海外で現地採用でサバイバルする方法!?|香港編
わたし、井上が香港に移住したのが1997年。まだ中国に返還される前のことでした。一時は主婦として、社会や仕事から離れてはいたものの、再就職をしてからは3社の日系企業で現地採用で働いてきました。
最初に現地採用で働き始めた時は、経験なし、資格なしのような状況で働き始めたので、お給料に関しては高望みをしませんでした。ただ、働けたことがありがたいという状況。あれから、
▪️駐在員と現地採用の違いにショック
「現地採用」で働きはじめてしばらく経つと「現地採用」で働くことと「駐在員」として働くのとでは、大きな違いがあることが見えてきて、ある意味大きなショックを受けます。
上司、仕事ができる人には「会社から能力や経験を見込まれて送られて来ているのだな」と納得ですが、時には「なぜ、こんな方が??」と疑問に思うような人が来ています。そんな時には現地社員にも大きな負担になることがあって、「なぜ、あの人がこの役職でここに来ているのだろう。」と思ったものでした。もちろん、会社のことがよく分かる時期に入っていたので、駐在員に必要な経費(費用)を考えると「つい意味があるの??」と思ってしまいました。これは、意外に現地スタッフも同様のことを考えています。
▪️海外で働くなら「駐在員」一択??
よく海外で働くなら「駐在員一択だよね。」ということがネット上で書かれていますが、現地採用とでは、雇用形態、福利厚生が違うからです。
「駐在員」の方は、日本から駐在員として海外に送られて来ているので、待遇や福利厚生はいいでしょう。香港だと世界で1、2位を争う物価の高さの中で、家賃は相当なものですが、もちろん会社が負担しています。家族で赴任する場合は、子供の学校、現地での医療関係、また、当面の面倒などもあり、手厚く守られています。最近では、単身で赴任する方が増えましたが、以前はそんな話を駐在で来ている奥様方に話をよく聞いたもので、私は羨ましかったものです。本音を言うと、一旦日本に帰って「駐在員」として働く道はないかな?なんて思ったこともあります。笑
でも、現地採用として働きながらも「成功者」だよね!
という人もたくさん見てきたので、現地社員としてしなやかに戦っていく方法を書きたいと思います。
▪️現在の香港の状況
近年は、デモ、新型コロナの影響で経済がダメージを受けてきていた香港。中国政府による「国家安全法」の導入など、多国籍企業経営者や優秀な人材の香港への信頼が試されている時期とも言え、海外に優秀な人材が他国へ移っていっている現実がありますが、いまだに香港のビジネス自由度の高さは健在で、世界的に知られているところです。実は、この5年でビザの発給数は3割ほど増えているんですよ。良い生活やビジネスチャンスを求めて、世界各国から人々が集まる国際都市であることは変わっていません。
外国人の雇用は当たり前で、欠かせない労働力として、欧米企業、香港企業、日系企業でも門戸が開かれています。
でも、日本から来た人が驚くことの一つに、雇用契約に基づく解雇が日常茶飯事ということ。こちらでは理由も告げずに解雇が可能で、朝出勤したスタッフがデスクに行く前に「解雇」を告げられ、私物を朝一で片付けて去る姿をわたしも何度も見てきました。
転職も同様に日常茶飯時なことです。常に条件のいいキャリアを求めて人材の流動性が高い香港では、生き残りが厳しい一方、その分仕事のプロフェッショナルな部分を磨き続けることと成果を出し続けることが求められます。
▪️現地採用の道は多種
海外で雇用されて働くには、地場企業、欧米企業、中国企業、日系企業とさまざまな選択があります。
私自身は、現地の香港企業、スイス系企業に雇用される直前までいきましたが(短期では働いたことがある)、日系企業で長く働いてきました。
わたしが今回書く現地採用に関しては「日系企業の現地法人」が前提です。また、現地採用というのはひとつの雇用形態で、企業によって、給料、福利厚生が全く違いますし、働く人たち、会社の雰囲気がどうなのかというところで大きく感じ方も違ってきます。あくまで現地採用として3社で働いた上でその傾向として述べていきますので、ご自身が実際に現地社員として働く場合には、ケースバイケースのことが多分にあることをご理解ください。
▪️香港で働くためには
香港で働くために必要なビザには、就労ビザ、短期就労ビザ、投資ビザなどがあります。就労ビザは、香港での就労を目的に入境する外国人が申請するもので、有効期限は2年間。香港政府が市民の就労機会を確保することを優先しているため、現地の人材ではなくて外国人を雇う必要があることを雇用する企業が説明できること
四年生大学卒業または同等以上の学歴を保有すること
同業または同職種での経験が3~5年以上あること
が必要です。
※国際結婚をしている人は、ビザは免除されます。
▪️現地採用の状況
香港で現地採用された日本人の月額給与は、通常2万~5万香港ドルと言われています。業界や業種での経験があれば給与金額は比較的高くなります。最近の為替状況・日本円換算で考えると、毎月の給料としては悪くないように感じるかもしれませんが、世界でも有数の家賃の高さを誇り、物価も高い香港でのお給料2万ドル(2024.12.10現在 約398000円)では現地の暮らしは、決して楽ではないでしょう。
また、日本人駐在員の場合は家賃補助、子供の学校料補助などの手厚い福利厚生がありますが、現地採用の場合は、同じ福利厚生は与えられません。
ちなみに私の場合ですが、医療保険、健康診断、歯科保険(年1回の検査)、有給休暇初年度 7日〜、交通費などの支給がありました。
(交通費を支払ってもらえる、歯科保険の加入は、恵まれていたようです。)
有休休暇も法律で最低日数が法律で決められていますが、わたしがいた会社は長期で有休をとることが出来、毎年2週間ほど日本へ帰省していました。
▪️日系企業での現地採用
現地採用の選択はそれほど多くない
現地採用は選択肢がそれほど多くはありません。海外での日系企業の数は限られていますし、その中でも、どうしても日本人でなければならない事情がある会社は多くはありません。現地の人でも、日本語を流暢に話せ、書ける人は多くいるし、可能なら現地の人を雇用してほしいのが香港政府。
昔は、日系企業も景気が良く、日本語が喋れたら誰でもいい…というほど、簡単に働け(国際結婚をしていた人)、おまけに高待遇の時代が香港にあったらしいですが、今はそんな話は聞いたことがありません。
求人したい企業も雇用されたい企業も多くはないので、その中で経験や待遇などの条件がピッタリ合う人を見つけるのは至難の業。「この人!!!」という人は、大抵、他の企業を数社面接していることもあり、本人が好条件を選択することができますが、経験上、これができる人は多くはありません。
ということで、最善の選択を企業側はしますが、採用後に互いにミスマッチを起こすことも少なくないです。
採用になる前に確認しておいた方がいいこと
わたし自身、採用で面接をされて来た人間であると同時に、採用も行ってきた人間です。これから、現地採用で働くことを希望んでいる方は、以下を注意されるといいでしょう。
▪️語学はもはや武器ではない
あなたは何ができるのか?
海外で働いていると、ビジネスで使う共通語は英語が多いのですが、出来て当たり前の世界で働いているわけです。「その中で、あなたは何ができるか?」が重要になってきます。
昔は、日本人で英語さえできればもてはやされる時期が香港にもあったと言いますが、香港では、3カ国、4カ国語を喋れるマルチリンガルは多いし、日本語もネイティブ並みに読み書き話すができる人もいます。しかも、仕事も優秀。こんな中で、英語ができるからだけでは、通用しなくなって来ています。他にあなたのプロフェッションを示せるようにしておきましょう。
私の場合(はじめての現地採用就職)
わたしの場合は、一番初めに働いた会社が「広東語と英語が話せて、接客、コミニュケーションに長けてて、根性がある人が欲しい」ということだったらしいのですが、選ばれた1番の理由は「キツい香港人の中にいても、やっていけそうな人」だったそうです…😅
転職の際には、そんな理由で雇ってもらえたわけでなく、やはり職歴や経験、スキル、言語を見られていました。
▪️給与と待遇は「駐在員」とは別物。ただし…
「現地採用は、駐在員と比べて給料が少なくて、待遇も違って不公平!」
これは、よく聞かれることでもあるのですが、当然と言えば当然です。
同じ職場に働いていて、羨ましいと思ったことは実際ありますが、駐在員と現地採用では、まず置かれている背景、職責が全く違います。
会社の命令で任期付きでポジションを任されて派遣されてくる駐在員とは、業務的にも違いますし、本社に対しての責任も違います。もちろん、給料も違ってきます。
現地の日本人を採用する理由
企業が日本人を現地採用で雇う大きな理由の一つが、駐在員と同じようにお金はかけれないという点です。業務の内容的に日本人にしてほしいポジションだけど、日本から駐在員として派遣するならコストがかかるし、現地の事情をわかっていない上、言葉の問題、生活に慣れる時間も必要だし、なんなら現地の人とのコミニュケーションも良くは出来ない可能性もある。
それであれば、足りない部分は現地の事情がわかり、現地の言葉が出来る日本人にやらせてしまおうという背景があります。元々は、コストをかけないという前提がある中での採用となることが多いのです。
例外もあり
ただ、香港で働いている仲間の中には、待遇、特に給料の面では、最近は円安の影響も合い重なり、駐在員以上もらっている人も見られます。
ただ、これはかなり経験とキャリアを既に積んでいる人たちで、いなくなれば困る存在に慣れている方に限られるかもしれません。特にコロナ以降は、香港でさまざまなことがあり、日本人の人口も随分と減ったことで、今いる人材の離職を避けるために今まで以上に待遇を良くしている企業も見られます。
しかし、現地採用の場合は、待遇面では駐在員とは同じ水準になるというのは、あまり考えられないの「別モノ」と割り切っていることが基本でしょう。
日本企業が現地の人から人気がない?
本当のことを書くと、日系企業は他の外資系企業と比較すると「低賃金」「福利厚生が良くない」と現地の人からも、長年言われ続けて来ました。おまけに「空気を読む文化」「キャリアを積んでも昇進ができない」「ビジネスの進め方が遅い」など、現地では、日系企業を選択する人が減って来ています。ここに円安があい重なり…海外の日系企業においては厳しい状況下になって来ているのかもしれません。
ただ、仕事内容に対して不当に給料が低かったり、搾取されていると感じるのであれば、現地に住んでいる人も毅然として給与交渉をし、待遇の改善を求め、それでも難しい状況なら、現地企業や外資への転職を考えてみるのも手です。
▪️現地スタッフと日本人スタッフ・現地と本社の狭間で
「現地採用は、駐在員とローカルスタッフの間に立たされて大変」というのは本当です。笑 まず、語学ができる前提で雇用されている場合が多いですから、通訳的なお願いをされることもあります。
でも、一番あるあるだったのが、日本人が「言葉に言い表しにくいこと」や「自分で言いたくないこと」を伝えて欲しいという役目だったり、ローカルのメンバーも日本人に対して、少なからず不平不満を持っているのですが、その間で調整役になったり、間に入って問題を解決する役目を担うときもあるものです。
根本的な考え方や慣習、行動の原理が違うことも少なくないので、難しいケースも多々ありますが、関わる人が増えることで、自分の影響力は多少なりとも広がりますし、問題解決が評価されれば、頼りになる者としての存在感が会社の中でも上がっていきます。
こういった社内での問題解決が社外に出た時の商談や交渉に役立つこともあります。相手は日本人じゃありません。面倒なこと、困難なことも自分のスキルとして身につけることができるなら、どこででも生きていけるし、会社の中では昇進ということも出てきます。
▪️外国で日本人が現地社員として働くこと
わたしは、ありがたいことに最初の2年の平社員を経て、リーダーになり、昇給、昇進をさせてもらってきました。仕事で機会も多くいただき、可能性も開いてもらったので感謝でしかないのですが、香港で現地社員として働いている人の中には、大変な苦労をしている人もたくさんいます。
現地採用として日系企業で働いているからこその「苦労」と思えるものが大半です。しかし、香港にある欧米企業で働いているすごく優秀な友人も「今は成績を出しているけど、3ヶ月後の保証はないわ」とすごくいい待遇を得ながらも将来的には安心できない環境の中で、日々戦いながら働いています。
海外で現地採用で働くということは、守られているという感覚はないに等しいでしょう。駐在員として来ている方は、やはり会社に守られていますよね。
また、多くの駐在員の方々と今まで一緒に仕事もして来ましたが、元々海外思考が強くて、海外に行きたいと願っている人には絶好のチャンスとなり、現地での生活を充実したものとしているようですが、「本社の意向」で気が向かないまま来ている人には、地獄のようにも見えます。
多くの具体例は、キリがないのですが、私自身が海外へ行ったのも自分の選択、働くことも選択の中でやって来ているので、嫌なことや理不尽なこともありましたが、後悔は微塵もなく、働かせてくれた過去の職場には感謝でしかありません。
とはいえ、海外で働くことは容易いことではありませんが。
長文、お読みいただきありがとうございました!