潔癖症

俺は綺麗好きだ。毎日お風呂にも入る。鬱の時はお風呂に入れない人も多いと聞くが、その点では俺は鬱に全戦全勝だ。鬱病より潔癖症の方が強いのだ。今後も負ける気がしない。

湯船に浸かったり、熱いシャワーを浴びたりするのが好きなのではなくて、汚れた自分の体を洗いたいというのが大きい。お風呂に入らないまま、ベッドで寝ることはない。俺の中でベッドは一番神聖な場所なので、お風呂で汚れを落としてからでないと入れないのだ。今はアルコール依存性で飲めないが、酔っ払ってそのまま寝る時は、リビングのソファーで寝る。酔っ払って判断出来なくて、そのままソファーで寝てるわけではない。酔っ払いながらも、お風呂に入ってないから、ベッドで寝ると汚れるため、ソファーで寝る、と判断しているのだ。以前インフルエンザで熱が40℃ある時も、もちろんお風呂に入った。一刻も早くベッドで休みたいのだが、外の汚れをベッドに持ち込むわけにはいかないのと、インフルエンザとの戦いに綺麗な体で挑みたくて、根性で入った。熱いお湯の中にいるのに、すごく寒いという新感覚で、ガタガタ震えながらお湯に浸かっていた。あと、銭湯に行った時には、帰って来たらまた自宅でお風呂に入り直していた。俺からしたら、銭湯は余計汚れに行くようなものなので、お風呂に入り直すのは当たり前のことなのだが、友達にそのことを言うと驚かれた。

でも結婚してマシになった。子供が出来てよりマシになった。特に育児はそんなこと言っていられない。ヨダレ、おしっこ、うんちと当たり前のように対峙しなければならない。その都度お風呂で全身洗い流している暇もない。そのような試練により、潔癖症はかなりマシになった。

俺は仕事柄、人と密に接する事が多い。そうすると、清潔感のある人もいれば、そうでない人もいる。それでどうこうではない。年齢、性別、職業など様々な理由がある。みんな生きているのだから、汚れるのが当たり前だ。そんな中で、一定数いるのが、石鹸の匂いのするおじさんである。おじさんなのに石鹸の匂いがするのだ。石鹸の匂いがするのにおじさんなのだ。逆に石鹸の匂いのするおばさんはいないし、石鹸の匂いのするお姉さんもいない。石鹸の匂いがするのは、やっぱりおじさんなのだ。俺の勝手な偏見を見事に裏切るあの清潔感のあるおじさん達は何者なんだろう。心なしか純粋で無垢な顔をしている。心まで綺麗なのかも知れない。見た目の清潔さ、不潔さ、匂いがどうこう、今の時代はこんなものでもハラスメントになる可能性がある。その間をヒラヒラと行き来する天使のような存在が彼らかも知れない。俺みたいな病的な綺麗好きは、さりげない石鹸の匂いに憧れる。

いいなと思ったら応援しよう!