ユニクロとコムデギャルソンのたった1つの共通点 -ファッションという破壊的イノベーション- [ファッションリベラルアーツvol.17]
日本が世界に誇るファッションブランド −ユニクロとコムデギャルソン−。
両者はまさに“ファッション”の体現者です。
「LifeWear」をコンセプトに人々の生活に寄り添う服を紡ぐユニクロ。
高い技術力が生み出す製品と洗練されたデザインの数々は“ファストファッション”の地位向上に大きく貢献しました。
1982-83年秋冬のパリコレクションにて、ファッション界を激震させたコムデギャルソン。
同ブランドのデザイナー川久保怜は、黒をメインカラーに据え、裏地が剥き出しになったジャケット、大きな穴が無数に開いたニット等を次々と発表し、モードの概念を覆します。
ユニクロとコムデギャルソン。
ファストファッションとデザイナーズ。
生産的で機能的な衣服と創造的で装飾的な衣服。
活躍の場やプロダクトが全く異なる両ブランドですが、両者が「日本を代表するブランド」と評されるのには“ある共通したバッググラウンド”が存在します。
「ユニクロとコムデギャルソンが、なぜファッション界を牽引するブランドになり得たのか」に迫る時、あなたはファッションの本質を垣間見ることになるでしょう。
ファッションとは破壊である。
ユニクロの定番商品である「フリース」はリリース当初1900円で販売されていました。今では信じられませんが、発売された1994年当時、「フリース」は街着というよりもアウトドア用品というイメージが先行していました。
フリースを購入するとなればノースフェイスやパタゴニア、モンベル等のアウトドアブランドが真っ先に挙げられ、価格は◯万円かは覚悟が必要な時代です。そんな時代に、ユニクロはそれらのアウトドアブランドに見劣りしないスペック(保温性が高くなおかつ軽量)のフリースを1990円という以上な価格で発売してみせます。
これこそが、ユニクロをはじめとしたファストファッションが行なったとされる“価格破壊”の代表的な例です。
ユニクロがファッション界に多大な影響力を見せる背景には「既存のブランドではなし得なかった低価格高クオリティなアイテムの実現」という破壊行為があるのです。
ユニクロが「フリース」で価格破壊を行う10年も前に、ファッションの既成概念そのものを“破壊”したブランドが存在します。
コムデギャルソンが1982-83年秋冬のパリコレクションで発表した真っ黒でボロボロのスタイルは「貧乏に見せたい人のためのファッション」や「核の惨禍から生き残ったもののよう」と業界紙で揶揄される等、ファッション界を大きく揺るがします。
批判と困惑の背景には、それまで西洋を中心に形成された“構築的な美しさ”から全く逸脱した新しい美の価値観がそこにはあったからです。
「整えられていることが美しさなのか?」あるいは逆説的に「力強い黒やボロボロの衣服は美しくないのか?」という問いかけ。
それは、単に衣服を破り穴を開けただけではなく、既成概念を打ち破り、ファッション界に風穴を開ける改革だったのです。
ファッションの本質とは、破壊であり、脱構築である。
ユニクロもコムデギャルソンも、全く趣と立ち位置の異なるブランドですが、その根底には“ファッションの破壊”という共通項が存在するわけです。
ファッション界に順応しようとするのではなく、常に既存のファッションのあり方に疑問符を浮かべる。
この姿勢はさながら、哲学者[ジャック・デリダ]のいう「脱構築(déconstruction)」です。
脱構築(déconstruction)とは「統一的な全体性や二項対立の枠組みを解体し、新たな構築を試みる思考法(デジタル大辞泉(小学館))」を指します。
Fashion(ファッション)という言葉が【つくること・なすこと】を意味するラテン語「Factio(ファクティオ)」に由来することからも分かるとおり、その本質は「生み出すこと」。
だからこそ、ファッションには決まりきった「統一的な全体性や二項対立の枠組み」が存在する必要がないのです。
「フリースはアウトドア用品であり、価格はこれくらい」という枠組み。
「ファッションとは、整えられた華やかな文化」という支配的な考え方。
それらに待ったをかけ、破壊し、新しい価値観を提案する、という破壊的イノベーションこそが最も「ファッション(=生み出す)」らしい精神だと言えるのです。
では、わたし達は何を破壊するのか。
ユニクロとコムデギャルソンが破壊的イノベーションを背景に、ファッション界で絶大な影響力を誇っていることはわかっていただけたかと思いますが、これはわたし達の身の回りにおけるファッションでも同じことです。
ただSNSの着こなしや雑誌の提案に順応していたのでは、社会が構築した統一的で支配的な枠組みの中にはまるだけ。
それよりかは、「既存の枠組みを解体し、新たな構築を試みる」という脱構築的な視点を持って自分なりの着こなしを生み出す意識は、とても本来的なファッションらしい行為です。
フランス語で【少年のように】を意味する「コムデギャルソン(COMME des GARÇONS)」。
ユニーククロージングウェアハウスが正式名称の「ユニクロ(UNIQLO)」。
わたし達も「少年のような心を忘れずにいつまでもユニークな服」を着ることで、既成概念に囚われずに生きたいものだと思う、今日この頃です。
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