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【ゲーム考察】「牛乳は買えた?」ーMilk inside a bag of milk inside a bag of milk

※この記事では『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』のネタバレを含んでいます。
また、「ホラー」「精神的恐怖」に関するコンテンツが含まれています。
苦手な方はご注意ください。



はじめに

こんばんは。
かぐやです。

今回は『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』というゲームの考察をしていきたいと思います。

このゲームを知らない方は、まずゲームをプレイすることをお勧めします。

また、ゲーム概要と私の感想をまとめた記事を公開しているので、そちらも見ていただけると嬉しいです。



⇩『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』の購入はこちら


⇩感想記事はこちら



この記事の流れとしては、

「情報整理」…ゲームの流れに沿って、情報を上げる。

疑問点を上げる。

「考察」…情報を元に全体を通して解釈をまとめる。

という感じでまとめていきます。






情報整理

1.家 ➡ お店までの道のり

・主人公(少女)のイマジナリーフレンドとしてプレイヤーが定義されている。
・外出するのは久々
・話す練習を繰り返す
・数字に対する執着心、数え間違いでパニックになる
・お店の閉店時間1時間前に店から出ている


2.お店の中で(人に話かける場面)

・少女「何ですか?」→話かけた相手「O」
・少女は「O(何かの文字)」が怖い。何を言われても余計なことを考えない、聞かないふりをしている。

"何ですか?"
"O"
"何ですか?"
"O"
"何 で す か ?"
"O!”


3.お店の中で(牛乳を持ってレジで購入するまで)

・閉店時間まで15分(はじめからここまでで45分経っている)
・「牛乳を買わないとママに窓から捨てられちゃう」


4.お店 ➡ 家までの道のり(~ベンチに座る前)

・牛乳の重さが治療の辛さのように感じられる。
・自分をアイスに例えた話をする。
・トラックをクマだと認識していた。
・信号や天候は私に合わせてくれる。


5.ベンチ、家に帰るまで

・自分がだんだんおかしくなっている。自分でも分かっている。
・薬が効かなくなってきている。
・文字や単語の認識が苦手。
「アレがあってから、何もかも赤色にしか見えない」、他の色は認識できない。
父親は死亡している(窓から飛び降り) ➡ 最後の記憶
複雑な家庭だった。
・牛乳を買った今日を「特別な日」という。
・柵にぶら下がって高所恐怖症を克服した。

※ここで枠がなくなる。

6.家に帰ってきて

ママ「牛乳は変えた?」
少女「あ、ママ。」
ママ「牛乳は?」
少女「はい、ママ。」
ママ「新しい薬は効いた?」
少女「はい、ママ。」
ママ「寝ろ。」


(※スタート画面に戻る)


疑問点

前提として、プレイヤーは主人公のイマジナリーフレンド。
つまり、ゲーム画面は、少女の視界を通したもの。

その上で、

1.少女の精神状態
2.少女と家族の関係
3.「O」とは?

の3点について考察していこうと思います。


考察

1.少女の精神状態

※医療知識に関しては知識不足のため、具体的な病名などはあげません。

まず最初のシーン。

少女は外出が久々で話す練習を繰り返していました。
また、歩数を厳密に数えて、途中で分からなくなるとパニックを引き起こしています。

このシーンから、彼女は過度の神経質、また複数の情報を処理するのが得意ではない(他のことを考えると今さっき考えていたことが分からなくなってしまう)と思います。

また、少女に対してプレイヤーが答える選択肢には、
『あんた、どうしようもないね』
などの少女に対して冷淡な言葉が多々見られます。
これは、彼女が過去にかけられた言葉のように感じます。
特に「親」からの。(詳しくは後述)


そして、少女と牛乳の関係について。
牛乳を購入後、彼女は「牛乳の重さが治療の辛さ」と話していました。
また、牛乳を変えた今日を「特別な日」だと言いました。

少女にとって牛乳はなにか負の感情を呼び起こすものなのでしょうか?
「牛乳」と「治療」、この二つの言葉から連想されるのは、牛乳アレルギーかなと思います。

少女は牛乳アレルギーであり、牛乳に対する恐怖心を取り払うための一歩として牛乳を買いに行った。
これが今日の出来事で、少女はそれを達成することができたので、「特別な日」と言ったのではないでしょうか。

ベンチでの会話では、彼女が自分についての話をします。
『薬が効かなくなっている』
『自分から見たバケモノは私を襲うわけではなく、むしろ私を怖がっているのではないか』
自分の見えてるものと実際のものが違うのではないかと打ち明けてきます。

また、少女の父親が飛び降り自殺をしたことが明かされます。
それが少女の「最後の記憶」であり、それからは、少女の見えている視界は赤色になり、他の色の識別ができない。

ここで気になるのが、父親は1人で飛び降りたのか?ということです。

あくまでゲーム画面では、「私のパパだったもの」として赤色のドット絵で表示されます。
おそらく、死体はかなり原型をとどめていなかったのではないでしょうか…。

そのような状態になるほどの飛び降りなら、父親が少女と共に飛び降りをした、というのは考えにくいと思います。
その場合、少女だけが目や脳にダメージを負いながらも生き残った、という可能性は低いかなと。

少女は父親の死体を目の当たりにしてしまい、その精神的ショックが大きかったために視界に影響を与えてしまった、と考えます。

また、トラックにひかれそうになるのを直前まで気付かず、それをクマだと思い込んでいたり、柵にぶら下がって高所恐怖症を克服したとも言っていました。
彼女は危機的状況に鈍感なのかもしれない。

彼女自身も自分自身の状態が悪化していることには察しがついていますが、
『あはは…』
と少し誤魔化しています。
「私に危険なにかあっても仕方ないな」
というマインドになってしまっているのかもしれません。


ここまでの考察をまとめると、

少女は
・過度な神経質。
・情報の処理が苦手。
・自分の状態を理解しているが、半ば諦めている。
・牛乳アレルギー。
・親から冷たく扱われていた可能性がある。
・父親の自殺が原因で視界が変化してしまった。



2.家族との関係

最後のシーンでは母親が登場しますが、少女視点では母親はまるで仮面をつけているかのような、表情がない顔。

母親の声掛けに対しても
『はい、ママ。』
と冷たい目で機械的な返事をする少女。

このシーンから少女 ➡ 母親への印象は良くないと思われます。

『牛乳を買わなきゃママに窓から捨てられちゃう!』
という発言からも、少女は母親を怖がっているのでしょう。

では母親 ➡ 少女はどうでしょうか。
まず、「情報整理」の部分で、母親に関連しそうな情報を見ていきます。


①外出をするのは久々

母親が少女に対して「外に出るな」と幽閉状態にしていたのでしょうか?
しかし、ならなぜ突然牛乳を買いに行かせたのか。
むしろ、少女が引きこもっていたために、母親が外に出るきっかけとしてお使いに行かせたと考えた方がしっくりきます。


②閉店1時間前

歩きで移動しているので、最寄りのスーパーに牛乳を買いに行ったのでしょう。
しかし、閉店1時間前ならば、8時~10時ごろに外出をしたということになります。
夜は暗く、事故に遭うリスクもありますし、犯罪に巻き込まれる可能性だってあります。
なぜわざわざ夜に買い物に行かせたのでしょうか。
私は、少女が人との関わりや、視界に入る情報が最小限で済むようにするためなのかなと思います。
少女が外出をするのが久々なら、リハビリのような感じで、人にできるだけ話さなくていいよう、人の少ない閉店前に行かせた。
また少女の視界が赤色であることを気にかけて夜に行かせたのかも。


③『ママに窓から捨てられちゃう』

脅しのように聞こえますが、正直これを本当にやるつもりで言ってはいないでしょう。
先ほどの「少女が引きこもっていて、引きこもり解消のために買い物に行かせた」という軸で考察するならば、
「娘にここまで言わないと行動しないだろう」
という母親の考えなのかもしれません。


④『寝ろ。』

母親が帰宅後に登場するシーン。
本作での母親の登場はここのみ。
まず、少女の帰宅後に「牛乳」について確認するあたり、少女と牛乳には何らかの関係性があるとみていいと思います。

ここで気になるのが、なぜ『寝ろ。』と言ったのか。
「寝なさい。」ではなく、一番口調の強い言葉で。

これは、③でも言ったような、
「娘にここまで言わないと行動しないだろう」
と考えた結果のものなのかもしれないと思います。

少女は「文字や単語の認識が苦手」と言っていました。
レジのシーンでも店員が
『もう、あなた、持ってる。』
と言っていましたが、これは彼女が彼の言った言葉を全て認識していなかったと考えられます。

その上で、母親は、短い文章で娘に何かを伝え、彼女が深く考えすぎてしまうのを避けるため
『寝ろ。』と命令口調で言ったのではないでしょうか。


ここまでの私の考察だと、
「なぜ少女が母親に対しての印象が悪いのか」
が不明瞭です。

少なくとも、彼女と母親の間には何かがあるはずです。

ここで私が気になったのは、前述した「プレイヤーの選択肢」です。

『前にもやり方教えたよね。いい加減にしてよ。』
『あんた、どうしようもないね。』
など、少女を追い込むような言葉。

『ここじゃないね。~。』
などの少女に説明をするかのようなイマジナリーフレンドの文章。

これは実際に過去に母親、父親から言われた言葉なのかなと思います。
少女があまり外に出てないこと、年齢が小中学生位であると仮定すると、人間関係における両親の影響は相当大きいと思います。

また、少女は家族について「複雑な家庭だった」と話していました。
これは、「家族間の関係性が良くなかった」という解釈をすると、母親と父親の関係も良くなかったのではないでしょうか。

娘に関することで揉め事に、ということは少なからずあると思います。
また、それを耳にした彼女自身の精神も追い詰められることになることに繋がり、彼女の症状が悪化する。

それが原因で両親がまた揉める。
症状が悪化する。



と繰り返しになり、結果的に父親のメンタルが先に壊れて飛び降りてしまった。

そして、少女がそれを目の当たりにして、「父の自殺は自分の影響」と思っているなら、それが少女に対する大きなダメージ、つまり視界が赤色になってしまったことに繋がったのではないかと思います。

また、これは母親にも精神的影響を及ぼしているはずです。

以上から私が考えたのは、「父親の自殺」の前後で少女と母親の関係性が変化したのではないか、ということです。


私の考察を時系列を並べ変えてまとめると、

少女は精神病を患っていて、自力で行動するのは難しい状態。
また牛乳アレルギーで牛乳を恐れている。
両親は最低限生活ができるように娘の教育をしていた。
(学校や買い物など外にも連れていっていたではないか)

しかし、娘は人並みに生活することはできない。
それに対して、母親、父親は、
「前にもやり方教えたよね。いい加減にしてよ。」
「あんた、どうしようもないね。」
「あーもうイライラするなあ。」
というような言葉を浴びせたり、娘をめぐって揉めることがあった。

少女がそれを受け止め、段々と少女の重荷となっていく。
少女の症状が悪化する。

それによってまた揉め事が起こる。
父親、母親の精神が擦り減っていく。

それによりまた少女の精神も擦り減っていく。
症状が悪化する。





これを繰り返していくうちに、最初に父親が精神的に耐えられなくなる。
父親が窓から飛び降りる。死亡。
少女がこれを目の当たりにしてしまい、視覚、記憶力に影響が及んでしまう程の精神的ダメージを受ける。
(視界が赤色になる)これが「最後の記憶」になる。

少女が(より)外出を拒むようになる。
毎日階段の柵にぶら下がって高所恐怖症を克服するような危険な行動をするようになる。

母親が、夫と同じような最期にならないよう、少女を行動させようと考える。
時には脅しや、命令口調で少女の症状が改善するよう行動させる。
しかし、少女にとっては母親が怖いと刷り込まれている。
(父親がいた頃の、厳しい口調で、機嫌の悪い母親が少女の記憶として刻み込まれているため)

そして、「牛乳を買う」というのは、少女の症状改善のために、母親が娘に課した1つの目標のようなもの。
これができたため、少女にとって「特別な日」になったのではないか?

というのが家族関係に関する私の考察です。


3.「O」とは

少女は「O」の文字を怖がっていて、何を言われても余計なことを考えない、聞かないフリをしている。
そして、「O」のイメージをプレイヤーに共有してきました。

まず、「O」が何かの文字が少女によって変換されていることになります。
そして、少女が
『何ですか?』
と言っても
『O』
としか返さない。

少女が
『O?』
というと
『O!』
といって逃げてしまう。

そもそも「O」が単一の言葉を指すのか。それとも少女にとってのパニックの起点なのか。

「O」は同一の言葉であるとすると、
少女が本当に「何ですか?」とずっと言い続けていたならば、
「O」というのは、
「なに?」
のような簡単な返答
または
「え?」
「はい?」
などの相槌になるのではないか、と考えました。


また、この「O」が「何かの文字のイメージ」ならば、
私は「虚ろな目」というのが一番しっくりきます。

おそらくは、両親が向けてきた目。

そして、その目に関連付けられた言葉が「何?」が一番あり得るかなと思います。

「何?」という言葉は、ニュアンスを変えれば、簡単に圧力をかける言葉に変わるのではないかと思います。
過去に両親がその言葉を使っていたなら、少女がその時の「虚ろな目」と「言葉」を結び付けて「O」と認識している可能性は全然あると思います。

しかし、話しかけた相手がずっと同じ言葉を返すのは不自然にも感じます。
少女は、話しかけて最初に返された言葉に「O」をリンクさせていていたため、「O」を想像してパニックになり、その後の会話も全て「O」に置き換えられている可能性もあると思います。


まとめると、

「O」は少女にとって、恐怖の象徴。

「O」が単一の言葉
➡「何?」「え?」「はい?」などの簡単な返答・相槌の繰り返し。

「O」がなにかのイメージ
➡向けられた「虚ろな目」と「何?」など圧力をかけるような返事によって、パニックになり、その後の会話に「O」というフィルターがかかってしまった。


まとめ

今回、『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』全体を通しての私の考察は、

主人公の少女が精神病を患っていた。
過度な神経質であったり、情報の処理が苦手。
牛乳アレルギーも持っていた。

両親が娘の教育に疲れはじめ、
「あんた、どうしようもないね。」など少女を傷つける言動をしたり、虚ろな目を向けるようになった。
また、少女をめぐって揉めるようになる。

それによって、少女が自身を追い込むようになる。
「虚ろな目」を「O」として認識し、怖がるようになる。

こうして、少女の症状が悪化。


・ これの繰り返しで、家族関係が悪化。


父親が自殺。
少女がこれを目の当たりにし、「最後の記憶」として刷り込まれる。
視界が赤色になる。
自分の症状改善を半ば諦め始める。

母親が少女に真剣に向き合うようになる。
脅しや命令をしながらも、少女の症状改善をはかる。

その一環として、牛乳を買わせた。
少女がそれを成し遂げたため、「特別な日」となった。


おわりに

感想でも述べましたが、
このゲームのプレイヤーとしての選択肢は、あくまで少女から「病気」「症状」ということから目を背けるような選択肢を避けなければ、クリアまで進めない。

プレイヤーは彼女の状態をどうすることもできない。
また、情報も少ない上に、それも少女視点からのものなのでどこまでが現実なのかの線引きが難しい。

そのようなことを考えていると、書いている途中で、この考察は無駄なのかもしれない、と思うこともありました。

しかし、考え始めると気になる所がたくさんあり、今回文章を書いて、自分の考えをまとめてみました。

本作の続編である『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』についても感想と考察を上げるつもりです。


最後まで記事を読んでくださった皆さん、ありがとうございます。

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かぐや(旧)
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