面では、話がそれてしまうことが多く、プレイヤーがそれを指摘することが何度かあります。

少女は複数の物事を1度に処理することだけでなく、1つの物事への集中も苦手なのかな、とも感じました。

危機感についての話は、薬が要素としてとれるのかなと思います。
『いつもは一気に飲み込んでしまう』
『飲まない理由をこじつける。代わりに自分で薬を作る。』
『薬が大切なことはわかっているが、薬に嫌なイメージがある』

また、探索でノートの紙切れに書いてある薬の用法(おそらく母親が書いて渡したもの)を少女は暗記していない。
寝る前には、『薬は飲まない』とも言っています。

加えて、少女は不眠症であるとも言っています。
おそらく薬には睡眠薬も含まれているでしょう。しかし、彼女は『夢を見続けていたい』といい、薬による睡眠を嫌っている。

少女は薬に対して抵抗感があるため、重要性を理解していても飲むのを拒んでいる。
少女は自分の症状から目を背け続けていることになります。
『夢を見続けていたい』というのは、自分の症状をある程度理解した上での逃避行のようなものではないでしょうか。

また、少女は『部屋の配置を覚えるのに数か月かかった』とも言っています。
椅子に視線を向けた時も、平面と立体の区別がついていないような発言も見受けられます。
視界の影響もあると思いますが、空間把握が苦手


まとめると、

少女は
・過度な「他人」「もの」に対する神経質。
・複数の情報処理、1つの物事への集中が苦手。
・自分の症状を把握した上で、改善を拒んでいる。
・空間把握が得意ではない。


2.家に帰ってから何があったのか?

少女はおびえながら部屋に飛び込んだ。
そして牛乳を見つけて、思考を巡らせて部屋へ戻ろうとする。
その時生命体に爪から毒を入れられ、首を絞められる。
『牛乳はもう飲まない!』と言わされる。

一体この時何があったのかを考察していきます。

まず、部屋に飛び込んで牛乳を見つける。
ここで少女は、『牛乳を得体の知れない世界に連れてしまった』と考え始めます。

ここで少女が牛乳を不安にさせない方法など色々と考えた結果、牛乳を飲んだ
そして、彼女は牛乳アレルギーのため、廊下で生命体、つまり母親が麻酔(鎮静剤)を注射し、少女の飲んだ牛乳を吐かせた、というのがしっくりきます。


流れをまとめると、

少女が部屋で買ってきた牛乳を飲む。
これに母親が気付き、少女を待ち伏せる。

麻酔を少女の中に注射する。
少女の血管から体全体に麻酔が巡り始める。その間麻酔で意識が、もうろうになり、呼吸も苦しくなる。

麻酔が体を巡り少女が泡を吹く。
母親が少女の首をつかみ牛乳を吐かせようとする。
少女が牛乳を吐き出す。

麻酔が体に回り、痛みの波に苦しむ、意識を失いそうな状態になる。
母親が牛乳を飲まないようにしつこく言い聞かせる。


また、この場面で、母親は「また…?」や「何度も言ったでしょ。」と言っていますし、注射をされたとき少女は「この前と一緒だ。」と言っています。

少女は日常的に牛乳を飲んで、母親がそれを吐かせるという行為が過去にもあったということになります。
なぜ牛乳を飲んでしまうのかは、過去の出来事に関係すると思います。(後述)


3.少女の過去


①少女と家族

『最初の死』のシーンでは、少女が首を絞められ、プレイヤーの選択肢もおかしくなります。

ここで、目がかゆみに苦しむ少女に突きつけるのは、
『???牛乳を飲んだ???』
『???彼が牛乳を持って来た???』
の2択。

その後、牛乳を飲んだグラスを片付けようとし、最後には、
『ほら、牛乳でも飲みなよ。』
という選択肢。

ここで少女が発狂して最初の死のシーンが終わります。


次に、かばんの探索時には、少女は学校に行っていて、最後の日は父親に抵抗し、牛乳を買って母親のいない家へ帰ったことが明かされました。

まず、最初の死のシーンでの「彼」は父親とみていいと思います。
そして、『ほら、牛乳でも飲みなよ。』は父親のセリフ。

ここで疑問なのが、父親が少女に牛乳を飲ませていたのか、ということについて。

私は日常的にそうだったと考えています。
また、『最後の記憶』(父親の投身自殺の日)が最後の日であると思います。
なぜなら、父親が牛乳を買ったことは何度もあるし、母親が家にいないのも何度もあった。
そして、最後の日は、少女には厳重なフィルターがかかっていたため。

父親は最後の日に、少女に牛乳を飲ませてから自殺している。
そして、部屋にあった箱の山は「牛乳の箱」ではないでしょうか。
※今作では、冒頭のアニメーションで、牛乳がパック入りのような形状になっています。

冒頭のアニメーションで牛乳を取るシーン。

父親が箱を捨てさせずに少女の部屋に持っていかせた。
少女自身がそれを見ないようにフィルターをかけたために、箱の山を探索しようとすると、砂嵐のような演出がかかるのではないでしょうか。


まとめると、

母親は仕事で家にいないことが多く、父親が基本的に少女の面倒を見ていた。
母親には娘が自分で飲んでしまったように見せかけて。
元々、少女は学校に行っていた。学校の生活を楽しんでいた。
しかし、普段は保健室で寝ていた。
授業は空き教室などで先生と受けていた。少女視点、他の子がサボっているように見えていた。

しかし、娘の世話に耐えられなくなった父親が少女に牛乳を飲ませるようになった。
少女は父親が迎えに来るのを嫌がり抵抗する。

これを繰り返していくうちに、少女と父親の関係は悪化。
母親は真相を知らないために、少女が牛乳を飲まないよう責める。
少女がだんだんと母親を嫌うようになる。


・ 少女の抵抗も激しくなり、父親の虐待もエスカレートする。


最後の日
少女の抵抗に父親が耐えられなくなる。
牛乳を買って少女に飲ませ、飛び降り自殺。

そして、『最初の死』は「現実世界での居場所を失った」こと。

学校生活での友好関係を築いていたという話もないので、家族だけが頼れる存在だった。

しかし、
母親はいつもいないので、少女のことを気に掛けてくれない。
父親からは見放され、最終的には死んでしまった。

父親の死以降の記憶は残っていないため、自分が頼れる人がいなくなってしまったと考えているのではないでしょうか。


②少女とウェブ

パソコンの探索と、二度目の死の体験では、少女がパソコンを使っていたが、やめてしまったことが明らかになりました。

ネット上で少女に何があったのかを考察していきます。

パソコンの探索では、ウェブに入ってからがパソコンを使わなくなったきっかけがある、ということが明かされます。

この時点で明かされた情報を私なりに解釈してみました。

『地下でなにもかも与えられたハムスターだったけれど、ペットショップに連れて行かれ、ゲージの中に住むことになる。温かく快適だけれど、他のハムスターはショップ出身』

「元々1人(オフライン)で色々なことしていたが、ウェブ(オンラインでSNSなど)を始めた。そこは常に他人の評価や繋がりが強く、自分は常に見られている。自分のことを肯定してくれる人もいるので、居心地はいい。けれど他の人は常にその繋がりの中で生きていた」

ウェブの友達は本物ではないし電源を落とすと死ぬが、少しも不安じゃない。なぜなら、コンピュータのプログラムで構成された数字の組み合わせだから。
(人 ➡ 適当な画像文字列、メッセージ ➡ 実行可能な数列とコード)

ウェブ上の人は自分の好きな時に現れるため、たとえ自分がオンラインであろうがオフラインであろうが他人に何の支障も与えない関係性。


この2つは、ネット上の人間関係を少女を通して的確に表していると思います。

SNSでは、他人の投稿にいいねやコメントを付けたり、フォローをしたりすることで簡単に評価を伝えることもできるし、アカウント一つで簡単に他人と繋がることができる。
しかし、裏を返せば、自分と他人の利害が一致しなくなれば、ボタン1つでその人との関係を断つことができてしまうし、自由な発言と誹謗中傷の区別ができないと意図せずとも人を傷つけることもできてしまうわけです。


そして、『二度目の死』の体験。
バルコニーに出た少女がネット上の友達の話をし始めます。

この話もまた、パソコン探索時には言及を避けているところなので、『最後の日』同様、少女にとってのフィルターがかかっていた部分。

友達の話について、先程同様に解釈を書いていきます。

彼はネット上のルールを破った。
彼は図々しく、また自分の存在がリアルだと語り、自分にもそれを求めてきたため、自分のことをすべて話した。

少女にメッセージを頻繫に送り、コンタクトを取ろうとしていた。
その時に個人情報などを聞いてきたりとネットリテラシーがなかった。
しかし、彼が自分のことを明かしてきたから、自分のこと(個人情報)も話した。

大量のボットを送りつけてきたが、ウィンウィンの関係だった。

彼が少女に共通の趣味思考を持つ他人を紹介した。
そうすることでコミュニティーが大きくなるため、少女と彼を知ってくれる人が増える(フォロワーが増える)。

文字や動画の自動生成が同時に実行される。
少女の名前がネットに浮上する。
少女にとって耐えられなかった。
監視の目が向けられているように感じる。

人(フォロワー)の投稿したコメントや動画が画面に表示されるようになる。
少女にとっては、個人情報を明かしてしまったことでネット上での人との繋がりが一気に増えてしまい、「他人から見られているのではないか」という不安がウェブを使っているときに常に付きまとうようになった。
それに耐えきれなくなり、ウェブ上の人間関係を断った(アカウントを消しした?)。

まとめると、

両親からPCを渡される。
オフラインで、ゲーム、イラスト、計算、3Ⅾモデリングなどを楽しみ、1日の大半を画面の前で過ごしていた。

ウェブ(オンライン)の世界へ。
共通の趣味を持つ友達ができる。浅くて広い関係を持つようになる。

1人の親友ができる。
少女に強引にコンタクトを迫る。
彼が自分の情報を話したので、少女も自分のことを話した。

彼が少女のことを公開したため、たくさんの人が少女のもとにやってくる。
たくさんの投稿が画面上に表示されることが不安で、それに耐えきれなくなる。

パソコンを使わなくなる。

そして、『二度目の死』は「ネット上での自分の居場所を失った」ことだと思います。


③『最初の死』と『二度目の死』
①と②で、少女の過去に何があったのかを考えてみましたが、この2つを出来事順に並べ直してまとめようと思います。

流れとしては、少女には父親の自殺以降の記憶はないと語っているため、『二度目の死』➡『最初の死』の順で起こっていると思います。




4.「O」は何か?

今作では、「O」のようなものは、2度出てきます。


1度目は、『二度目の死』のシーン。
少女がバルコニーに出ますが、マンションが円状になっていて、少女は上を見ないようにしているようにも見えます。
そして、上には「O」のようなものが。

もう一つは、エンディング後のシーン。
「O」を少女が上を見上げているようにもみえます。


この二つのシーンから、「O」のイメージは「月」ということなのでしょうか。
私は、「他人からの視線」の象徴が月ではないかと思います。

前回私は、「O」は虚ろな目のイメージではないかという考察をしました。
アウトサイドでは、少女が影や視線を何度も気にしています。
そして、月は、私達からみたら、常に上にあるため、私達がどこにいても外から月は見えます。
少女は、常に月に見られていると感じているのではないでしょうか。


また、少女の着ている服について。


これは「O」が怖いことを単に表しているのでしょうか。
しかし、空集合の記号にも見えます。


今回アウトサイドを通して感じたのが、「O」が「人の輪」とも解釈できるではないか、ということ。

少女は精神疾患を持っているために、学校生活を送るなど他の人と同じように生きてこなかった。

そして、過去に少女が人から傷つけられる経験は何度もありうる。

彼女は自身の症状に関してもある程度理解はしている。
彼女が自分と他人は違う(精神疾患の有無)ことが、コミュニティーからはじかれてしまうということを表しているなのかもしれません。

彼女は人の輪に入れてもらえていない、つまり空集合の存在
それを服で表しているのならば、それはこのゲームをプレイした私達へのメッセージなのかもしれませんね。




まとめ

インサイド、アウトサイド2作品の考察を時系列順にまとめると、

少女は、精神病に苦しんでいた。
牛乳アレルギーでもあった。
過度な神経質であり、ものごとへの集中・処理もうまくできない。
他人の視線や阻害感から「O」が怖くなる。

学校生活は楽しんでいたが、人間関係はいかなかった。

母親は、家にいないことが多く、父親が送迎など娘の面倒を見ていた。
ただ、両親とも娘には冷たく接していた。

両親が家での娯楽としてパソコンを与える。
少女がパソコンで、ゲーム、イラスト、計算、3Ⅾモデリングなどに没頭する。

少女が父親に反抗するようになる。
父親は、少女への「罰」として牛乳を飲ませていた。
それにより、少女に「牛乳は飲まなければいけないもの」だと刷り込まれてしまった。
母親はそれを知らないため、少女を責めるのみ。
また、母親と父親の喧嘩も多く、家族関係は良くなかった。





少女がウェブを使うようになる。
ウェブ上での人間関係が形成されるが、少女がそれに耐えきれなくなり、関係を断ってしまう。
ーーー『二度目の死(ネット上での居場所を失う)』ーーー

ウェブのことや薬を飲まないことで徐々に精神状態が悪化。
少女の抵抗が強くなり、父親の虐待もエスカレートする。
母親はこの真相を知らない。
これを繰り返した結果、父親が自殺。
ーーー『最初の死(現実世界での居場所を失った)』ーーー

母親が少女の症状改善をしようとする。
少女は父親のトラウマで、牛乳を飲んでしまうことがある。
毎回母親がそれを吐かせて、症状が出ないようにしている。





特別な日』
インサイド

母親が治療の一環として、少女に牛乳を買いに行かせた。

アウトサイド
家に帰ってきて、少女が買った牛乳を飲んでしまった。
母親が麻酔注射をして、牛乳を吐き出させた。

眠りにつけず、自分の過去を掘り起こす。
そして、眠りについたが悪夢に苦しむ。



おわりに

インサイドよりも情報がたくさんあるので、考察が長くなってしまいました。

後編では、5つのエンディングの考察を書こうと思います。
エンディングだけでも書くことがいっぱいありそうなので、今回は前編、後編に分けることにしました。
後編も見てもらえると嬉しいです。


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かぐや(旧)
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