明日へ

薄明の空に誘われて、歩みを止めずに進んでいった。

帰るべき場所はとっくに通り過ぎていたが、私は前しか見なかった。そもそも帰るべき場所なんて、今の私にはあるのだろうか。

見慣れた景色に身を委ね、全てを身体に取り込むように大きく息を吸う。そして要らないものだけを吐き出すようにゆっくりと息を吐いた。

川のせせらぎ、ランニングをする人の足音、微かに聞こえる車の走行音。それら全てが心地良く、けれどもどこか寂しかった。

突如、遠くのほうに虹が現れた。

雲の間にそっと佇むように見えるその虹にもっと近付きたくなり、気付けば走り出していた。

橋の上まで行くと思いの外近くにあり、自分だけのものになったような気がして少し寂しさが紛れた。

何かに飛び込むように走ったのはいつぶりだろう。

大きな大きな空を前に、あなたが両手を広げて待っている姿を思い浮かべたのは腑に落ちないけれど、きっとそれが今の私。

ほんの5分ほどで空の奥へと消えていったそれだったが、時間以上の印象を私の中に残してくれた。

明日からさらに忙しくなる私への激励かな。

回れ右をした私の足取りは軽く、川面に映る揺れた空に沿って歩き始めた。

赤く染まったその空に、背中を押されたような気がした。


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