海外25年女性管理職の視点から「組織マネジメント」:部下との信頼関係構築について
「部下がついてこない」と悩む上司の課題は、どこの国、職場でも起こりうることですが、特に文化や価値観が交差するグローバル環境の中では、より複雑なだということを実感してきました。
今回は、海外在住25年以上、女性管理職として、プロジェクトリーダーとしての自身の経験と先輩方の教えなども踏まえながら、この課題と解決のヒントを今回は書いていきたいと思います。テーマは「クロスカルチャー・コミュニケーションの課題」組織マネジメント:部下との信頼構築についてです。
自分の文化を基準にしていないでしょうか?
わたしが住んでいた香港のような都市では、同じチーム内に中国本土出身者、香港人、欧米人、その他アジア各国出身者が混在することが一般的です。ここでよく落とし穴になってしまうなと思うのは「自文化中心主義」。誰にでも言えることなのですが、自分の国の文化を基準に他の文化を評価したり、批判したりすることをしてしまうことです。
・職場でのコミニュケーション
例えば、日本人上司が日本流の「察する文化」を前提としたコミュニケーションを取ろうとしても、香港人や欧米出身の部下にはなかなか通用しません。彼らは明確な指示と理由の説明を求めます。一方、中国本土出身の部下は、より階層(階級)的な関係性を期待する傾向があり、上下関係がはっきりした中でどう動くかを決めます。このように、文化による期待値の違いを理解せずにマネジメントを行うと、意図せずしてチームの中に誤解や行き違いを招いてしまいます。
・育成アプローチの多様化
次に「育成アプローチの多様化」の必要性です。
グローバルな環境下では、個々の部下が持つキャリア観や価値観が大きく異なります。香港では特に、キャリアモビリティが高く、部下たちは常に自分が成長できる環境を求め、またより良いキャリアアップの機会を求めて転職をしていきます。このような環境下では、画一的な育成方針は機能しません。
例えば、日系企業でよく見られる「じっくりと時間をかけて育成する」アプローチは、スピード重視の香港のビジネス環境では、かえって優秀な人材の流出を招く原因となりかねません。「ここにいても成長できない。昇進できない」と言って、転職していった香港人を日系企業の中で数多く見てきました。彼らが求めるのは、個々に応じたキャリア目標を理解し、それに応じた成長機会を迅速に提供することでした。
・インクルーシブなリーダーシップ
そして3つ目が「インクルーシブなリーダーシップ」の実践です。多様な背景を持つメンバーが集まるチームでは、特定の文化や価値観に偏らない、包括的なリーダーシップが求められます。
コミュニケーションでは「明確さ」と「柔軟性」のバランスを重視。
指示は明確に文書化しつつ、対話の機会を頻繁に設け、文化的背景による理解の違いをその都度確認していきます。
また、チーム内での使用言語(例:英語・中国語)による能力差をカバーするため、重要な情報は必ず文書でフォローアップする習慣をつけることも大切でしょう。
育成面では、「スピード」と「機会の平等」を重視したアプローチを取ります。例えば、四半期ごとの目標設定と評価、プロジェクトベースでの育成機会の提供など、より機動的な育成の仕組みを導入します。同時に、言語や文化の壁が育成機会の障壁とならないよう、公平な基準でのアサインメントを心がけます。
リーダーシップについては、「参加型の意思決定」を心がけ、様々な文化的背景を持つメンバーからの意見を積極的に取り入れ、チームとしての方向性を決定していく方法を多くは取りました。これにより、全てのメンバーが「自分たちのチーム」という当事者意識を持てるようにしていました。特にわたしがあるプロジェクトリーダーに任命された時は、古参メンバーが多く、わたしは専門知識もメンバーより少ない中で、比較的新人の中から抜擢された中での役割だったので、よりこの「参加型の意思決定」は意識していた点でした。
まとめ:
グローバル環境でのマネジメントには、確かに多くの課題がありますし、特有の難しさもあると思います。しかし、その多様性こそがイノベーションと成長の源泉になっていくのだと思います。
異なる視点や経験を持つメンバーが、互いを理解し、補完し合える環境を作ることができれば、それは大きな組織にとっての成長力と競争力となるはずです。
変化の激しいビジネス環境において、グローバルな視点でのリーダーシップの重要性は、今後ますます高まっていくでしょう。まずは小さな一歩から、より包括的で効果的なマネジメントスタイルの確立を目指していきませんか。