見出し画像

「チームで大切にしたいこと」    心理的安全性 お仕事&言語学習

¡Hola!
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。インタースペイン取締役&大学非常勤講師&UNED博士課程大学院生の高木です。今回は弊社で働くうえでみんなで大切にしていることについて書いてみたいと思います。人生においてお仕事が占める時間的・精神的な割合は結構大きいですよね。ひとりひとりは違っていい!という多様性は重んじつつも、毎日一緒に仕事をする仲間とはある一定の価値観を共有していると安心感を持って働くことができるのではないかと思います。

インタースペインがどんな会社なのか?はこちらをどうぞ


Sin prisa, pero sin pausa. 

私達の会社の理念をスペイン語で一言で表現すると「急がない、でも、歩みを止めない」です。この理念に象徴されるように、何事も常に学び続けることを大切にしています。今の時代、少ない努力で早く結果を得ることが美徳とされています。もちろん、効率的に物事を処理することも場合によってはとても大切なことです。でも、言語を学ぶことやお仕事に関してはたとえ細くても長く継続することが重要だなと実感しています。

Conocimiento x Experiencia 

もう一つ大切にしていることに、「知識」と「経験」をかけ合わせるということがあります。tener conocimiento de algo と tener experiencia de algo は似ているようで違うんですよね。例えば、バスク地方ではバスク語とカスティーリャ語が公用語であるということを「知識」として知っている、ということと、実際にビスカヤに留学してバスク語母語話者の友達ができて彼の家族の中でも環境によってどちらの言語をメインで話しているかや母語だと認識しているかには大きな違いがあった、ということと知る「経験」を持つというのは、まったく違いますよね?知るだけにとどまらずに経験につなげたい。この実現を事業の柱にしています。

Seguridad psicológica 心理的安全性

さて、最近、職場における「心理的安全性」Seguridad psicológica の重要性いうことが謳われていますよね。大きな組織の RR.HH. recursos humanos人財マネージメントについての研究がベースになってはいますが、小さなチームにも応用できる部分があるかと思います。この理論を職場に当てはめて解説した書籍が日本語でもいくつも発行されています。膨大な研究のほんの一部だと思いますが、心理的安全性を担保するためには少なくとも4つの要素が大事なんだそうです。関連書籍や論文に目を通して考えると「これはスペイン語学習にも通じるなあ」と思ったのです。
この理論提唱者のHarvard Business SchoolのEdmondson博士のTEDTalkはこちらを

「話しやすさ」

1つ目の要素は「話しやすさ」なんだそうです。
「こんなこと言って間違ったらバカって思われるかな」など心配せずにとりあえず言ってみよう!まあ間違えてもいいや、と思えることかと理解します。今、私は日本語を母語とするスペイン語学習者の間違い errores について研究しているのですが、そもそも学習者中心の言語教育では、間違いは避けるべきものではなく発達の過程において通るべき一つのステージだから間違えるのも大事だと定義されています。また、「話しやすい」ということは、言い換えると、聞く姿勢をみんなが持っているチームかどうかということが前提ですよね。これもまたスペイン語学習にも通じる!と思います。スペイン語が話せるようになりたい!と思っているのならば、まずは、相手のスペイン語を「よーく聞く」ことが大事ですよね!

「助け合い」

2つ目の要素が「助け合い」です。お互いに助け合うということが日常的にできるといいですよね。手を貸してほしいときに、「これ、ちょっと苦手なので助けてもらえます?」「これできたらチェックしてもらえます?」など気軽に頼める、「あ、ごめん、今ちょっと他のことで忙しい。明日ならいいよ」など気軽に断れる雰囲気があるかどうかも大事ですよね。話しやすさと聞く姿勢がセットになっているのと同様、こちらも「助け合い」ayudarse ←この se が大事!つまり、la relación recíproca があるチームなのかどうかが大事なのかと思います。その関係性があってこそ「あ、それ私やっておこうか?」「一人でやらないで大丈夫!一緒にやろう」などの助け合いのきっかけとな一言がでてくるのかなあと思います。
これもスペイン語の学習にも言えることで、
A1レベルだったら ¡Por favor! だけでも。
A2なら、Perdone/a, ¿puede/s ayudarme? 
B1なら、¿Te importaría ayudarme a hacer este trabajo?
B2なら、Necesitaría que me ayudaras / que me echaras una mano.
C1 なら、¿Podrías hacerme / Me harías el favor de ayudarme con esto?
C2なら、Te estaría eternamente agradecida si me ayudaras a planificar las próximas reuniones. 
などたくさーんの方法でスペイン語話者や学習者同士に助けてー!という方法がありますね!

「試しにやってみよう!」

3つ目の要素が、「挑戦」だそうです。おそらく、「話しやすさ」と「助け合い」の土台があるからこそ、「やってみようか?」につながるんでしょうね。失敗できないことこそが本当の失敗である。とエドモンドソン著書の日本語版にもあります。まあ、小さなことから少しづつ失敗してその状態に慣れておくというのは、スペイン語学習でも必要なステップかもしれません。
ところで、先にも述べたように私はスペイン語学習における間違い errores を研究をしているのですが、間違いを分類する方法はたくさんあるのですが、重要な間違い errores globales とまあそれほど重要でもない間違い errores localesに分類するものがあります。例えば、Paula llamó a José. → José llamó a Paula. このように大きく語順を間違うと意味がちがってしまって誤解が生じるものと、Paula es modela. → modelo を男女同形の名詞を女性形にしてしまうものでは重要度が違うという意味です。後者の間違いは、すくなくともスペイン語の名詞は男女の形が違うということを理解したからこそ間違ってしまった例。でもコミュニケーションの観点からみると意味が通じないとまでは言えませんよね。なんでもかんでも間違ってもいい!というわけではないですが、すべての間違いや失敗がだめだ!ということではなく間違いもちゃんと分析してあげようよ、という姿勢は素敵な考え方だと思っています。

「おお新しいね!いいかもね」

4つ目の要素が、「新奇歓迎」だそうです。つまり、新しいことや、今までにないことを、歓迎する好奇心を共有できるかどうかということでしょうか。これも前の3つが土台にあるからこそできるのかなと思います。
Edmondson博士もTEDtalkの中でコメントしているように
Es difícil aprender si ya lo sabes. 'It's hard to learn if you already know'
確かにそうですよね。これをスペイン語の学習になぞると、新しい学習方法(教育方法)を取り入れてみる、ということにもつながるかなと思います。

スペイン語学習にも心理的安全性を!

この記事を書いていて、このリーダー、この同僚、この先生だったら間違っても怒られないという安心感って本当に大切だなあと思いました。繰り返しになりますが、cometer errores は決してだめなことではなく、aprender de errores が重要。現在のスペイン語教授法を修めた指導者、弊社が取り扱っているスペインの言語教育専門出版社の編集者や執筆者もこのような教育観を共有していると思います。今後も引き続き「間違ってもどんどん ¡A probar!」の理念に基づいて作成された教材をたくさん紹介していきたいと思います。

おわりに 

この記事では、働くうえで大切にしていることについて書いてみましたが、それは、スペイン語を学習するうえでも大切な「気持ちの持ち方」にも通じるなと思いました。
みなさんのスペイン語の学びの場やお仕事の場が心理的安全のあるものでありますように!最後まで読んでいただきありがとうございました。

【参考にした文献(一部)】
Edmondson, A.C. “Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams.” Administrative Science Quarterly 44.2 (1999): 350–83

Edmondson, A.C. (2019). The Fearless Organization: Creating Psychological Safety in the Workplace for Learning, Innovation, and Growth 

日本語版 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす(2021) 英知出版

Edmondson, A.C. “Strategies for Learning from Failure.” Harvard Business Review. April 2011

La seguridad psicológica y el papel fundamental del desarrollo del liderazgo.
https://www.mckinsey.com/capabilities/people-and-organizational-performance/our-insights/psychological-safety-and-the-critical-role-of-leadership-development/es-CL

この記事が参加している募集